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だがさすがに無防備な女の人にそういうことするのは気がとがめる。この能力は最終手段にした方がいい。
女の顔色が良くなっていく。呼吸も整いつつあるし、体の傷もみるみるうちに塞がっていくではないか。
「こりゃ、どうなってんだ?」
「わからない。わからないけど、たぶんこの主従の契約にはそういう効果があるってこと」
「傷を治したり毒を浄化したりか?」
「それ以外にもいろいろありそうだけどね。効果の程はわからないわね」
「自分で作った魔法なのに……」
「それは忘れなさい」
「でもそれならお前の体内にある毒もなんとかなるんじゃないか?」
「それはどうでしょうね。アンタの唇に能力があるんじゃなくて契約の儀式そのものに能力があるような気がするわ。それに今は必要ないし」
「必要ないってどういうこと?」
「あの毒、ほとんど抜けてるから」
「そんなバカな……」
今までの苦労はなんだったのか。
「時間経過で治るのか。そりゃ良いこと聞いたな」
「普通の人間じゃまず回復しないと思うけどね」
「そういやお前人じゃなかったわ」
「まだ人間よ!」
「今普通の人間じゃって自分で言ったのに……」
「特別な人間ってことよ」
「そもそも人間は五百年も生きることができない」
「細かいことはどうでもいいのよ」
「五百年が細かいこと……?」
「クドいわよ。とにかくこの女はもう大丈夫だから私たちも寝ましょうか」
追求されるのが嫌なのか、ヴァルはいそいそとベッドに戻っていく。
「おいおい、このまま放置して寝るのかよ」
「はいはいわかりました」
「ちょっと離れて」と言われたため、俺たちは女が寝ているベッドから距離をとった。するとヴァルはベッドの周りにバリアを張った。
「これで勝手に外には出られないから」
あくびをしてそのまま横になってしまった。数秒後には寝息が聞こえてきた。入眠早すぎでしょ。
キャロルはいつの間にか眠ってるし、残るは俺とノアだけになった。
「俺たちも寝るか」
「そうだね」
そうしてノアもベッドに戻っていったが、よくよく考えれば俺のベッドは女に占拠されている。ノアとキャロルのベッドは二人で限界。
「こうなるかー」
ため息を吐きながらヴァルのベッドに潜り込んだ。妙に甘い匂いがするのでドキッとしてしまう。
「気の迷い」
でなければヴァルにドキドキするわけがないからだ。
彼女に背を向けて目蓋を閉じた。眠るにはもう少しだけ時間がかかりそうだ。




