神の座
どこか電子音的な声が頭の中に響いたと同時、頭の中で何かが、繋がった。
何?
眉間の奥がじんわりと熱く、痺れる。
嫌な感覚ではないが、不思議な感覚。
そんな私に気づかずにルゥルゥーゥが驚愕の声を上げた。
「神の座! 神話大陸の伝説の場所ではないですか!?」
そしてルゥルゥーゥは、地図に食いつくかのように身を乗り出した。
が、何かに阻まれてしまう。
「あら? 何か魔力の圧力が?」
「声、転移登録? するかって、聞こえ、た?」
「・・・・・・・・いえ、声が? ま、まって下さいな、ユイ様こちらに」
私は差し伸べられた手をとった。
水晶の台座から離れると、地図もプレートも消える。同時に頭の中で繋がっていた何かも切れた。
「ユイ様、迷宮内でゲートの存在は珍しくありません。迷宮内部を行き来するくらいなら」
「これと似てる?」
「全くの別物です。神の座に行ける時点で神の制作物・・・・・・・・」
ルゥルゥーゥの眼差しがちょっと虚ろになってしまう。
「ユイ様、登録はまって下さいね。たぶんユイ様しか利用出来ません。もし転移登録? で、神の座に行かれてしまうと、困ったことになるかもしれません」
「神話大陸? 伝説の場所だから?」
「神の座では、神が降臨するらしいのです。人や精霊は、神と会うだけで、パワーアップするらしいのです」
私は思わず肩の蜘蛛を見た。
精霊に似た形状となった、聖獣候補・・・・・・・・だ。
「影響、このこにも出る?」
「出るでしょうね、一気に聖獣化する可能性が高いです。」
あっぷなっ!
聖獣化したら、アリアさんは死ねると言っていたのだ。
アリアさんがどうなっちゃうか分からない!
「ユイ様、もう湯船から出ましょう。先に出てみて下さい。私はこの水晶がどうなるか確認してから出ます」
サバっと、音をたてて温泉から立ち上がった。
「けほっ」
苦しくはないけれども、湯船の外に苦しそうにお湯を吐き出してしまう。
「だ! 大丈夫ですか? ユイ様」
ストールさんが慌てて私の背を撫で抱き上げながら、困惑していた。
「ユイ様、水の精霊の加護があるのでは?」
「違っ、これ、くせ」
水中で、たっぷり飲んだり肺を満たしたお湯の感覚はない。水月精霊がどうにかしてくれているのだろう。水中から外に出ても、水分は空気のように無くなってしまう。
水から出る瞬間、苦しそうに吐き出す水分だけ口の中に残すのだ。
私自身、どうなっているのか分からない。
でもヌィール家では、苦しそうにして見せなければならなかった。だからいつも精霊さんが調整してくれていたのだ。
「ヌィール家、メイド、私をいじめ、る、楽しんでた」
バキッと音が響いた。センリさんの手の中で桶が砕けていた。
「・・・・・・・・失礼いたしましたな。つい、力加減を」
「えっと、それで苦しそうにする癖が?」
ストールさんの問いかけにうなずいた。
「それにあそこ、精霊傷つける存在、たぶんいると思って、た。精霊、の、守護が、知られる、ダメ」
「なるほど、さすがです」
とろけるような笑顔のメイド長、エンデリアさんに撫でられて、ちょっと照れた。
「ところで、ルゥルゥーゥは?」
「あ! 温泉、底、ゲート!」
振り返ると、ちょうど彼女が水中から立ち上がった所だった。




