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食材リスト:青焙霧露


挿絵(By みてみん)




青焙霧露せいばいむろ


分類:高山冷霧性常緑茶(葉茶)

自生地:ガルヴァ山郷・霧峰段丘南斜面、霧露林帯、標高1400〜1700メートルの霧湿地帯

別名:霧茶きりちゃ幽露茶ゆうろちゃ静翠せいすい

採取時期:年2回(初芽期/晩春、再芽期/晩夏)

用途:嗜好茶・接客茶・儀礼茶・精神調律・感覚回復



【外見的特徴】


青焙霧露は、霧の谷に群生する低木“露葉樹”の若葉を用いた高山性の茶葉である。葉は小ぶりで肉厚、表面に細かな白露状の毛が密生し、霧の中では薄く青白く光るように見える。その光沢が“青焙”の名の由来となっている。


摘み取られた葉は、湯通しの後、霧水で湿らせ、炭火と霧気を交互に浴びせながら三度焙煎される。この工程によって、葉内部の冷霊性の油分が引き出され、焙煎香と蜜香の両方を持つ独特の風味が生まれる。



【生態と育成環境】


霧露林帯は、一年のうち180日以上を霧に包まれると言われる特殊な気象帯であり、この霧と冷気、微弱な火山性地熱が複雑に絡み合う場所でのみ、露葉樹は高品質な茶葉をつける。


主な発生条件は以下の通り:


・南向きの緩斜面(風と霧が滞留する)

・日中と夜間の気温差が大きい(7度以上)

・微霊性(冷霊素)の強い霧が連続して7日以上流れる時期

・地熱による下層微暖環境(根が冷えすぎない)


採取において最も重視されるのは“露宿ろしゅく”と呼ばれる葉の状態で、霧の夜に薄く結露し、朝陽を浴びる前に摘むのが理想とされる。



【香味・抽出特性】


青焙霧露は、湯を注ぐと香ばしさの奥から微かに冷涼な蜜香が立ち上る。第一印象は焙煎茶に近いが、口に含むとすぐに芳香の層がほどけるように広がり、後口にはほのかな甘露と涼感が残る。


抽出には78〜80度のやや低めの湯が適し、高温では香気が飛びすぎる。初手の湯は「目覚めの滴」と呼ばれ、茶葉が静かに膨らみながら霧の香りを解き放つ。


茶葉は三煎まで使え、煎を重ねるごとに焙煎香が落ち着き、冷露香が際立ってくるのが特徴。



【効能・精神作用】


・冷霊素安定化:精神的動揺や魔力過敏症の鎮静に効果があり、接触感覚の安定にも寄与

・集中力持続:神経の振幅を穏やかに整え、瞑想や思索、戦術構築時の飲用に適す

・感覚調律:嗅覚と味覚の鋭敏化、五感の“雑音”を静める働きがあり、霊感者の間では「耳を澄ませる茶」と呼ばれる


古くは帝国の影導術士や占暦官が“霧前の儀”として飲用し、心身の調律を行っていた記録が残る。



【文化的・儀礼的価値】


・青焙霧露は、山郷では「沈静の香」として親しまれ、客人を迎える際や、大切な選択を前にした朝の一杯として淹れられる。

・また、王都では“影の茶”とも呼ばれ、政治交渉や内密な儀式の場で使われることが多い。

・特に、初摘みのものは高位の貴族や祭官への献上品とされ、「霧の初香」として儀式用に密封保存される。



【流通・希少性】


流通量は極めて少なく、谷外に出回るのはごくわずか。年に二度、山間交易商が天日乾燥品を持ち出すが、霧焙煎の本物は現地でしか味わえない。


中でも“霧宿三焙むろしゅくさんばい”と呼ばれる最高品質のものは、年間百煎分に満たない希少品であり、古の王家では婚儀や継承の茶として用いられていたという。



【提供・調理例】


静煎せいせん:低温でじっくりと時間をかけて抽出。香りと甘みの均衡を最も美しく味わえる基本の淹れ方。

・初露一煎:摘みたての茶葉を当日中に一度だけ淹れる儀礼茶。霧の香気と青味が最も強く、わずか数滴で深い余韻を残す。

・焦香湯:茶葉を炭火で二度炙り、瞬間抽出する儀式用の熱茶。戦地や政決の前に精神を集中させる際に用いられる。



青焙霧露――

それは、山の霧が育てた“静寂の茶”。

一煎の香りの中に、空気、湿り気、そして人の気配までも溶かし込む。

口にした者は、谷の呼吸とともに己の心の波紋を静かに見つめ直すことになるのだ。


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