表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
針子の乙女  作者: ゼロキ
39/77

ボス戦

生首はアージットの名を呼びながら、髪の上を転がった。

髪はアージットを狙ってのた打つ。

氷の魔剣を振るい身を守るが、相性が悪い。

切れても伸び、凍っても凍った部分を振り回す。

「アージット様!」

首を追いかけていたストールの足が鈍る。

「気にするな!俺では不利だ、早く頭を仕留めてくれ!」

「はい!」

「ストールちゃん!危ないっ!」

ミマチがストールを拘束しようとした髪を切り払い、駆け抜けた。

髪に捕まらないように駆け抜けたミマチは、ズサーッと片手を地に付けて、ハッとし叫んだ。

「精霊の協力が得られる!」

そしてそのまま地面に魔力を叩きつけた。

「お願い!精霊ちゃん!」

部屋に何本もの丸太のような柱が立ち、足場を作る。

「ストールちゃん!」

「分かった!」

ストールは柱に飛び乗り、頭を追った。

しかしうねる髪の中転がる頭は時々隠れ、追いきれない。

「くっ、切れば増えるし・・・・どうすれば・・・・」

その時、部屋の片隅で、金色の炎が燃え上がった。

「アージット様!こちらへ!アレの狙いはアージット様です!」

「ウェルス、駄目だ!アムナートの安全が優先だ!」

「父上!誘い込まないと、こちらが不利です!」

ハーニァが地面に叩きつけた拳から、炎を燃え上がらせながら向かってくる髪を防ぐ。

髪は炎を恐れ、逃げ惑っているのが分かった。

ハーニァはそうやってスペースを空け、アムナートを老執事に任せ二人のいる場所から髪を遠ざけながら、髪に捕まってしまった騎士を救出に向かっていた。

「この場の決定打が、ハーニァ様とストール様だけなのが辛いですね・・・・」

老執事がアムナートの側に控えながら、呟く。

「・・・・いや、待て?」

守護精霊の姿を見て、アムナートは気付いた。


その胸に咲く、炎の花に


アムナートは自身のマントに指を這わせた。

そこに組み込まれたのは・・・・ハーニァの守護精霊と、自分の守護精霊の力で出来た花だ。

魔力を込める。

手には元の形態の花が戻っていた。

そしてそれは、炎の茨となる。

「あぁ・・・・すごい、炎が使える」

守護精霊の力を借りても、植物の成長を促すくらいしか出来無かったアムナートは、熱くない炎に感嘆の息をつく。

勿論、媒体が無ければ使えなかった力で

ユイの作った、守護精霊ニ体の力のこもった花だからこそ、これ以上ない媒体である。

アムナートの周囲に、炎の茨がしげりだす。

「あ」

え?まだ、何もしてない

と、なったアムナートに、老執事が苦笑する。

「アムナート様、王位の効果でございます」

「守護精霊の性質が国土豊穣に反映するという、国布の効果か!」

聞いてはいたが、初めて実感した・・・・とアムナートは呟く。

「アムナート!二重に生やせるか!?」

アージットの問いかけに、アムナートはハッとして

髪に捕まって首を締め上げられていた騎士を助け、引きずりながら戻ってくるハーニァに手を差し出した。

「ハーニァ、力を貸してくれ!」

老執事ウェルスが茨を飛び越え、ハーニァの代わりに騎士を担いだ。

「ハーニァ様、お早くアムナート様の元へ」

「ありがとう、頼む!」

炎の茨はハーニァを包み込むように、道をあけた。

アムナートの差し出した手を、ハーニァがとった瞬間

部屋中に炎の茨が生え

特にアージットの周囲を囲みだした。


[ア"ア"ぁ"ア"]


髪のうねりがいたる所でせき止められ、燃えだし

ストールは柱の上からアージットの元へ、急ぐ頭だったモノをやっと見つけた。

ソレは大きなサメのような牙を生やし、髪は昆虫の脚のように変化して、既に自立歩行をしていた。

大量のよだれを零しながら、迫り来るソレにアージットは勿論

誰もが、生理的嫌悪に襲われた。


「ストール、頼む!」

「お任せを!」


誘い込んだソレが、アージットの剣に切られはじかれた所へ、タイミング良くストールの槍形態となった炎が貫いた。




[イ"ァア"ァ"ァア!な"ン"・・で・・・・ェ"・・・・?・・・・]


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ