精霊王
センリさんが扱えてなかった力と、神様がすくい上げた水で混ぜ合わせて誕生したのが、彼だった。
見目麗しい男性体で、ほとんど裸。
しかも実体があって、見えるさわれる状態。
「センリさんの、護衛代わり?」
私の言葉に半精霊さんは、ニコッと笑って肯定した。
「ユイ様、彼に服を」
「ん、と、無理だと、思う」
「ですねぇ」
ミマチさんが頷いた。
「ユイ様の加護縫い品は、モロ影響受けそうな種族ですしね」
「私、警戒対象」
自分を指差して、首を傾けてみたら、テーブルがゴンッと鳴った。センリさんが額を打ち付けたのだ。
「おぉ、テーブルが壊れない」
ミマチさんはパチパチと拍手をした。
当たり前のはずなのに、センリさんが対象だと確かに「壊れない」と感動してしまう。私もミマチさんに釣られて拍手をしてから、人の気配が少ないリビングに辺りを見回した。
「アージット様達は?」
「迷宮の方ですね、知り合いの風精霊つきの冒険者と会いに。ストールちゃんは馬車の手配に」
「馬車?」
ミマチさんは私が寝落ちしてしまってからのことを、教えてくれた。
「ユイ様が眠ってしまってから、少しして、拘束は解放されました。ガイドという存在がどう判断したのかは、私達には解らなかったのですが一応ユイ様に問題なさそうでしたので、お部屋で寝かせました。水系統の精霊の守護が無い者でも、水中で息が出来る丸薬を用意したところで、センリちゃんが帰還」
センリさんは顔をテーブルに伏せたまま、ゆらりと片手を力無く上げた。
「詳しくは、神々との制約で言えないのですが、祖父母に会ってきましたぞ。」
「祖父母」
「えっと、ユイ様は気付いたようですが、自分の祖父母が神々と縁強くそのせいでゲートの使用権があったのですな。神々が連絡をとって下さり、祖父母と話したのですが・・・・・・・・冷静沈着さや、力をちゃんと扱えていない叱責を受けましたな」
あぁ、うん。センリさん頭に血がのぼってたものね。
「ユイ様は、ほぼ戦闘スキルや人を害する能力が無いことがガイド殿から神々に報告され、しかし闇の精霊王の守護を得ていることから、彼・・・・・・・・カイリを付けられることに」
んん?
あ、この半精霊さん名前あるのか・・・・・・・・カイリ、海里? センリさんもしかして千里かな?
『り』はいっぱい当てはまりそうな漢字があるから、特定は出来ないな・・・・・・・・とか。
そんなことも、現実逃避気味に浮かんだけど・・・・・・・・
精霊王?
「せ、精霊王?」
思わず両手で、『彼』を、肩付近からすくってかかげてしまった。
その行動に闇精霊さんはのってくれて・・・・・・・・私の手の上で、闇精霊さんはえっへんと胸をはった。可愛いけど、私以外には見えないかと思ったら、カイリさん? が、「フフフ」と笑った。
「うわっ、声!? え、声出るんですな!?」
「そ、そっちも驚きだけど、え? ユイ様の闇精霊様って、精霊王?」
いや、全然見かけない男性体だし、王子様みたいな格好だなぁとか。
魔力あげてお願いしなくても物理的な影響力があるから、特別な精霊さんかなぁ? とか思っていたけれど・・・・・・・・あれ?
「? 神々が、新しく、つくった、って、ことは、水の精霊王、元々、いなかった?」
「あ、違いますぞ、カイリは、海の精霊王ですな」
「え? 海の精霊なんて聞いたことないんだけど・・・・・・・・」
「元々いなかったのは、海の精霊の方ですな」
「まって、精霊の種類が増えたなんて、なんでこの瞬間まで報告しないの!?」
バシバシとミマチさんがテーブルを叩いた。
そうされて、やっとセンリさんは顔を上げた。
「神々との制約ですな。ユイ様に得ている力を教えて、対抗できる力が私にもあることを教えるという制約で、」
センリさんは何かを言おうとして、不自然にきゅっと口を閉じた。
「あ~、つまり、ユイ様の意識のない所ではとか、他にも私がいるから話せないこととかあるんですね?」
「・・・・・・・・ですな」
「もしかして、センリさん、私と一緒にいられない、から、馬車?」
心臓が寂しさできゅうっと痛くなった。
思わずスカートを握りしめる。
「うぁ? ち、違いますぞ!? ゲートの件というか、王宮の方のゲートの復旧作業を頼まれましてな!」
「ゲート復旧?」




