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 こうして俺たちは金を下ろしてから森へと向かった。俺たちは洞くつが言える位置に待機し、洞窟にはロウエンだけが歩いていった。ヴァルが開発した魔法トランシーバーで会話ができるようになっている。ロウエンが一つ、ヴァルが一つだ。


「なんでもかんでも魔法つけりゃいってもんじゃないんだって」


 なんでもありじゃん。


 ちなみにだが、3万ゴールドはなぜかヴァルが出していた。最初は当然ロウエンが出すことになっていたが「ここは私が出すわ。騎士様の家族のいち大事なんですもの」なんて言っていた。


「ちょっと訊きたいんだけどなんでお前が金出したわけ? パトロンかなんかのつもりか? 相手はアイドル騎士でめちゃくちゃ稼いでるんだぞ? ババアが貢いでもなにもないぞ?」

「私がババアでもなんでもイケメン騎士は救わないとダメなのよ。国宝なのよ。はした金で国宝一家が助かるならなんてことないのよ」

「推しは?」

「ビリー」

「なんなん……」

「かっこよきゃなんでもいいんかい」


 しょせん顔面がすべてってわけか。世知辛い世の中だな。


 と、ここで肩を叩かれた。ノアだった。


「言ったでしょ。私はエージの顔嫌いじゃないよ」

「微笑みながら言わないでよぉ」


 顔面が熱いです。


「普段は無理矢理ベッドに入ったりするのに」

「それとこれとは話が違うんだよ……」


 するのとされるのじゃ意味が違うんすよ……。


 と、ここで頭をぶん殴られた。見なくても誰かはわかる。あまりにも痛くてちょっと休まないと喋れそうにない。


「なんか言いなさいよ」

「うるせえよ……」

「そんなところでクッサイラブコメみたいなことしてるからでしょ」

「人の幸せぶっ潰して楽しい?」

「最&高」

「クソすぎる……」


 コイツのせいで楽しい夢も見られない。


「ヒャッハー」

「楽しそうでなにより。そのうち覚えておけよ」

「楽しみにしてるわー!」


 一週間くらい水しか飲めないくらいのショックを与えてやりたい。


 ザザっと、トランシーバーから音がした。ロウエンがトランシーバーを作動させたことで雑音が乗ったのだ。


『どこだ。金は持ってきたぞ』


 と、ロウエンが言うと洞窟に跳ね返って声が返ってくる。


『いないのか?』


 シーンとした洞窟の中で、トランシーバー独自の雑音だけが聞こえていた。


 その後、ロウエンは洞窟を進みながらもいるかいないかわからない「誰か」に喋りかけていいた。それから大体三十分くらい経っただろうか。ロウエンの足が止まった。


『姿を見せてくれ。ケインを帰してくれ!』


 やはり返事はない。


『もう洞窟の奥まで来た! どこにいるんだ!』

「おかしいわね」


 ヴァルの声はロウエンには聞こえていない。だがきっとロウエンもおかしいと思い始めているはずだ。


 次の瞬間、大きな爆発音がした。大地が揺れ、山からは岩石が落ちてくる。ガラガラと崩れてくるその岩石は洞窟の入り口をまたたく間に塞いでしまった。


 まあそんなもんはきっと魔法でなんとかなるんだろうけど。


 次の瞬間、背後でまた大きな爆発音がした。


「なんだなんだ?!」


 ドオン、ドオンとそんな音が五回聞こえた。そしていくつもの太い煙が天高く登っていく。その場所は――。


「あれ、王都じゃない?」


 ノアが言った通り王都の方でなにかがあったらしい。


「すぐにでも王都に戻った方がよさそうね」

「じゃあ洞窟は?」

「こんなのはロウエンがなんとかするわよ。聖騎士は魔法くらい使えるし」


 ヴァルはすぐさまトランシーバーでロウエンに連絡を入れた。王都で問題が発生したから先に行く、という内容だ。


『わかった。洞窟から出たらボクも向かいます』

「じゃあ自力でよろしく」

『わかった。王都の方は頼むよ』


 なんでもできる聖騎士様だ。これくらい問題ないだろう。


 俺、ヴァル、ノアは森の中を駆け抜けて王都に急いだ。その間も爆発音が聞こえていたのが不安を煽る。


 およそ十分くらいは走っただろうか、王都に着いた頃には街全体が破壊されていた。


「なんじゃこりゃ……」

「元凶はあれみたいよ」


 遠くの方で魔法をぶっ放しているヤツがいる。ヤツらという方が正しいか。視線の先にもいるのだが、どうやら王都全域に散っているのがいろんな場所で爆発音が聞こえる。


「この前やったみたいに高くジャンプしてなんとかしろよ」

「あれはテキトーにぶっ放すしかできないの。あんな上の方から細かい調整なんてできるわけないでしょ」

「言われてみれば確かにそうだけど」

「とにかく地べた這いずり回ってやるしかないってことよ」

「言い方がよくない」


 ヴァルは一人で、俺とノアで分かれることになった。おそらくガーネットは一人でもなんとかなるだろう。


「それじゃあ私は外周を――」


 そこまで言いかけたヴァルが青ざめた顔で俺に抱きついてきた。次の瞬間、銀色の光がヴァルを貫いた。どこかで見たことがある光景だった。

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