半精霊
でもまぁ、お風呂入ってご飯食べ終われば、体力ない私はいつものお約束のように寝落ちしてしまいました。
起きたら可愛い部屋のベッドの上でした。
「おっはよーございまーすっ、ユイ様♪」
「・・・・・・・・おはよ、こざ、ます」
さっきまで居なかったはずのミマチさんが、ベッドの横に立った。
これ、ミマチさんと会ってから、毎回のことなので慣れた。
彼女の差し出した盥には、水が入っていて私は顔を洗った。
顔をタオルで優しく拭かれ、洗顔用具がささっとミマチさんの手から消えると、代わりに着替えを差し出された。
・・・・・・・・受け取ると同時に、ミマチさんの目元が闇に覆われてしまう。
毎回のことながら、いつの間にかミマチさんの肩には闇精霊の紫王子が背中を向けて座っていた。
お風呂の時みたいに、他にミマチさんを止める人がいれば出てこないのだけど。
「くぅ、鉄壁っ」
そういえば、私魔力あげてないのに、紫王子はちょこちょこ物理に干渉しているなと、今更ながら気づいた。加護縫いの糸切ったりね。
「そう、いえば、センリさん、は?」
「スッゴいことになってますね~」
「?」
気楽な声に、センリさんのひとまずの無事は感じられた。
「うわぁ」
センリさんは食堂のテーブルに突っ伏して、肩から頭にかけて異形の男性を乗せていた。
腰に布を巻いただけで、全体的に裸だ。
足には太股から蔦のようなものが絡まっていて、サンダルのようなものを履いている。
全体的に裸だが、全体的に青い。
キラキラと宝石のような鱗が、足から脇腹を覆っていて、ちょっとルゥルゥーゥさんの水中バージョンに似てた。
だが、ヒレのような耳の少し後ろから生えている角は、東洋の竜のようだ。
ふんわりと浮いている長い髪の先は・・・・・・・・空気に溶けている。
「・・・・・・・・精霊さん?」
なんとなく、紫王子に似ている気もする。
「半精霊だそうですな、私の扱えず無意識に封じていた力を取り出して、守護として付けられました。・・・・・・・・父が龍人族とかっ、家で一番気弱で内気な父がっ」
まだ先祖が巨人族の方が、納得できますぞと呻くセンリさんを、半精霊さんは楽しそうに覗き込む。
うん。実体がある。
空気の中で、泳いでいるかのようだ。
例えるなら、アリアさんの作り出した糸のようだ。
力の結晶が物質化。
「龍人族・・・・・・・・」
えっと、たしかもの凄くプライドが高くて、傲慢な種族で、強大な力を持った・・・・・・・・ほとんど他種族と交流したり交わったりしないために、更に元々出生率が低くて滅んだと言われているんだよね?
「うわぁ」
もう「うわぁ」としか、言葉が出ないや。
「まあ、祖父母が な、わけですからな、父に関しては・・・・・・・・色々折られたのですなとでも納得しておきます」
しぶしぶと呟き、両手で顔を覆う。
「それより問題なのは、彼が腰布しか装備してくれないことなのですぞ!」
センリさんにぴったりのしかかっている半精霊さんは、美形だった。
綺麗に腹筋は割れているし、ウエストから太股ラインが、男性体なのに凄く色っぽい。
「実体あるけど、自分の好みの物以外は受け付けないみたいですよね~」
ミマチさんが「女性だったら目の保養なのに」と、一瞬だけ荒んだ表情で舌打ちした。
そんな存在にぴっとり懐かれ、ほとんど離れてくれなくて、センリさんは疲れきっていた。
「ユイ様ぁ、一生の願いです! 彼に服を、作ってくだされぇ」




