帝国軍第五魔導師団
■ 帝国軍第五魔導師団 ― “竜の加護と魔導の矛”
【全体像】
帝国軍第五魔導師団(通称:第五師団)は、ルミナス聖皇国が誇る十二の魔導師団のうち、戦闘魔導と騎士戦術を統合的に運用する“機動戦術特化型”の部隊である。
本部は帝都セレスティアの北翼区「白雷砦」に設置され、魔導師団としては数少ない“実戦即応型常設部隊”に分類されている。
【特徴・戦術】
第五魔導師団の最大の特徴は、「魔導師と騎士の融合戦術」にある。
一般に、帝国の軍制では〈魔導兵団〉(術式運用)と〈聖騎士団〉(物理戦闘)は明確に分離されているが、第五師団はこれを“併せ持つ”特異な編成となっている。
この融合戦術の中核にあるのが、ゼン=アルヴァリードがかつて所属していた「蒼竜騎士団」である。
【蒼竜騎士団(Division Blau-Drache)】
⚫︎概要
蒼竜騎士団は、第五魔導師団内に設けられた「直属騎士戦団」であり、帝国最古の空挺機動戦団を母体とする精鋭部隊。
団名の「蒼竜」は、古代より帝国北部に伝わる守護竜の神話に由来し、“空と魔力の加護を受ける者たち”として畏れられている。
⚫︎編成と任務
・構成人数:常時約300名(正規団員180名/支援術師70名/戦略予備50名)
・主戦任務:高地殲滅戦、強行突破戦、空中魔導作戦、要人護衛、急襲指令
・象徴標語:『空に剣を、地に誇りを』
⚫︎技術的特徴
・全団員が飛行術式、風属性魔導、軽量装備術の基礎訓練を受ける。
・“空戦連携”と呼ばれる空中陣形魔術を実戦投入。
・風圧や音響を利用した錯乱戦術、霧地帯・高低差を活かす奇襲戦を得意とする。
⚫︎蒼竜剣士(Skyblade)
特に優れた個体には「蒼竜剣士」の称号が与えられる。
これは魔導適性と剣術適性の両方を高位で有する者に限られ、ゼンもまたかつてこの称号を帯びていた一人である。
【第五魔導師団の階層構造】
第五師団は、帝国十二魔導師団の中で“縦割り的な魔導専門編成”から脱却した“統合型”部隊である。その組織構造は以下のようになっている:
【階層/部署名/機能概要】
□ 指揮本部 / 師団司令部(総旗室) / 戦略・戦術指揮、対国境監視、魔導軍務計画の策定
□ 作戦部隊A / 蒼竜騎士団 / 機動戦・空戦特化、主力戦術展開部隊
□ 作戦部隊B / 白炎陣 / 対魔障害戦術部隊。火属性・浄化術主力
□ 技術支援部 / 機構整備隊 / 魔導器具の整備・研究。魔導炉支援兵を多数抱える
□ 特殊任務課 / 黒環室 / 情報戦・諜報・破壊工作担当。極秘任務を多く受け持つ
これら各部門が協働し、第五師団全体で「多層・多角的な魔導戦力」を展開する構成となっている。
【他師団との違い】
・第一師団:帝都防衛専門の“白翼師団”(白魔導特化)
・第二師団:重装術師による殲滅戦特化“紅の大盾”
・第八師団:召喚魔術の精鋭“幻影律団”
・第十二師団:研究専属の“魔導解析院” など
→ 対して第五師団は“実践第一”。理論より応用。実戦任務の比率は他の師団の2〜3倍にのぼる。
【師団長と主要人物】
・現師団長:グラハム=レオニード(Graham Leonid)
通称“雷の獅子”。かつては蒼竜騎士団の団長を務め、ゼンの上官でもあった。
雷属性の魔導剣術を用い、戦術構築能力に長けた名指揮官。
・副団長:ミルディア=クルス(Mirdia Cluz)
冷静沈着な風術師。蒼竜の航空術式の開発責任者でもあり、ゼンに飛行魔導の基礎を叩き込んだ人物。
・技術顧問:イグザス・ベルネロ
現在消息不明。魔導炉制御技術の天才であり、第五師団に多くの革新をもたらした影の功労者。
【終焉戦役と蒼竜騎士団の功績】
かつてゼンが参加した「終焉戦役」は、帝国史上最大規模の魔獣災害との戦いであり、第五魔導師団はその主力として出動。
蒼竜騎士団は「南部アラン峠防衛線」にて、わずか150名で数千体の魔獣を迎え撃ち、戦線の崩壊を食い止めた。
この功績により、第五師団は“戦地に光を持ち帰る者たち”として、帝国中にその名を知られることとなった。
ゼンはこの戦役において“生存率ゼロ”とされた前線から奇跡的に帰還し、その後の隠居生活に入るきっかけとなった。
【現在の立ち位置と衰退の兆し】
イグザス失踪以降、第五魔導師団は技術更新に遅れが見られ、また師団長グラハムの高齢化によって、かつての覇気を失いつつある。
一方で、ゼンの生存が密かに確認されたことで、“蒼竜復活”を望む声が内部からも上がっており、一部の若手団員が再招集を目指して独自に動いているという噂もある。
【記録官の評】
「第五師団は、戦場の空気を変える連中だった。空から来て、空を切り裂いて、風のように去っていく。規律より柔軟性、理論より本能――それが蒼竜の流儀だ」
― 帝国軍記録文書『十二師団内機構と運用変遷』より抜粋




