前回の補足
前回に書いた『「アルジャーノンに花束を」のパン屋にいた面々とヤンキーの共通点』に、気になる感想がきました。要約すると次の通りです。
「意図はどうあれ、いじめられている状況から助けてくれたのなら、当人にしてみればありがたい話なのではないか?」
念の為に書きますが、この意見は間違っていません。はっきり言うなら、その通りです。口だけで何もしないよりは、いじめを目撃し「やめろ」と言う……その意図はどうあれ、結果としてみればこれは正しいです。
やらない善より、やる偽善……これは、いつの世にも通じる言葉であると思います。
ただ、同時にひとつの問題もはらんでいます。
まず……基本的に、助けてくれたヤンキーがそのままいじめられっ子を放っておいてくれるとは限らないのです。
ヤンキーは、いじめられている子を「俺が守ってやるから」などと言い出し、自分たちの仲間に引き込みます。そして、今度はいじめられていた子が、ヤンキーたちの使いパシリにさせられてしまう……こういうケース、意外と多いのですよ。
しかも、使いパシリならまだマシな方です。中には、タバコを吸わされたり万引きのようなことまでやらされることもあります。事実、私の中学校にもそういうグループがいました。
結局のところ、いじめっ子がヤンキーに変わるだけ……ということは珍しくありません。
ちなみに……『女子高生コンクリート殺人事件』の犯人たちは、被害者の女子高生に仲間が因縁をつけ、そこを助ける……という手口で、彼女を自宅に連れ込んだそうです。
まあ、この場合は全てが計画にのっとったものですが「助けられたため断わりづらい状況に追い込む」という部分は、共通していますね。
これがヤクザになると、さらに話が面倒になります。
かつて、地震の被災地の方々がSNSで「ヤクザが炊き出しをしてくれた」「被災した時、ヤクザが食べ物などを持ってきてくれた」とコメントしていたのを見たことがあります。
確かに、一部の被災地の方々にとってヤクザは恩人なのでしょう。命を助けられたのは事実なのでしょうし、そのことについて文句を言う気はありません。まさに「やらない善より、やる偽善」ですね。
しかし、ここでよく考えていただきたいのです。その炊き出しや食料品などの費用は、どこから出ているのでしょうか?
言うまでもなく、ヤクザの収入源は違法行為です。彼らは反社会的勢力であり、その活動もまた反社会的なものですよね。
被災地の方々が、ヤクザに助けられたのは紛れもない事実でしょう。だからといって、反社会的勢力を支持していいのでしょうか。いざとなれば、ヤクザを守り国家権力と戦う覚悟があるのでしょうか。
私には、そうした覚悟があるとは思えません。
ついでに書いておきますと……とある便利屋は、ヤクザの飲み会などにたびたび呼ばれ、キャバクラなどでただ酒を飲んでいました。
ところが、ある日ヤクザに呼び出された時は、目の前に死体が転がっていたそうです。
そして、ヤクザは言いました。
「悪いんだけどよ、これユンボで埋めといてくれや」
便利屋は、言われた通り死体をユンボで埋めて三十万もらいました。が、後に強盗殺人事件に関わった罪で逮捕されます。結果、懲役八年の刑に服することとなりました。
そんなわけで、今回私の言いたいことはひとつです。ヤンキーだのヤクザだのに助けられたら、後々面倒なことになる可能性が非常に高いです。
もっとも、そのことを知った上で「ヤクザは恩人だ! 俺は法を破ってでもヤクザを助ける!」と言うのでしたら、私は止めません。




