第93話 恋のライバル
ケルヴァンを村の共同厩舎へ預けると、番の老人が「遠乗りだったろう」と言って、温かい飼い葉と清水を用意してくれた。
レヴは満足そうに鼻を鳴らし、乾いた草をぽりぽりと噛みはじめる。
「レヴ、今日もありがとう。また明日ね」
手綱をそっと撫でると、レヴはまるで理解したように首を傾げた。
クレアは鞍を整えながら、淡々と確認する。
「ケルヴァンは問題ありません。明日には十分動けます」
「よかったぁ……。足、もう棒みたいだよ……」
「棒になっているのはミナ様のほうでしょうね」
う……反論できない。
厩舎を出て少し歩くと、村の空気がしんと冷たく澄んでいることに気づいた。
帝都のように光脈灯が整備されているわけじゃないから、日が落ちたあとの村は“静けさの幕”をゆっくり下ろしていくようだった。
けれど、ただ暗いだけじゃない。
遠くの山肌には、ほんのりと淡い光の筋が走っている。
《山脈光孔》と呼ばれる自然の魔力噴出孔が、夜になると熱を帯びて、うっすら蒸気を上げながら光脈を露わにするのだと、道中でクレアが説明してくれた。
「わ……きれい……」
思わず声が漏れた。
山際に沿って、青白い光が一本の道みたいに連なっている。
昼間はただの岩の継ぎ目にしか見えなかったのに、夜になると景色そのものが変わってしまう。
帝都にいた頃は、こういう“自然の光”なんてほとんど見たことがなかった。
クレアは少し歩調を緩めながら、淡々と補足する。
「この地域は地脈が浅いんです。だから秋から冬にかけては冷えますが、そのぶん光孔が活性化します。夜のほうが明るい場所もあるほどですよ」
「すごい……。帝都とは全然違うんだね……」
「帝都は光石による人工照明が主ですから。自然の地脈光は、ここまで露出しません」
その言い方が妙に誇らしげで、わたしは思わず笑ってしまった。
両脇には木造の家々が肩を寄せ合って建っている。
どの家の窓も黄色い灯りが揺れていて、料理の匂いや薪の香りが鼻先をくすぐった。
村の中央へ近づくほど、建物はしっかりとした造りになっていく。
とくに宿屋の周囲は巡回用の灯柱が等間隔に立っていて、旅人が迷わないように配置されていた。
交易路から外れた村とはいえ、ここは“山越え旅の最初の中継点”として知られているらしく、年中それなりに人が訪れるのだという。
宿の前には、荷馬車が二台、魔導車が一台停まっていた。
遠方から来た商人や修道旅団だろうか。
屋根には雪避けの木枠が取り付けられ、重い荷物もしっかり固定されている。
宿は村の規模に比べて不釣り合いなほど大きくて、外壁は頑丈な石造り、屋根は厚い木板で重ねられ、窓には魔除けの符が貼ってあった。
旅人がよく通る街道から少し外れた位置にあるとはいえ冬の山風が強い地域らしく、防寒と耐久性を重視した設計なのだろう。
二階建ての宿の扉を押すと、ほっとするような暖気が溢れ出した。
扉をくぐった瞬間ふわりと鼻をくすぐったのは、煮込みと香草の混ざったやさしい匂いだ。
「いらっしゃい。旅のお客さんかい?」
丸顔の女性主人がカウンターから顔を上げて声をかける。
「はい。二人、泊まりたいのですが」
クレアの丁寧な言葉に、女将さんは「あら、珍しい美人旅人さんだねぇ」と目を輝かせた。
宿の中は、外の冷たい山風が嘘のように温かかった。
天井の梁は人の腕ほどもある太い樫の木で組まれており、年月を刻んだ深い色合いが落ち着きを与えている。床は削り出しの板張りで踏みしめるたびにほどよく軋み、山間の宿に特有の“生きている木材の音”が返ってくる。
壁際には乾燥させた薬草や山野草が束ねられて吊され、それらが暖炉の熱でゆっくりと香りを放っていた。火の揺らめきが壁に影を落とし、影がまたゆるやかに揺れて、見ているだけで心がほぐれていく。
旅人向けの宿泊所というより、気心の知れた誰かの家にふらりと招かれたような、そんな安心感があった。
派手さも格式もないのに、身体の芯がほっとする。帝都の豪奢な宿には絶対にない「生活の温度」がここにはあった。
ブロイナ夫人に案内され、二階の角部屋に通される。
階段を上がると木の香りが濃くなり、外から吹き込む山風の気配が薄らいでいく。
扉を開けた瞬間、ふたりとも思わず息を呑んだ。
窓の外には雲一つない夜空が広がり、山脈の稜線が黒い影となって横たわっている。
宿の灯りが届かない草原は淡い青に溶け、光脈石の弱い輝きが風に揺れて星屑のように瞬いていた。帝都のように光が溢れていないからこそ見える、静寂の景色だ。
部屋には硬すぎず柔らかすぎずの木製ベッドが二つ。
手作りの綿入り毛布が丁寧に畳まれ、ベッド下には湯たんぽ代わりの“小型地熱石”が置かれている。
中央には丸い木の卓と椅子があり、窓辺には夜風を遮る厚布のカーテン。
片隅には陶器の洗面壺が置かれ、蓋を開けると湯気がふわっと上がった。温度はぬるめだが、山の夜にとってはありがたい温もりだ。
そして部屋の壁際、目立たない位置に備え付けられていたのは――
帝都で見た最新型ほどではないが、旅籠としてはかなり贅沢な「簡易魔導式温水器」。
魔力結晶の熱で一定時間だけ温水を供給してくれる装置で、「……すごい、思ってたよりずっと快適ですね」
とクレアが思わず感想を漏らすほど整った設備だった。
帝都の高級宿のような煌びやかさはない。
でも、旅人に必要なものが一つ残らず揃っている。
それも誰かの見栄ではなく“暮らしの知恵”として置かれている。
ベッドの木目。窓枠の細工。卓に刻まれた傷。
かつての巡礼者たちがこの部屋でどんな夜を過ごしたのか、想像できるほどの歴史が染みついていた。
フェルミナは窓に手を当て、夜の空気を吸い込む。
「先にお風呂、借りよっかな……足の砂がすごいし」
「どうぞ。私は荷物を整理します」
部屋に併設された小さな浴室には、石壁に囲まれた湯槽と、光石を熱源にしたシャワー装置がある。
蛇口を捻ると、じんわりと温かな湯が流れ出て、身体中の疲れが溶けていくようだった。
(はぁ……極楽……)
湯気に包まれながら、今日のことがひとつひとつ思い返される。
帝都を抜け出したあの瞬間。
高原の風。
圧倒されるほどの星空。
クレアの静かな笑み。
レヴの頼もしさ。
……そして、ゼン様のところへ向かっているという事実。
胸がふわっと熱くなる。
湯から上がって身を拭きながら、鏡を見る。
風にさらされて少し乱れた髪、いつもより赤みを帯びた頬。
これが“旅人ミナ”の顔なんだと思ったら、なんだか可笑しくて笑ってしまった。
着替えて部屋に戻ると、クレアは卓に料理を運んでくれていた。
「スープと黒麦パン、それから焼き根菜です。女将さんがサービスで出してくださいました」
「わぁぁ……美味しそう……!」
スープは鶏と野菜の旨味がふわりと広がる、どこか懐かしい香りだった。
湯気の向こうで細かく刻まれたハーブが揺れている。
口に運ぶと、体の奥に張りついていた緊張がじわじわほどけていく。
パンは表面が固いけれど中はしっとりしていて、噛むほどにほんのり甘い。
根菜は香ばしく焼かれていて、素朴なのに胸の奥に温かさが染みてくる味だった。
――ああ、こんなふうに“普通の食事”がおいしく感じられる時間って、すごく久しぶりかもしれない。
「クレア、ありがとう。いただきます」
「どうぞ」
短い言葉なのに、クレアの声はいつもと同じ落ち着いた温度でわたしの心まで整えてくれる。
だけど同時に……胸の奥がざわついた。
(聞かなきゃいけない。
でも聞いたら、戻れなくなるような気もする。)
スープを飲む手が止まる。
食べ始めて数分、ほっとした空気の中でどうしても我慢できなくなって、わたしはスプーンを置いた。
呼びかけた瞬間、自分の声が思っていたより小さくて驚いた。
かすかに震えているようにも思えたのは、きっと気のせいなんかじゃない。
「はい。なんでしょう?」
クレアの声はいつも通り落ち着いていて、澄んだ水面のように揺れがない。
その静けさに触れた瞬間、余計に心がざわついた。
わたしの胸の奥でふわっと温かいものと、ちくっと刺すような痛みが交互に揺れる。
――聞いてはいけない気がする。
――でも、知りたい。
両方の気持ちが綱引きしていて、胸の奥がなんだか苦しい。
喉が少し乾いた。
息を吸うたびに胸がきゅっと縮む。
こんな気持ちになるとは思っていなかった。
けれど、それでも――聞かなきゃ、前に進めないと思った。
「……クレアは、その……ゼン様のこと、どう思ってるの?」
クレアの肩が、ほんの一瞬だけ止まった。
彼女は普段、揺らぎが一切ない。
危険を察知した獣みたいに、いつでも静かに動いているのに。
そのクレアが、動きを止めた。
胸がドクンと跳ねた。
ああ、これは――やっぱり核心なんだ。
「どう、とは」
クレアが問い返す声は冷静で、それが逆にわたしの不安をじわじわ刺激する。
別に責められてるわけでもないのに、まるで自分の心の奥を覗かれたみたいで落ち着かない。
「そのままの意味だよ。ゼン様のこと。
尊敬してるのは知ってるけど……その……好き、とか……そういうのはあるのかなって」
自然に言おうとしたのに、言葉が少しつっかえた。
胸の奥がぎゅっと縮んだまま、うまく息ができない。
“怖い”のかもしれない。
クレアの答えを知るのが。
だって、彼女はゼン様の弟子で、長い時間を一緒に過ごしてきた。
わたしなんかよりずっと近くで。ずっと長く。
ゼン様の背中をあの距離で見てきた人。
もし、もしも――
クレアがゼン様を想っていたのだとしたら。
その感情の深さに、わたしは勝てない気がする。
そんな弱い思いが胸の奥を打った。
クレアの灰青の瞳が、真っ直ぐにわたしを見る。
その視線は冷静なのに、なぜか胸がざわつく。
彼女の中に答えがあることは、見ただけでわかった。
しばらく沈黙が続いた。
静かな風がひゅう、と横を通り抜けていく。
そしてクレアはゆっくりと視線を伏せた。
「……私には、そういう気持ちはありませんよ」
その声は妙に淡々としていた。
だけど、どこか遠くを見ているようだった。
「私は、ゼン様に救われました。
あの人がいなければ、私はたぶん……十歳のときに、そこに“いなかった”」
淡い炎に照らされたクレアの横顔は、夜の影を帯びているように見えた。
「ゼン様は、私にとって……世界で最初に、手を伸ばしてくれた人なんです。
戦場の瓦礫の中で、みんなが死んで、私も半分死んでいたような時に……
あの人だけが、『大丈夫だ』と言ってくれた」
クレアは静かに言葉を続けた。
「蒼竜騎士団に入ってからも、ゼン様は厳しかったです。
でも、強くなることを強制はしない。
“守るとは何か”を、私が自分で選べるように、いつも待ってくれる人でした」
その語り方は、あくまで淡々としている。
だけど、それは“感情がない”からではなく──
“表に出すことができないだけ”なのだと、わたしは感じた。
「……それって、すごく特別なことだよね」
思わずそう言うと、クレアは微かに困ったような顔をした。
「特別、ですか。どうでしょう。
ゼン様は誰に対しても“あの人のまま”でしたから。
甘くなく、優しくなく……でも、逃げたくなるときほど側にいる人です」
「それって……十分、特別じゃない?」
そう重ねると、クレアは少しだけ言葉を詰まらせた。
その指先はスプーンを持ったまま、わずかに震えている。
「……私はただの弟子です。ゼン様にとっても、たぶんその程度です」
「クレア……」
「本当にそうなんです」
と、彼女ははっきり言った。
けれどその声はまるで羽根のように軽く、脆かった。
わたしは思わず胸の奥がきゅっと縮んだ。
たぶん、クレア自身もそれが“恋”に近いものだと気づいていない。
気づかないまま、ただ師を想い、師に救われた記憶を手放さずに生きてきたのだ。
「……じゃあ、ゼン様と再会できるの、嬉しい?」
問いかけると、クレアはほんの少しだけ目を見開いた。
その反応があまりに素直で、わたしは思わず微笑んでしまった。
「……嬉しくないと言ったら、嘘になります」
「だよね」
「ですが……」
クレアはゆっくりと言葉を継いだ。
「“会うのが怖い”という気持ちも、少しだけあります」
「怖い……?」
「はい。……私があの人の前に立って、
昔と同じように“弟子”でいられるのかどうか、分からないからです」
クレアはそこでハッとしたように口を閉じた。
自分がどれほど深くゼンを想っているかを悟ったのかもしれない。
わたしは、そんな彼女を静かに見つめた。
「……そっか。クレアも不安なんだね」
クレアはわずかに頷いた。
「でもね、クレア。それでいいんだと思う」
「……いい?」
「うん。だって、会いたいって思ってるんでしょ。
それって理由なんていらないくらい、強い気持ちだよ」
クレアは、驚いたように瞬いた。
「私は……会いたいよ。ゼン様に。
でもクレアだって、会いたい気持ちはきっと同じ。
それは恋とかじゃなくても……人としての“想い”なんだと思う」
クレアはしばらくの沈黙の後、小さな声で呟いた。
「……ミナ様は、優しいですね」
「優しくなんかないよ。私、クレアのこと……ちょっとだけライバル視してたもん」
思い切ってそう言うと、クレアは珍しく目を丸くした。
「……私が、ミナ様の? ……ライバル?」
「うん。でも……今はそうじゃないかも。
クレアはクレアの気持ちでゼン様を大事にしてて、
私は私の気持ちでゼン様に会いに行ってる。
それが全然違うってこと、ちゃんと分かったから」
クレアはゆっくりと視線を落とし、
ほんの、ほんの少しだけ……照れたように微笑んだ。
「ありがとうございます。……ミナ様」
その笑みは、いつもの冷たさを溶かすような、柔らかいものだった。
◇ ◇ ◇
◆ ロアン村・宿泊施設
《山灯亭》
所在地:ルミナス大陸・ロアン村(帝都から約120km)
分類:巡礼古道沿い・山越え前の“旅路中継宿”
■ Ⅰ. 村の位置と宿の必要性
ロアン村は、帝都セレスティアから 南東約120km の山麓地帯にあり、
正規街道(光冠街道)からわずかに外れた“巡礼古道”沿いに位置する。
この道は、
・監視が薄い
・山越えの入り口に最適
・帝都の光脈照明が届かない自然地帯
という特徴があり、フェルミナとクレアが“目立たずに移動する”には最適。
■ Ⅱ. 《山灯亭》 概要(資料形式)
【項目/内容】
□ 名称 / 山灯亭
□ 種別 / 中規模旅籠(宿泊+食事+厩舎連動)
□ 建造構造 / 石造り外壁+厚木板屋根(二重断熱構造)
□ 階数 / 地上2階(一部ロフト)
□ 収容人数 / 最大45名(繁忙期)
□ 創設 / 約90年前(古巡礼時代の聖院の避難小屋が前身)
□ 運営 / 家族経営(三代目亭主:ブロイナ夫人)
□ 客層 / 巡礼者、山越えの旅人、荷馬車隊、商人、魔導車利用者
■ Ⅲ. 外観・建築の特徴
旅人が凍死することもあった険しい山の入口に位置するため、建物は非常に堅牢。
● 1. 建築素材
・外壁:山脈採掘の白灰石(耐寒性・耐圧性に優れる)
・屋根:厚木板の重ね葺き+雪落とし用の木枠
・窓:魔除け符を貼付(山魔獣避け)
・玄関:断熱二重扉(防風仕様)
● 2. 夜間の安全構造
・宿の周囲には光脈灯柱を6本配置
・外壁に“山風除けの魔導結界板”が固定
・厩舎と宿屋の間に木製柵を設置し、魔獣侵入を防止
■ Ⅳ. 内部構造(間取り図イメージ)
● 一階(公共スペース)
・受付兼カウンター(ブロイナ夫人が常駐)
・食堂・炉辺ホール(20席、中央に大炉)
・厨房(煮込み鍋が常時稼働)
・浴場(薪湯)
男湯・女湯に分かれる
地脈加熱石を利用して湯温を保つ
・乾燥室(濡れた衣服や靴の乾燥用)
● 二階(宿泊スペース)
・個室 20室(旅人/商人用:静かで高めの料金)
・相部屋 12室(巡礼者・旅人用:最大6名)
・女性専用部屋 4室(混雑時でもセキュリティを保つため)
● 付属施設
・共同厩舎(ケルヴァン8頭、馬4頭、荷牽き獣用区画)
・魔導車置場(10台分)
・光石充填スタンド(魔導車補給用小型装置)
・外庭(旅人の荷物整理用・井戸併設)
宿の規模が村に不釣り合いに見えるのは、
“巡礼古道時代の避難拠点”を起源としているため。
■ Ⅴ. 食事とメニュー(地域性に合わせた設定)
● 主な夕食
・高原根菜のハーブ煮込み(名物)
・山鳥のロースト
・発酵黒麦パン
・光脈水で煮出した温野菜スープ
● 朝食
・白粥(光脈水仕込み)
・卵焼き
・野草茶(夜冷えを防ぐ)
宿の料理は「地味に美味しい」と旅人に評判。
■ Ⅵ. 宿の役割・周囲の交通網との関係
ロアン村は「小規模村落」だが、位置関係は物流・交通の交点に近い。
◆ Ⅵ–A. 近隣の交通インフラ
◼︎1. 魔導列車 《光脈線》最寄り駅
イシュラン宿駅(第三等駅)
・ロアン村から北へ16km
・徒歩で移動すると半日
・騎獣なら20分
・監視が厳しく、王族の動きを把握できる哨戒網あり
→ フェルミナが意図的に避けた駅
◼︎2. 風翔獣ステーション(騎獣中継所)
ソル・ストライダ駅(中規模 Biobeast Station)
・ロアン村から南西へ8km
・ケルヴァン30頭規模
・軍と商隊の利用が多く、検問が行われる
→ 王女の逃走ルートとしては不適切なため利用しない
◼︎3. 魔導車道(光脈舗装路)
・ロアン村の北側 2kmのところで街道に接続
・魔導車による物流が頻繁
・巡回する騎行警護官あり
→ 目立つため、フェルミナ一行は一般街道を使用しない
◼︎4. 巡礼古道
ロアン村はこの古道の“中継点”。
古道は
・幅が狭い
・魔獣遭遇率が高い
・見張りが少ない
・旅人や巡礼者が自由往来する
という特徴を持ち、フェルミナの逃走路として最適。
■ Ⅶ. 宿の従業員・NPC情報(物語活用用)
● ■ ブロイナ夫人(宿の主)
・50代/丸顔/朗らか
・旅人の人相を見るのが得意
・元巡礼者で、山の地形に詳しい
・フェルミナの“隠し身分”に気づかない
● ■ ミロ(厨房兼給仕)
・16歳
・魔導学院を落第し、村へ戻った若者
・ちょっと天然
・クレアを“軍人っぽい人”と警戒する
● ■ 厩舎番の老人:ラスタフ
・70代
・ケルヴァンの扱いが異常に上手い
・レヴの状態を見抜き、的確な飼い葉を選んだ
・騎獣小屋の古い歴史を知っている
■ Ⅷ. セキュリティと宿の“地味な重要性”
宿《山灯亭》は、
王族や監視部隊が利用する主要街道沿いではなく、
“古道側”に面して建てられているため、
・身元確認なし
・旅人の出入り自由
・魔導車の利用が少ない
・騎獣利用が一般的
・夜間は村自体が静けさと闇に包まれる
という環境がある。
つまり、フェルミナとクレアが最も“痕跡を残さず泊まれる宿”
という条件に完全に適している。
■ Ⅸ. 宿泊料金(世界経済バランスに基づく)
【部屋/料金(1人/1泊)】
□ 個室 / 5,500ルク
□ 相部屋 / 3,200ルク
□ 女性専用部屋 / 3,500ルク
□ 厩舎利用 / ケルヴァン1頭:1,000ルク(飼い葉込み)
※ 帝都の宿の1/3 以下とかなり良心的。
■ Ⅹ. まとめ
ロアン村の宿 《山灯亭》は――
・巡礼古道の遺構を拡張した中継宿
・石造りで頑丈、冬の山風に強い
・村の規模に比して大きいのは歴史的必然
・ケルヴァンと魔導車の双方に対応
・魔導列車駅や公式ステーションから意図的に離れている
・“目立たない旅”を目的とした者に最適
・夜は自然地脈の光に照らされ幻想的




