わるものフレンズ
今回は、知人が刑務所の中で聞いた話を語ります。ただ、これはフィクションである可能性が高いですね。細かい部分が、今一つはっきりしないんですよ。まあ、都市伝説のようなものだと思って読んでいただけると幸いです。
なお、ここから先はかなり不快な内容です。直接の描写はありませんが、集団によるレイプを扱っています。そうした話が苦手な人は、ここから先は読むのをやめてください。
これは、今から二十年近く前に起きた事件とのことです。
当時、数人の男たちが相次いで逮捕されました。その容疑は、都内もしくは近県にて(このあたりははっきりしません)起きた婦女暴行事件です。この男たちは、他にも複数の暴行事件に関わっている疑いがありました。
しかし、警察にとって思わぬ事態が起きます。逮捕された男たちは、全員が黙秘をしたそうなのです。しかも、みな悪さをしそうにないタイプで、指紋を調べても前科なし。彼らの動機や関係性が何なのか、逮捕された直後は全く分かりませんでした。
もっとも、刑事もプロです。じっくり時間をかけ一人ずつ飴と鞭を織り混ぜて取り調べていくうちに……少しずつ、彼らの身元が分かってきます。
やがて、耐性のない一人の男が事件について語り出すと……他の者も、ポツリポツリと話すようになりました。結果、芋づる式に全てが明らかになっていきます。
事件の全容は、恐ろしいといえば恐ろしい……しかし、愚かといえば愚かなものでした。
事の発端は、ネットでした。犯人グループの一員であるAには、奇妙な知り合いがいました。
「俺は裏の組織の大物で、手下も大勢いる。ケンカじゃ負け知らずで、素手で人を殺すことも出来る。またハッカーの子分もいるから、住所を調べるのもたやすい」
ショーゲン(仮名です)と名乗るこの男は、このようなアピールをしていたそうなのです。ネットでは有りがちな話でしょうが、恐ろしいことにAはその武勇伝を信じてしまったそうなのです。
ちなみにAは、真面目に働いている社会人だったとか。それまで、悪さはしたことが無かったそうです。
ショーゲンはネットを通じて、Aに様々な武勇伝を語ります。結果、彼らの関係に変化が生じていきました。Aは自分でも気づかぬうちに、ショーゲンの部下のような立場になっていたのです。
そんなある日、Aに指令が下りました。
「A県のB市に住む、Cという女を襲え。現場には他にも人間がいる。そいつらと協力して事を行え」
どういった話の流れでそうなったのか、私には分かりません。もしかすると、集団レイプが好きな連中が集うサイトで知り合ったのかもしれませんが……とにかく、Aはショーゲンの指示に従いました。何せ、相手は裏社会の大物です。下手に逆らえば、何をされるか分かりません。
しかも、それまでのやり取りで既に上下関係が出来上がっています。Aはさっそく、指示された場所に向かいました。
指示された場所には、ショーゲンの言った通り数人の協力者がいました。その男たちが何者かは、当然ながら知りません。しかし、中には裏の世界の人間もいるとAは聞いていました。
Aは彼らと協力し、ターゲットの女性の家に押し入り集団で暴行したのです。ちなみに、うち一人はその様を録画していたのです……後でわかった話ですが。
さらに、その後も同じような指示が降ります。Aはどこの誰とも知らない者たちと共に、女性宅に押し入り女性を暴行しました。
ここで話は、取り調べのシーンに戻ります。Aは逮捕され、警察に取り調べを受けました。
結果、Aや他の者たちの供述により……ショーゲンの存在が浮かび上がってきます。警察はショーゲンの住所を調べ、連続婦女暴行事件の主犯として逮捕しました。
このショーゲンという男ですが、正体は車椅子の男でした。裏社会とは何の繋がりもなく、生活保護をもらって暮らしていたそうです。
正直、最初から最後まで意味不明の事件です。ショーゲンは何がしたかったのか、はっきりした動機は語らなかったとか。一応、集団レイプの動画は録っていたようですが、それだけが目的とは考えづらい気がします。
なので、これは私の推理ですが……ショーゲンは恐らく、Aたちが自分の命令通りに動いていることで歪んだ欲望を満たしていたのではないでしょうか。
ショーゲンは初めのうち、自身の嘘に対し様々なリアクションが来ることで悦に入っていました。しかし、それだけでは満足できなくなっていったのでしょう。モニターの向こうにいる者たちが、自分の指示で動く様が見たくなったのかもしれません。
その後に起きてしまった集団暴行事件、それは最低の行為です。しかし、ショーゲンは万能感に浸っていたのでしょう。自分は何人もの人間を操り、犯罪をさせた……その事実から、何らかの快感を得ていたのかもしれません。被害者が受けたであろう恐怖や苦痛、そして屈辱などは考えもせずに。
このショーゲン、以前に登場した与太郎と似たタイプです。どちらも、息を吐くように嘘が飛び出してきます。
しかし、両者には根本的な違いがあります。与太郎は金という明確な目的がありますが、ショーゲンの目的は相手を操ることです。ある意味、ショーゲンの方が厄介かもしれません。
まあ、はっきり言うと……この手の人間は、とにかく武勇伝が多いです。それも「俺はケンカ強くて裏社会にも顔が利くぜ」というタイプの嘘が多いですね。リアルだろうとネットだろうと、そういう人間にはなるべく近づかない方がいいでしょう。
最後に、なろうユーザーの中にも、そんな者が紛れ込んでいるかもしれません。自分の歪んだ欲望あるいは承認欲求を満たすために、他人を利用しようとする者が……くれぐれも気をつけて下さい。
もう一つ付け加えますが、強姦は重い罪です。起訴されれば、ほぼ間違いなく実刑が下ります。ケースにもよりますが、恐らく四年以上の懲役になるでしょう。それだけは忘れないでください。




