温泉
鍾乳洞のような空間で、辺りは暖かな湯気に包まれていた。
蛍袋のような花が、壁? の至る所から生えていて、仄かに白く光って・・・・・・・・とても幻想的だった。
「温泉」
湯浴み着を着せられ、新居で早速案内されたのが、地下。
そこは、別世界だった。
「きれい」
地下、洞窟温泉!
「ユイ様、ここは迷宮の影響を受けた空間なんですよ」
「ストールさん!」
いつもはミマチさんを締め上げ拘束するため、一緒にはお風呂に入らない彼女の鎧じゃない姿に驚いた。
同じ湯浴み着を着ている。
久しぶりに見た中身!
やっぱりスタイルが、凄い。
湯浴み着は、濡れても肌に張り付かないし、さらりとしている不思議な布だ。
水の抵抗も受けないので、水着に最適かもしれない布だが、非常に薄い。濡れてなくても肌が透ける。
直接見なくてもサイズ判定出来るけど、実際見ると迫力だ。
あんなに大きいのに、鍛えているからか形の美しさも備えている。
私が指摘するまで、潰して押さえ込んでいたとは思えない。
ミマチさんは?と、尋ねる前に、哀れな声が響いた。
「ふぁぁああん、エンデリア様ぁ! 精霊さんに目隠しさせないで下さいよぉ! 何も! 見えない!」
振り返ると、頭に紫色の大きな猫を乗せたミマチさんがよろよろと、両手を振り回しながら歩いてきた。
エンデリアさんの守護精霊、高位の闇精霊さんだ。
姿形が女の子じゃなく、まんま本物の猫っぽい。
しかも大きい。
ミマチさんの頭の上で、カップリかじりついて、ダラーンとぶら下がっている。
その尻尾は、エンデリアさんの魔力と繋がっている。
一緒にお風呂、初めての方二人目である。あ、よく考えたらミマチさんもだ! よく乱入してこようとして、ストールさんに撃退されてたものね。
うわぁ、メイド長・・・・・・・・普段のメイド服でも色気が溢れているのに、湯浴み着という薄布一枚は暴力です!
なんでかな? ストールさんとほぼ同サイズの、胸部装甲が一回り大きく感じる。
私の冷静な部分は、ちゃんとサイズ判定出来ているはずなのに。
・・・・・・・・もちろん型くずれなどしていない。
メイド姉さん達が、何となく胸を押さえる。
うん。比べちゃいけないけど、比べちゃうよね?
あ、ミマチさんが斜め前に居るから、対比してたのかも。
メイド長のエンデリアさんは、普段は全く魔力を零さない人だった。
魔力を出せない人もいるけど、それとは違う。
多分、私の次に、魔力操作が上手い。
だって魔力が、精霊さんの尻尾と同化している。綿飴みたいに空気に溶けていない。
太さも、魔術師さん・・・・・・・・トルアミアさん? より、細い。
トルアミアさんは、男の大人の腕くらいの太さで、エンデリアさんは、女の子の子供の腕くらいの太さだ。
「見えなくとも、土精霊の助けで動きに問題はないでしょう」
ミマチさんは、体の表面にうっすら魔力がにじみ出ている。
戦いで柱を作ってたけど、あんなに沢山作り出せるほどの魔力は、体から出せないタイプのはずなのだ。
「助け?」
私の言葉少ない疑問に、ストールさんが答えてくれた。
「ミマチは種族特性で、素肌で土や岩を触れれば、わずかな魔力で土精霊の協力が得られるんですよ」
「種族、特性?」
「小人族は、土精霊との親愛が産まれつき高いんです」
ストールさんが私の手を取って、ミマチさんの進行方向から外れる。
「迷宮の壁や床に穴を開けるとかは出来ませんが、土柱を作り出したり、どこに誰が居るくらいは把握します」
ストールさんにリードされて、くるんくるんと踊るかのようにミマチさんの手から逃れる。
本当にミマチさんは目が見えなくとも、位置を把握しているんだなぁと感じながら・・・・・・・・私は上手いリードのおかげで、ほとんど疲れもなく逃れ続けた。
気が付いたら楽しくて笑ってた。
「凄い! わたし、踊って、る!」
「あ、ちょっと! ストールちゃんずるい!」
「お前はいい加減にしろ!」
ストールさんにリードされて、クルリと世界が回ったら、ドゴーンという重い音が響いた。
「あと、ミマチの種族は、やたらと頑丈で壁にめり込むくらいの攻撃を受けても、怪我一つしません」
「ミマチ、壁は直しておきなさいね」
「ストールちゃんもエンデリア様も酷い!」
あ、本当に平気そう。




