初めての弟子
「病のせいで、けっこうな数の男性が亡くなったり働けなくなったりして、上層部の貴族があまり資格のない者に入れ替わったせいもあるけど・・・・・・・・」
シュネルさんのため息は重い。
えぇ? それにしたって、精霊に関心無さ過ぎない?
こんなに可愛い、素敵な存在なのに・・・・・・・・あ、見えるのは魔眼の持ち主だけか。
「権力の大規模な入れ替わりか、確かに王子は王の才能はあるんだな。シュネルに関すること以外は、それらの混乱を納めたのだろう?」
「僕の、と言うか、僕の家に関すること以外だね。僕が精霊の守護を受けたからか、彼女、いや彼? のおかげか、周りもかなり精霊の守護を得てね、病の被害をほとんど受けなかったんだ。だからよけいに、目を付けられて、精霊をよこせとか言い出すバカも出だすしで、もう国には居られないなって」
「う、わぁ」
ロダン様の屋敷のことを連想した。シュネルさんの周りの人たちも、本当に良い人たちだったのだろう。反面王子は、好きな人もその家も庇わないで、追い詰めて、すごく勝手な人だなと腹立たしくなる。
「指名手配がかかっているかもって、それでか」
アージット様も重いため息をついた。前王としてシュネルさんの故郷のことを、他人事と軽く聞くことはできなかったらしい。
「弟や、友人達の援助を受けて、逃げ出したのが数年前。旅に出て冒険者として活動しながら針子の職を探したけど、まぁ、ドレス系女性の服は頼まないよね」
そうなってから、僕は針仕事の中でもドレスを作るのが好きなのだと気づいたんだ。と、シュネルさんは遠い目をしたまま呟いた。
「針子の師匠から、この国の加護縫いのヌィール家のことは聞いたことがあったから、もし当主が師の言っていたまともな方だったら、そこに雇われればドレス製作にも関われるかなって」
「あれの兄の方か? それを知っていると言うことは、シュネルの師匠はこの国出身か」
「それでこの国まで来たんですね~、そしたらヌィール家はまともじゃない方の弟が継承していて、でもいちおう腕前を確かめようとしたら、あんな底辺も底辺だったと」
「今は師匠の双子の姉を探していた。師は子供に恵まれなかった親戚の行商人の家に養女として迎え入れられて、あの国で夫と出会って嫁入りしたらしい。姉の針子のセンスは自分より上だったと言っていたしね。でも幼かった師は姉の名は覚えていても元家の名は忘れていて手詰まりだったんだ」
「そこにユイが・・・ユイの縫った服を着た俺が現れ、呪いなりかけの祝福物やら迷宮武器の職種改造やらの道を示されれば、弟子入りを希望するのは当然か」
なるほど。私は頷いてシュネルさんの手をとった。
うん。シュネルさんも、私のようにアージット様やアムナート様の庇護下に入るといい。
恩なら売れるしね!
「弟子入り、うけます。かわりに、私達に、力、かしてほしい!」
「詳しい説明は俺からしよう」




