神聖魔導兵団
◆ 神聖魔導兵団
Holy Arcane Regiments
― 王宮派の権力確保を目的として創設された、影の宗教武装組織 ―
王宮(聖皇)・神殿勢力が、
行政院・枢機院・都市貴族連合といった“世俗権力”に対抗するために編成した
純粋に王宮側の軍事・諜報組織。
帝国魔導師団とは完全に異なる組織であり、
両組織間には政治的緊張と利権争いが存在する。
■ Ⅰ. 創設背景と政治的位置づけ
● 創設理由
近代国家の成立以後、時代が進むに連れ帝国の政治権力は以下の三軸へと分散した:
1. 枢機院(貴族・元老)
2. 行政院(官僚・魔導技術派)
3. 都市商業連合(経済界)
聖皇院(王宮)は弱体化し、
“象徴”として扱われる危険が高まっていた。
そこで先代聖皇 セント=ルクレティア六世 は、
王権復権のための軍事基盤として
神聖魔導兵団(七影兵団)を創設。
これにより聖皇院は、
・軍事力
・諜報力
・宗教的威光
を再獲得し、政治的存在感を復活させた。
※ 兵団は“教義上の正統性”をもつため、
行政院・枢機院も完全には干渉できない。
● 帝国魔導師団とは異なる“王宮派の軍事組織”
神聖魔導兵団は、
帝国魔導師団が「行政院・枢機院・軍部」による統制下で運用➡︎移行されたのに対し、
“聖皇と神殿勢力が直接掌握する”新設軍事組織である。
建前は「神聖儀礼の護衛と宗教治安の維持」だが、
実際の創設理由は――
◼︎行政院・枢機院が台頭し、王権(聖皇権)が弱体化し始めたため
◼︎帝国魔導師団が政治的中立を掲げたことで、王宮が軍事を握れなくなったため
◼︎枢機院が影で独自の諜報網と武装部隊を育てていたため
◼︎王宮側の力として“神殿主導の軍事機構”が必要となったため
つまり、
王宮 vs 枢機院・行政院・都市貴族連合
――この権力闘争の中で生まれた“政治軍事兵団”である。
表向きは「信仰の守護者」だが、
実際は 王権の牙と翼。
■ Ⅱ. 組織理念
● 表の理念
「光の調和を守り、人々に秩序をもたらす聖なる守護者」
● 実際の機能
「王宮権力を維持・拡大するための宗教軍事機関」
軍事・諜報・治安・宗教儀礼を一体化した特異な組織であり、
帝国魔導師団とは真逆の性格を持つ。
■ Ⅲ. 七影構造(属性に対応した七兵団)
七大属性を象徴する“七つの影”。
それぞれが独立した戦術体系と管轄領域を持ち、
王宮直属でありながら内政・外交にも深く関与している。
① 白影兵団(光)― Holy Wing
神殿・王族護衛/宗教治安/対異端規制
指揮官:カシアン・ルクレティア(諜報部:実質的専制)
役割:
・王族の直接護衛
・光教義の管理
・異端審問所の武力部門
・帝都宗教治安の最終権限
・王宮暗部部隊〈影導〉の管理
最も権限が強く、
政治的な“汚れ仕事”を合法的に行える唯一の兵団。
② 赤影兵団(火)― Crimson Flame Guard
即応打撃/城郭戦/宗教反乱鎮圧
役割:
・内乱・暴動の制圧
・聖域・神殿の防衛
・都市攻防戦における火属性殲滅術の投入
・敵対勢力への威圧力として機能
政治的示威行為に用いられる“実力行使の象徴”。
③ 青影兵団(水)― Blue Halo Corps
治癒・浄化/宗教儀礼支援/医療管轄
役割:
・王族の医術監査
・災害時の救助
・結界の浄化管理
・魔導災害の被害抑制
・宗教儀礼における清浄術の担当
兵団の中で最も市民からの評判が良い。
④ 緑影兵団(風)― Emerald Gale Squadron
飛空艇運用/広域偵察/巡察警備
役割:
・王宮直属の飛空艦隊の運用
・広域索敵・偵察
・巡礼路の警備
・外交儀礼の空路護衛
・他大陸への密輸入監視
帝国魔導師団の航空戦力とは独立した“宗教専用空軍”。
⑤ 黄影兵団(雷)― Thunder Rite Engineers
宗教魔導工学/兵装開発/儀礼装置管理
役割:
・神殿結界システムの維持
・宗教魔導兵装の開発・保守
・魔導炉の儀式制御
・人工天使計画の補助
▶ カシアンの量子魔導核研究と最も密接な関係にあるのがこの兵団。
⑥ 黒影兵団(闇)― Noctis Veil Corps
潜入・暗部情報操作/対諜報
役割:
・枢機院・都市貴族の監視
・帝国内外の政治諜報
・裏切り者の排除
・白翼の裏仕事の補佐
・対外潜入の専業部隊
内部でも最も秘密度が高い兵団。
⑦ 紫影兵団(岩・封印)― Ashcrystal Custodians
古代封印管理/神殿遺跡警備/禁呪封鎖
役割:
・世界各地の封印遺跡の保護
・魔神族由来の遺物封鎖
・禁書・禁呪の隔離
・宗教秘宝の警備
・古代災害区の監視
特に終焉戦役後、
魔神残滓の管理が最重要任務となっている。
政治介入度は低いが、
技術的・宗教的には極めて重要視される“沈黙の兵団”。
■ Ⅳ. 階級体系(帝国軍とは異なる独自制度)
● 七影導官(Seventh Conductor)
各兵団長。王族または神殿高官が就任。
● 聖導騎士(Holy Knight)
副官・隊長クラス。
● 聖導兵(Holy Force)
一般兵。
● 影導(Shadow Code)
白翼・黒翼の隠密階級。存在は公式記録外。
■ Ⅴ. 神聖魔導兵団の政治的役割
● 1. 王宮の軍事的“抑止力”
・枢機院のクーデターを抑止
・雷大陸・闇大陸との外交圧力
・宗教威信の維持に不可欠
● 2. 秘密政治の実働部隊
・貴族の裏切り封じ
・皇族間の権力争いの調整
・異端審問の強制力
● 3. 科学・魔導研究の実験場
特に黄影兵団・白影兵団は以下を担当:
◼︎魔導核の実験
◼︎人工魔導兵の育成
◼︎魔神細胞の隔離・応用
◼︎零位種の研究(機密ランク最上位)
カシアンが影で推進する
“タイプ・ゼロ計画”は白影+黒影+黄影の合同プロジェクト。
■ Ⅵ. 神聖魔導兵団と帝国魔導師団の違い(簡潔な対立構造)
【要素/神聖魔導兵団/帝国魔導師団】
□ 所属 / 王宮・神殿 / 行政院・帝都軍
□ 性質 / 宗教軍・政治軍 / 国家軍・技術軍
□ 任務 / 警護・治安・異端規制・諜報 / 戦術魔導・国家防衛
□ 権限 / 宗教法で特権付与 / 帝国法準拠
□ 作戦範囲 / 帝都・神殿・王族中心 / 帝国全土・国境・外征
両者は協力する場合もあるが、
基本的には 政治的ライバル関係にある。
■ Ⅶ. 現在の立ち位置(帝国暦1385年)
・高齢聖皇の影響で王宮権力が不安定
・神聖魔導兵団は白影・黒影の台頭で政治色が強まりつつある
・カシアンは白影兵団と黒影兵団の両方に影響力を持ち、
王宮内部では“最も危険な王族”と恐れられている
・黄影兵団は魔導核研究の要衝となり、技術面で勢力拡大中
・宗教軍としての大義が薄れ、“政治装置化”が深刻化
■ 総括
本資料で構築された神聖魔導兵団は、以下のように機能する:
★ 王権が弱体化する中で創設された“政治軍事組織”
★ 七属性になぞらえた“七影の特権部隊”
★ 宗教と諜報と軍事の境界線上にある危険な兵団
★ 帝国魔導師団とは異なる独立機構
★ カシアンが最大の権力中枢として活動できる舞台
★ ゼンの過去と現在を結ぶ“王宮の闇”そのもの
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■ ルミナス聖皇国 ― 統治理論構造
― 神権・貴族・官僚の三分立を基盤とした“光の政治体系” ―
ルミナス聖皇国の国家運営は、大きく分けて
三つの統治権限機関により維持されている。
これらは形式上は「均衡を保つ三本柱」とされるが、
実際には互いが牽制し合い、密かに争い続ける複雑な政治体系となっている。
◆ Ⅰ. 【聖皇院】
― 神権と象徴統治の最高機関(神権権力) ―
● 概要
聖皇と神殿最高司祭(光神官長)が所属する、
帝国における“神の代理統治”を司る機関。
建前:
「光の神ルミナの意志を地上に伝える存在」
実態:
王族の権威維持・宗教的正統性の管理・王宮派の政治的支柱
● 権限体系
聖皇院は以下の特権を持つ。
1. 教義解釈権
光の神の教えをどう解釈し、どの政策に適用するかを決定する至上権。
2. 儀礼主権
王権継承、祝祭、異端規定など、宗教儀礼に関わる全権限を掌握。
3. 王族勅令権(神勅権)
国家運営において一定の緊急命令を下す権能。
ただし実務執行力は弱く、枢機院・行政院と協調しなければ効果は限定される。
4. 神聖魔導兵団の統帥権
七影兵団を介し、軍事力と諜報力の一部を神殿側が保有。
王宮派の最大の武器となる。
● 現状(帝国暦1385年)
・聖皇は高齢で実務はほぼ不能
・神官長と王宮官僚、そして王族(特にカシアン)が実質の権限を行使
・神殿が政治化し、宗教が“道具”として扱われ始めている
◆ Ⅱ. 【枢機院】
― 貴族・騎士・都市代表による議政機関(政治権力) ―
● 概要
帝国貴族・地方領主・騎士団の元高官・都市商業連合の代表などから構成される議会的組織。
建前:
「帝国の秩序と法を定める立法権の中心」
実態:
政策立案・法律制定・外交方針の決定を司る “政治実務の中核”
● 権限体系
1. 法制定権
帝国法、都市条例、対外条約などを制定・改正する権限。
2. 予算管理権
行政院・軍部・魔導研究機関への予算配分を行う。
政治闘争の最重要要素。
3. 外交交渉権
各大陸国家との正式交渉窓口。
聖皇院の神殿外交とは別に“世俗外交”を行う。
4.帝国魔導師団の監督権
軍部の大半は枢機院と行政院の共同統制下にある。
● 政治構造
・貴族派、都市商業派、地方領主派、魔導技術派など多派閥
・内部抗争も激しく、王宮派(神殿)との駆け引きは常時進行
・宗教法の介入を嫌うため、神殿勢力との対立は根深い
◆ Ⅲ. 【行政院】
― 技術官僚・魔導士・学術機関が担う行政実務(行政権力) ―
● 概要
帝国の実質的な運営を担当する“官僚機構”であり、
教育・経済・軍需・研究・都市管理など、生活基盤のすべてを掌握している。
建前:
「帝国の未来を設計し、維持するための実務組織」
実態:
魔導文明を支える巨大な“管理システム”
● 権限体系
1. 行政執行権
法律に基づき、帝国内のあらゆる政策を実行する権能。
2. 研究監督権
魔導核研究、医療、魔法工学、結界技術など、
帝国技術の根幹を司る。
3. 軍需管理権
帝国魔導師団の装備・訓練・魔導炉供給の管理。
4. 教育統括権
帝国学術院・聖学院などの教育制度を総括。
● 特徴
・宗教的色合いが薄く、合理主義・数理主義が強い
・枢機院と利害が近いため政治的協調が存在
・神聖魔導兵団とは“権限の奪い合い”で対立関係
■ Ⅳ. 三権の均衡モデル(ルミナス式・三権均衡)
ルミナスでは以下の三権が相互に牽制しあい、
帝国が急激に暴走しないようにかろうじて均衡が保たれている。
【権力領域/実質的担い手/内容】
□ 神権(教権) / 聖皇院 / 宗教儀礼・王権・神聖魔導兵団
□ 政治権(立法) / 枢機院 / 法律・政策・外交・徴税
□ 行政権(技術・実務) / 行政院 / 魔導研究・軍需・教育・都市管理
● 表の関係
三権は独立し、互いに干渉せず、均衡を保つ。
● 裏の関係
互いの権限を侵食し合い、政治的支配を争う。
この構造が、
王宮派(聖皇院+神聖魔導兵団) vs 枢機院+行政院
という長期抗争の根源となっている。
■ Ⅴ. 神聖魔導兵団の立ち位置(政権均衡上の“例外権力”)
神聖魔導兵団は三権のいずれにも属さず、
聖皇院のみが統帥できる特権軍事組織である。
これは三権均衡の枠外にある“例外権力”であり、
政治システムの均衡を揺るがす最も危険な存在でもある。
▼ そのため:
・枢機院は兵団の縮小を要求
・行政院は技術支配を巡って対立
・王宮は兵団を唯一の力として手放さない
・カシアンはその構造を利用して勢力拡大
国家全体の政治緊張の根源は、
「三権均衡+神聖魔導兵団」という四権構造が生み出す歪みである。
■ Ⅵ. 現在の情勢(帝国暦1385年)
1. 聖皇は高齢で影響力が低下
2. 枢機院は貴族派と都市商業派が勢力拡大
3. 行政院は魔導研究の成功で発言力上昇
4. 神聖魔導兵団は白影・黒影が台頭し政治化
5. カシアンが三権を横断する“影の権力者”となりつつある
6. 国政全体が緩やかな冷戦状態
ゼンが去った後の帝国は、
光に満ちているようで、実際には各勢力が互いに影を落とし合う“多極争乱期”にある。
■ 総括:
ルミナス聖皇国の統治構造とは?
● 聖皇院(神権):王権・宗教権威
● 枢機院(政治):立法・外交・貴族統治
● 行政院(行政):実務・研究・魔導技術
● 神聖魔導兵団(例外軍事):王宮派の軍事的牙
この四つが絡み合い、時に均衡し、時に争い、
帝国という巨大な国家システムを構築している。
◆ 神聖魔導兵団が三権分立をどう変質させたか?
神聖魔導兵団は、“王宮軍”として創設されたため――
三権のいずれにも属さず、しかし三権すべてに干渉できるという非常に危険な構造を持つ。
1. 行政への圧力
行政院の魔導師団は兵団に対抗できず、
軍事政策で常に兵団を意識する。
2. 立法への圧力
枢機院は、兵団の独立性を憲法的に触れられない立場にある。
3. 司法への圧力
兵団には“宗教治安特例法”が適用され、
異端認定すればほぼ無制限で行動できる。
◆ ルミナス政治の実態:三権分立の“欠陥”と“均衡”
ルミナス国家で最も特徴的なのは――
● 三権が互いを牽制し
● 宗権が三権を上書きし
● 神聖魔導兵団がその宗権を裏から補強し
● さらに都市貴族連合が経済で揺さぶる
という 極めて不安定だが、絶妙なバランス を保っている点である。
その結果:
(1)表向きは平和で整備された超文明国家
・教育水準は最高
・魔導技術も最先端
・都市は秩序と光に満ちている
(2)裏では権力抗争が常に渦巻いている
・行政 vs 王宮(=兵団)
・枢機院 vs 都市連合
・白影 vs 黒影(内部抗争)
・貴族 vs 王族
・行政研究機関 vs 黄影(研究利権)
(3)“政治の闇”が物語の伏線として機能する
とくにゼンの“零位種”研究は
宗権と行政院双方が政治利用したい領域であり、
→ カシアンが白翼と黒翼を使って影から動く理由
→ フェルミナ婚約問題の背景
→ 終焉戦役の封印が放置される理由
すべてがこの構造と密接に関連している。
◆ ルミナス聖皇国の政治構造はこうである
● 1. 形式は「三権分立」、実態は「宗権+軍権」が最上位
● 2. 神聖魔導兵団の存在が三権分立を歪めている
● 3. 行政院は実務・軍事・技術を握り三権中もっとも強い
● 4. 枢機院は立法を担うが、宗教法に縛られる
● 5. 司法は宗教法と世俗法の“二重構造”
● 6. 都市貴族連合が経済で政治を揺さぶる
● 7. 全構造が物語の主要テーマ「光と影の均衡」を体現している




