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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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ジェットさんという強者

 今回は、ジェットさん(もちろん仮名です)という人について語ります。この人は私の先輩にあたる人であり、「ヤバい」としか言い様のない人物でした。今はどうしているのか分かりませんが、出来ることなら私の人生に今後も関わって来ないことを祈ります。




 先ほど先輩と書きましたが、正確に言うとジェットさんは私の友人の先輩に当たる人でして、足立区梅島の出身です。この時点で、分かる人にはいろいろ分かることがあるでしょう。

 知り合った直後は、言葉の端々にヤンチャな感じはありましたが……それでも悪い人には思えませんでした。私のことも「赤井くん」と、くん付けで呼んでいましたし。何より、ヤンキーやチンピラに有りがちな嘘や武勇伝の類いを全く言わない人でした。

 そのため、私はジェットさんに好感を持っていたのです。


 ところが、このジェットさんは後に逮捕されました。罪名は傷害です。

 事件のあらましを説明しますと、ジェットさんは友人と二人で解体屋をやっていたのですが、社員に一人どうしようもない男がいました。遅刻は多く、仕事は手抜き。しかも、二日酔いで来ることもしばしばだったとか。ジェットさんはちょいちょい注意したのですが、聞く耳をもたなかったそうです。

 やがて、ジェットさんの堪忍袋の緒が切れました。

「ちょっと目をつぶれ」

 件の社員に、そう言って目をつぶらせた直後、ジェットさんは思いきり腹を殴りました。

 ジェットさんとしては「軽いヤキ入れ」のつもりだったのでしょう。しかし、社員は内臓の一部が破損し、ジェットさんは刑務所に行くこととなりました。




 約二年後、ジェットさんは無事に出所してきました。さっそく私は連絡を取り、ジェットさんと色んな話をしたのです。結果、刑務所の中の様々な話を聞くことが出来ました。

 しかし、この際に私はミスを犯していました。


 もともと私は、ジェットさんとはさして仲の良い方ではありません。ところが刑務所から出てきたのを機に、私はジェットさんと電話やメールのやり取りをするようになったのです。それも頻繁に……。

 その結果、私はようやく気づきました。ジェットさんは、普通ではなかったのです。

 まず、ジェットさんは覚醒剤をやっていました。この時点で、普通の人なら近づかないでしょう。

 しかも、ジェットさんはとんでもないことを言っていたのです。

「赤井くん、実はシャブをやるとね、体から電波が出るんだよ」

 えっ? と私は驚きました。この人は、いったい何を言っているのだろうか……。

 しかし、ジェットさんは言葉を続けます。

「いや、バカにするかもしれないけどね、シャブやると体から何かが出るんだよ。その電波みたいなのを警官は感知して、パトカーで探すんだよ。シャブやると、急にうちの周りにパトカーが増えるからさ」

 私は、ただただ呆然となっていました。そんな私に、ジェットさんはなおも続けます。

「これマジだよ。やってみたら分かるから」

 いや、やる気なんかないから……それ以前に、あんたの言っていること無茶苦茶だよ、と私は内心で呟いていました。


 その後、私はジェットさんのことを知人に詳しく聞いたのですか……まあ、ヤバい人でした。小学生のころからナイフを持ち歩き、付いたあだ名が「ナイフマン」だったそうです。

 さらに中学に入ると、他校の生徒に鎌を振り回して威嚇したり、敵対していた生徒の家に侵入し壁(室内の)に落書きしたりして「あいつはヤバい」と噂になっていたとか。

「いや、ジェットさんは悪い人じゃないから。むしろ性格だけ見れば、いい人なんだよ。でも、根本的なものの考え方がおかしいというか、頭のネジが何本か抜け落ちてるんだよな……」

 ジェットさんをよく知る私の知人は、そう言っておりました。

 その話を聞いてから、私はジェットさんとは距離を置くことにしたのです。




 その後しばらく経って、私はジェットさんと話をしたのですが……その時、またしても突拍子もないことを言われました。

「赤井くんさあ、この前、赤井くんに電話かけたら、警察署に繋がっちまったんだよ。どういうこと?」

 どういうこと? とは、こっちのセリフです。わけが分からないので、よくよく聞いてみると……。

 ジェットさんはある日、私の携帯電話に電話をかけました。ところが、どこかの警察署にかかってしまったらしいのです。ジェットさんは、警官にさんざん怒られたとか。

「ねえ、何で警察署にかかったの? ねえ?」

 なおも聞いてくるジェットさん。私は混乱しました。そんなことは、あるはずがないのです。

「いや、間違えて違う番号にかけてしまったんじゃないですか?」

 と私が返したら、

「いや、間違うはずないじゃん。俺は携帯の電話帳からかけたんだよ。絶対に間違えないよ。後で何度も確かめたけど、間違いなく赤井くんの番号だったよ」

 いや、そんなこと言われても……私はどうすればいいのか分からず、仕方ないので謝りました。

「は、はあ、何か迷惑かけたみたいですみません」

 とりあえず謝って、何とか機嫌を治してもらおう……私はそう思ったのです。しかし、これは完全に失敗でした。

「何で謝るの? 悪いことしてなきゃ謝る必要ないじゃん。ねえ赤井くん、何で謝るの?」

 こんなことを言いながら、ジェットさんは執拗に私を責めてきます。もう訳がわからなくなり「はあ」「そうですね」の二語だけで対応し会話を終わらせました。以来、この人とは関わっていません。


 悪い人ではないのですが、根本的な部分が狂っていたジェットさん……今、何をしているのか興味はありますが、会いたくはないですね。








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― 新着の感想 ―
[良い点] 壁(室内)が最高に怖いです、ジェットさん……(´;ω;`)。 [一言] どうして危ない人に縁がありがちなんですか(。>д<)。 赤井さん自身のコメントや作品からは常識の香りしかしないのに…
2023/03/25 02:51 退会済み
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