表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/622

作戦会議2

 こんばんは!昨日は加筆修正をしていたら更新できなくなってしまいました、申し訳ないです。

 今回から1つ前の107話の最後から少し書き足しているので、今回の話はそこから読んでいただけるとしっかり話が繋がります。ご面倒でしょうがどうぞよろしくお願いします!

 「それでは、最初にこちらを見てください」


 そう言うと檀は手に持っていた巻物を円の中心に置いて広げていく。双魔と鏡華は巻物を覗き込んだ。


 「これは…………地図か」

 「洛中と洛外周辺…………中々広い地図やね」

 「そう、これは京近辺の地図だ。それで、ここを見て欲しい」


 剣兎が地図上のある地点を指差す。


 その地点を見ると青白い点と赤黒い点がちかちかと点滅している。


 「…………山縣の潜伏場所か」

 「その通り、この地図は賀茂家のご当主が作ってくれたものでね、山縣と怨霊鬼の反応は今のところ全く移動していない」

 「そうか……ここに乗り込むわけか…………この場所は」


 一点、双魔の中で何かが引っかかった。が、鏡華がすぐにその何かを言葉にしてくれた。


 「禁裏の北西、洛外、嵐山よりさらに北…………ここ化野(あだしの)やね」


 そう、鏡華が口にした通り山縣たちを表す点は化野の辺りで明滅している。


 ”化野”とは清水の南西に位置する鳥辺野(とりべの)と並ぶ、大まかに言った場合の平安時代における二大埋葬地の一つである。


 「ええ、山縣が先帝から賜った屋敷は化野にあります。屋敷は撤去されることもなく凄惨な事件が起きた場所と近づく者もいません…………おそらく、山縣はそこにいるかと」

 「今、うちの一門の何人かに式神を飛ばして確認してい貰ってるからもうすぐ細かいことが分かるはずさ」

 「ああ、わかった…………それにしても」

 「うん、双魔の言いたいこと分かるわ…………これ、少し危険かもしれへんね」


 双魔と鏡華が揃って難しそうな顔をする。


 「どういうことでしょうか?」


 黙っていた春日が地図と双魔たちの顔を交互に見ながら問うてくる。


 「あんな、話は聞いてる思うけど、山縣は何かしら、死者に作用する遺物を持ってるようなんよ」

 「ん、つまりだ。化野は幾千、幾万の死体が野ざらしになっていた、ある種の怨念渦巻く地、それに”死の鳥辺野”に”生の化野”かなりきな臭い」


 双魔の見識を耳にして剣兎と檀も揃って、表情に厳しさが増した。


 「…………幸徳井(かでい)殿、辺りの規制線は?」

 「はい、もう済ませてあります。近辺の住人には洛中に場所を設けて避難してもらっています」

 「うん、それでいい。問題は、双魔が言う通り、怨霊が、しかも場合によっては力が強い平安の怨霊が出てきた場合、並みの者では太刀打ちできないってことかな」


 「っ!?人員の再編成が必要になりますね!」

 「ん、そうした方がいいんじゃないか?剣兎、、今の編成はどうなってる?」

 「僕らの落ち度だけど、そこまで物騒になるとは想定してなかったからね…………僕と幸徳井殿で屋敷の周囲に結界を張って、その時の補助人員を二十、緊急時の一時対応に当たる戦闘向きの護衛人員を三十、それと異変を感知するために賀茂殿と賀茂一門から数名ってところかな」


 非常にに堅実な布陣だが、現状の可能性を考慮しや場合はかなり危ういものだ。勿論、これはこの場にいる全員の共通認識だ。


 全員が厳しい顔をつき合わせた時、襖が静かに開かれて陰陽寮の制服を着た女性が一人部屋に入ってきた。


 どうやら風歌一門の者のようで、剣兎に近づくと耳元で何かを囁く。話が進むにつれて剣兎の顔がより厳しくなっていく。


 報告が終わると女性は一礼してそそくさと部屋を後にした。


 「で、何の報告だった?」

 「月並みだけど…………いい話と悪い話、どっちから聞きたい?」

 「どっちでもいいから、話が進めやすいように話せよ」


 この状況でも茶目っ気を出してくる剣兎はある意味で大物だが、そんなやり取りをしている場合ではない。双魔は鬱陶しそうに切り返した。


 「ごめんごめん。じゃあ、簡潔ないい方から話そうかな。部下からの報告だと山縣は確実に屋敷跡にいる」

 「これで確実性を持って作戦に移ることができますね」

 「うん、幸徳井殿の言う通りなんだけど…………ときに賀茂殿」

 「はい、なんですか?」

 「貴女は今どれくらいの範囲までなら探知の網を広げられるかな?」


 剣兎の問われた春日はすぐには唱えず、右の髪の房を撫でて考えるような仕草を見せた。


 「まあ、まだまだ修行の身ですがこの地図の範囲なら一分ほど」


 そう言いながら置いてある巻物の地図を指差した。


 それを聞いた剣兎が何度か小さく頷く。


 「じゃあ、一瞬、化野の辺りに網を投げてもらってもいいかな?」

 「それは構いませんが…………」


 春日は居住まいを正すと両手で印を結んで術を発動しようとする。


 「ああ、待って」


 それを剣兎が手を前に突き出して止める。


 「なんですか?」

 「危ないと感じたらすぐに術を解いて欲しい、いいね?」

 「?分かりました。それでは」


 改めて印を結びなおし、両の目を閉じて魔力を高めていく。


 「オン・ビロバクシャ・ノウギャ・ヂハタエイ・ソワカ!」


 広目天の真言を唱えた春日の身体が白い魔力に覆われる。


 「……これは……っく!…………っか!?…………うう…………はあ!はあ!はあ…………」


 春日は苦悶の声を漏らすとすぐに両の目を開き、印を解き、前のめりに倒れそうになった身体を両手を畳について何とか支えた。顔からは汗が噴き出している。


 「春日さん!?大丈夫ですか!?」

 「おい、剣兎…………」

 「うん、悪い方の話は放たれた式神が怨霊に喰われたらしい。術者にも影響が出たみたいで病院に搬送されたって」


 春日の顔は真っ青だ。呼吸も浅くなってしまっている。


 「春日はん、しっかりし!ほら、息吸って、吐いて!」

 「は、はい……すぅーーーー…………はぁーーーー…………すぅーーーー…………はぁーーーー…………」

 「落ち着いた?ほら、お茶飲んで」

 「あ、ありがとうございます…………」


 春日は鏡華に差し出された茶碗を受け取ると、冷めたお茶を少しずつ飲んだ。


 「ふう…………すいません、取り乱しました」

 「いや、こうなると分かって頼んだ僕が悪いんだ。此方こそ申し訳ない」

 「いえ、お役目ですので」


 茶碗を置くと、春日は巾着からハンカチを出して額を拭った。元々疲れていた顔に更なる疲労の色が滲んで見える。


 「それで、何が見えた?」

 「はい…………化野一帯は怨霊が無数に湧き出ています……それが原因の瘴気もひどいです…………一般人があそこにいた場合はまず助からないと思います」


 状況は考えていたよりも更に過酷なようだ


 「規制線を先に張っておいて正解でしたね…………しかし、人員の選定には見直しが必要になってしまいましたね…………」

 「そうだね、すぐに取り掛かろう!痛たたたた」

 「はい!」


 剣兎が立ち上がる。それに続いて檀も立ち上がった。


 「春日さんは出発まで休んでいてください。賀茂家の人員もこちらで選んでしまっていいですか?」

 「ありがとうございます…………お任せしますね…………お言葉に甘えて休ませてもらいます」


 春日も檀に支えられながらよろよろと立ち上がる。


 「申し訳ありませんがお二人は待っていてください…………あ、そうだ」


 檀はポケットをごそごそと漁って一枚のカードを取り出すと、双魔に差し出した。


 「これは?」

 「陰陽寮の食堂の無制限パスです。ただ待っているのもなんでしょうから」

 「ん、そうか。ありがたく使わせてもらうよ」


 双魔は檀が差し出したカードを受け取る。


 「それでは、後程」


 三人は慌ただしく会議室を出ていった。


 「双魔、うちらはどうしよっか?」

 「ん、そうだな…………」


 ふと、話をしている間にずっと黙っていた膝の上のティルフィングを見ると、昨日と同じように手元の落雁は空になっていた。


 「?ソーマ、どうした?」

 「まあ、取りあえず食堂にお邪魔してみるか」

 「せやね」


 双魔たちも立ち上がると会議室を後にした。


 少しすると誰もいなくなった部屋の行燈の火は風に吹かれることもなく一斉に消え、部屋は暗闇に満たされた。



 いつも読んでくださってありがとうございます!よろしかったら評価していってください!レビューやブックマークもお待ちしています!

 書き貯めが減るばかりで書けていない現状をどうにかしたいと思う精神感応4でした…………

 それでは、良い夜を!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ