昭和生まれ氷河期世代の地域ガチャ
今回は、地域ガチャについて語ります。これ、特に昭和生まれにとって天と地ほどの差があったのですよね。たぶん、今の若い人には想像もつかない部分があると思います。
まず、私の生まれた地域では、小学校一年生の時点で、信号無視ができないと遊びに加えてもらえませんでした。
どういうことかと言いますと、みんなで自転車に乗り遊びに行く……途中、信号がありますよね。この時、他の少年たちはバンバン信号を無視して進んで行くんですよ。
ここで、信号を守る子は置いていかれるわけです。「マジかよ。しゃあねえから待っててやるか」なんてパターンは稀だったんですよ。「あいつ置いてこうぜ」となり、気がつくとみんなが先に行っているわけです。
そんなことが続くと「あいつ入れるのやめようぜ」となります。そう、信号を守る子は友だちがいなくなってしまうのですよ。
この信号無視、小さな問題と思われるでしょうが……幼い年齢で信号無視を当たり前にできてしまえるという事実は、人格形成にそこそこの影響を与える気がするのですよね。
信号を無視する、つまりは法を破っているわけですよ。幼い頃の些細な違法行為は、人格の土台造りにおいて影響はあると思います。割れ窓理論にも通じる部分があるのではないでしょうか。
ただ、私の地元はこれでは終わりません。次は「万引き」というものが出てくるのです。
確か小学校三年生か四年生の頃でしたか……友だちが、コンビニで菓子を万引きしていたのですよ。初めて見た時は「何をやってんだよお前!」と思いましたね。
さらに、その友だちは私にも万引きをしろと勧めてくるのです。私は、嫌だと拒絶したのですが……そうなると「万引きもできねえのか。赤井ダセーな」という評価を受けることとなります。
当時、私のいたクラスの男子は、半分以上が万引き経験者だったと思います。そうなると必然的に、万引きのできない私は「ダセー奴グループ」に入れられてしまったのですよ。
そして中学一年になり、私はいじめられるようになります。このいじめの直接の原因は、私が担任教師に向かい「AくんたちがBくんをいじめています」と言ったことでした。すると担任教師は、Bらに「赤井から聞いたけど、君らはAくんをいじめてるの?」と聞いたのです。そこから「赤井てめえチクったな」となり、いじめられるようになったのですが……その背景には、私が「ダセー奴グループ」に入れられていたことも関係あるように思いますね。
その後、私はいじめていた少年に「無言でつかみかかりヘッドバットを顔面に入れる」という荒技で、どうにかいじめから逃れることができました。タバコを吸い始めたのも、その時期からです。万引きができないなら、もっと上の悪さをするしかない。でないと、またいじめられる……という思いでしたね。
ここまで読んでいただいて、少しはわかっていただけたと思いますが……私の生まれ育った地域は、違法行為をしないと「ダセー奴」と思われてしまうのですよ。
そう思われているだけでも、結構つらい学校生活が待っていますが……何かの拍子に、いじめのターゲットにされてしまうこともあるのですよ。こうなると、ある意味では「身を守るために」違法行為をしなければなりません。でないと、周りからナメられるからです。
そんな地域で育つ少年がどうなるか……まあ、大半は高校を出たあたりで、悪さから卒業していきます。
しかし、悪さを通じて様々な人間関係ができ、しがらみから犯罪に手を染めてしまうこともあります。こうなると、自己責任論では片付かないのですよ。
ですから……犯罪とは無縁で成長していけた人たちは、己の幸運に感謝してください。あなた方は、間違いなく地域ガチャで当たりを引いています。
余談ですが、私のいた地域よりもひどい場所は、日本にいくらでもあります。「先輩の命令で、空き巣をさせられていた小学生」「ヤクザの事務所当番を手伝わされていた中学生」のような例は、いくらでもありますので。




