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針子の乙女  作者: ゼロキ
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しばしの別行動

お昼、ストールさんと、ここまで馬車を操っていた男性が帰ってきた。

 私とミマチさんで、出迎えた。

 てっきり、留守番は私たちだけかと思っていたら、台所に獣人の男性も留守番してた。彼が料理人だったので、お昼を待っていたのだ。

 一階はリビングと、奥に台所がある。

 一階といっても、玄関から少し階段があって高い位置に一階は存在している。台所から入れる食糧庫があって、冷蔵庫っぽい部屋もあった。

 上がってきた二人は私を見て、ほっとしたみたいだった。いつものことながら、ストールさんは鎧なのに分かりやすい。

 「ただいま戻りました」

 「ユイ様、おはようございます。体調はどうですか?」

 ストールさんは私の目の前に片膝をつくと、手をとって顔を覗き込んだ。

 「大丈夫」

 「・・・・・・・・っ、ユイ様、ここに着いたばかりですが、私とセンリだけ王宮へ向かうことになります」

 「いや、ストール様、俺も御者として行きますからね」

 「ゴゴールさん、問題は女性メンバーが減るということなのですっ! ミマチの暴走を押さえるメンバーがっ!」

 ストールさんは私の両手を祈るように、額へとかかげた。

 「なるべくエンデリア様の側にいて下さいね」

 「いやいや、ストールちゃん、私護衛メイドだからねっ」

 「すぐ、行くの?」

 「はい。実はここにつく途中に、小さな山があったのを覚えてますか? もう少しすると、あそこはものすごい豪雪地帯となるのです」

 ミマチさんがストールさんの言葉に、しみじみと頷いて口を開いた。

 「小さい山だから、油断して、意外と死亡率高い山なんだよねぇ」

 「雪が降る前に通らないと危険なんです」

 御者のゴゴールさんが苦笑して、料理人さんから籠を受け取った。お弁当のようだ。

 「あぁ、ユイ様。ちゃんと自己紹介する前にすいません。俺はゴゴールです。一応、ここで皆さんの足を勤めることになります。とはいえ、ゲートが開通すれば俺は必要なくなるかもしれませんが」

 「彼はただの御者ではなく、豪雪地帯を少量の荷物でなら、行き来可能な能力を持っているのです。本来は手袋の配達を勤めるはずでした」

 なるほど? え? 徒歩で?

 「人を連れて馬車でとなると、ゴゴールでも難しいので」

 「ちなみに、手袋はロダン様が仲介して王様へ届けられる予定でしたが、王宮へ人を連れて行くには、ストール様くらいの等級と信頼性がないと難しいのです」

 「祖父母がアレでしたが、私どもは平民ゆえ」

 そう言いながら、センリさんが荷物を抱えて二階から降りてきた。軽々と。どうやら怪力は使いたい時には使えるみたいだ。

 「お待たせしました、これがゴゴール殿の鞄で、こちらがストール様の鞄ですな?」

 「はい。まだちゃんと荷解きしてなかったのですが、かえって助かりましたね」

 「それでは、ユイ様しばしお側を離れますが、なるべく早く戻ります。アージット様によろしくお伝え下さい」

 そうして3人と半精霊のカイリさんは慌ただしく、着いたばかりのココから旅立ったのだった。

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