アナスタシア・ルクレティア

◆ 第2王女：アナスタシア・ルクレティア

――「聖皇国第一の才媛」／「知慧の光姫」

■ 基本情報

【項目／内容】

□ 名称 ／ アナスタシア・ルクレティア（Anastasia Lucretia）

□ 通称 ／ 知慧の光姫（ちえのこうき）、学院の白陽

□ 年齢 ／ 38歳

□ 身分 ／ ルミナス聖皇国第2王女

□ 職務 ／ 聖学院最高教導官／帝国魔導図書院総監／帝国教育審問局議長

□ 外見 ／ 白金のストレートヘア、淡金の瞳。清楚で理知的、痩身。

□ 性格 ／ 温和・物静か・慎重・論理的。だが決断は鋭く、政治的芯は極めて強い。

■ 政治的立場：中道学術派の“最高指導者”

アナスタシアは王族としては珍しく、

宗教至上主義（神殿貴族）にも、軍事派（帝国魔導師団・騎士団残党）にも属さず、

帝国行政の中核である 行政院・教育局・魔導研究機関 を束ねる

“中道学術派” の最高権威である。

▼ 彼女が統括する派閥

〈清律会〉—行政院・聖学庁を拠点とする学術政治連合体

構成：

・行政院官僚

・魔導学者・神学改革派

・教育局教導官

・学院都市セレス学僧団

・一部の若手枢機卿（改革派）

勢力規模：

官僚・魔導技術派の約30％を占め、保守派・軍事派と並ぶ三大勢力の一角。

理念：

「光とは倫理であり、宗教ではない」

「学術による統治こそ帝国の未来」

「神の名ではなく、人の判断で国家を動かすべき」

アナスタシアはこの思想の象徴であり、

聖王六世の宗教侵略政策の歴史に最も強硬に反対した王族として知られる。

■ 宗教との距離感：王族でありながら“信仰を客観視する異端”

ルミナス聖皇国において、王族と宗教は不可分である。

にもかかわらずアナスタシアは—

▼ 「ルミナ信仰＝哲学・倫理体系であるべき」と主張する。

これは

聖皇国の根幹（＝神の権威）を揺るがす極めて危険な思想

であり、保守派からは“静かな異端”と恐れられている。

しかし彼女は信仰そのものを否定してはいない。

「光は人が歩む道を照らすためにある。

　 神の名を掲げて民を縛るためではない。」

この立場は、終焉戦役後の混乱期に多くの市民・知識階級の共感を得て、

彼女は結果的に “帝国思想改革の中心” となった。

■ 能力・専門性

● 学術王族としての特異な能力

□ 魔導理論構築能力

世界七属性の体系化を実現した、王族史上最高の魔導学者。

“光＝哲学”として再構築した功績は、

魔導文明期以降の現代教育制度に多大な影響を及ぼしている。

□ 歴史編纂統括能力

帝国図書院で歴史の再編集を行う立場にあるため、

“帝国が何を記録し、何を闇に葬るか” を判断できる。

（ゼンの英雄記録がどこまで残されているかは、彼女の裁量の影響が大きい）

□ 政治哲学・外交思想

条約文フレームの作成にも参与し、

「七極均衡条約」の倫理的側面を構築した影の立役者として知られる。

■ 性格面の深層

・温和で礼儀正しいが、政治判断は容赦がない。

・信念が強く、一度決めた道は絶対に曲げない。

・権力は嫌うが、必要であれば徹底的に使用するタイプ。

・妹フェルミナへの愛情は深いが、依存ではなく“自立”を求める。

・王家の中で数少ない「ゼンの思想」を理解しうる知識体系を持つ。

■ 名言・口調イメージ

「光とは、正義ではありません。

　正義を判断するための“道具”です。」

「フェル。あなたが選んだ未来であれば、私は支えます。

　ただし――逃げた先にも、責務はありますよ。」

「帝国は強大です。しかし、強大であるがゆえに脆い。

　そのことを最も理解していないのが、帝国自身なのです。」

■ 人物像

アナスタシアは、現代ルミナス聖皇国を支える

最高位の学術官僚であり、王族史上屈指の魔導理論家 として知られる。

王族でありながら宗教色に偏らず、

光属性を「信仰ではなく哲学・理性の象徴」として扱う姿勢が特徴で、

聖皇国の知的体系と教育制度の刷新に大きく貢献した。

帝国民のあいだでは、

「光の知恵は、彼女の言葉によって形を得る」

とまで称され、

教育・魔導・歴史研究の三分野で最も影響力のある王族である。

■ 聖王六世（先帝）への公式姿勢

― 歴史上“唯一、制度的批判を提出した王族” ―

アナスタシアは、現聖皇七世が即位した後、

聖学院と帝国図書院の共同研究として

「光歴史学的再検証報告（通称：アストラ白書）」 を枢機院へ提出した。

この白書の核心は、

・聖王六世が展開した大陸横断戦争の思想的起源

・ルミナ信仰が軍事行為と結びついた歴史的過程

・統一秩序を掲げた政策がもたらした長期的損失

を、王族として初めて“公的評価の対象とした”点にある。

彼女は名指しの批判を避けながらも、

「光の名は、秩序を導くためのものであり、覇権の旗ではない」

と結論づけた。

この声明は帝国知識層に強い影響を与え、七極均衡条約の理念的基盤のひとつとなる。

王族が歴代政策を公的に見直すことは極めて異例であり、アナスタシアは 「七世改革期の象徴的人物」 としての評価を確立した。

■ 婚約問題（確定版・全面修正版）

アナスタシア・ルクレティアの婚約は、

王権と行政の均衡を維持するための“国家的合意”として進められた。

その相手に選ばれたのは、古来より帝国行政を支えてきた五大貴族家門のひとつ、アレクトール家 の次期侯である。

アレクトール家は、帝国の財務・教育・行政管理において長い歴史を持つ名門であり、枢機院内部では 行政ブロックの中心的権門 とみなされる存在である。

この婚姻は、単なる家同士の結びつきを超え、

・王家（学術・宗教的正統性）

・五大貴族（行政実務の中核）

の二大柱を結びつけることで、

帝国政治の安定を象徴するもの とされた。

● 婚約が持っていた政治的意味

1. 王族と行政の共同統治の明確化

教育・魔導学術を司るアナスタシアと、行政の名門アレクトール家が結ばれることで、帝国の“知”と“実務”を一体化させる狙いがあった。

2. 枢機院の中道路線の強化

宗教保守派・軍事派・改革派が対立する中、中道（行政院・学術派）の安定を象徴する婚姻として評価されていた。

3. 国内版・均衡婚姻政策の実例

七極均衡条約が求めた「結びつきによる平和」を、国内統治にも応用した最初のケースとされた。

この婚約について、アナスタシア自身は表向き肯定していたが、内心では「王族の婚姻が均衡の道具と化す現状」に疑問を抱いていたと言われる。

● 婚約解消とその影響

婚約発表の数年後、アレクトール家の連結領において“財務処理の不正”が発覚した。

不正そのものは家門全体ではなく、次期侯の側近組織に起因するものであったが、王家との婚姻を前提とする家としては「管理体制が不適切である」と判断され、枢機院の正式な議決を経て 婚約は解消 された。

この決定は国内外で大きな衝撃を生んだが、結果としてアナスタシアの政治的評価はむしろ上昇した。

● 婚約解消後の評価

・王族としての 独立性・清廉さ の証明

・行政派・学術派双方からの 信頼強化

・婚姻を政治操作の道具としない姿勢の明確化

アナスタシアは以降も、

聖学院および帝国図書院の改革に力を注ぎ、

王族としての職務に一層専心する姿勢を見せている。

● アナスタシア自身の姿勢

彼女は後年の教育講義で、王族の婚姻をめぐる制度についてこう述べている。

「結びつきは、力の均衡のためではなく、

　人が互いを照らすためにあるべきです。」

個人的感情を公に語ることの少ない彼女の言葉として、この発言は多くの聴講者に深い印象を残した。

▼ 評価

アナスタシアの婚約は、

・王家と行政貴族の均衡の象徴

・枢機院中道派の政治的安定装置

・七極均衡条約の理念（結びつきによる平和）の国内反映

という三重の意味を持つ国家的案件だった。

その解消は不祥事によるものではあったが、彼女の政治的立場を揺るがすどころか、“王族として最も清廉な光” と呼ばれる評価を確立する結果となった。

■ フェルミナとの関係

アナスタシアは七人きょうだいの中で最も穏やかかつ中庸的な価値観を持ち、フェルミナにとって「心の拠り所」とも言える存在。

幼いフェルミナに対して、

彼女は常に次のように教えていた。

「光は、人を縛るためのものではありません。

　照らし、導き、寄り添うためのものです。」

この価値観はフェルミナの人格形成に強く影響し、

後の“自由を求める旅立ち”の精神的基盤にもなった。

■ 総評（公的評価）

アナスタシア・ルクレティアは――

・帝国随一の学術官僚

・教育制度改革の推進者

・光哲学の再解釈者

・王族の中で最も理性と調和を重んじる存在

として広く認識されている。

その姿勢は王家内外から尊敬を集め、帝国が“信仰ではなく理性をもって未来を築く”という現代の理念を象徴する王族である。

・宗教国家で“宗教を客観視する”革新的王族

・行政・学術・教育を束ねる実質的な政界中枢人物

・七極均衡条約の倫理原則の構築に貢献した理論者

・フェルミナ逃亡を政治的にカバーした陰の支援者

・帝国の未来を“思想”で変えようとする王族

その存在は、“光の帝国”の知の象徴であると同時に、帝国の矛盾と歪みを最も深く理解する“冷静な進行役”である。