裏社会との繋がり、欲しいですか?
かつてXにて「撮り鉄はヤクザの友人が多い。裏社会との繋がりもあるから、下手に煽ったらどうなっても知らないよ。ちなみに俺の撮り鉄仲間は元ヤクザだ」などというポストが投稿されたことがありました。
昔から、こうした「俺、ヤクザの友だちいるから」という若者は少なからず存在していましたね。
フィクションの世界でも、ヤクザには一定の需要がありますよね。大ヒットしたドラマで、ヤクザの娘の教師なんてのがいました。また、元暴走族総長で後輩にヤクザがいるサラリーマンが主人公の漫画もあります。ラノベでも、冴えない主人公がヤクザもしくは裏社会の大物と知り合い友人となり、皆から恐れられてしまう……みたいな話も幾つかあったような気がします。裏社会の住人の活躍を描いたゲームなんかも、シリーズ化するほどの人気ですね。
そして……ネットを見ると必ず「本物のヤクザは、カタギには手を出さない」「ヤクザは、付き合ってみるといい人が多い」というヤクザ信者みたいな方々の意見を目にします。こういう人たちには、私みたいな者が何を言っても無駄なのでしょう。
この人たちは、永遠にヤクザに憧れて生きていくのでしょうね。自分がひどい目に遭わない限り、わからないのだと思います。
ひとつ言えることは、ヤクザの友だちが欲しいと思っている人は、少なからず存在しているということです。
さて、最近は闇バイトの強盗による被害報道が増えてきました。
逮捕される若者の中には、犯罪とは縁のなさそうな風貌の人もいました。どうやら、闇バイトは想像以上に深く浸透していっているようですね。
このエッセイを書き始めたのはニ〇一六年ですが、私は連載開始直後から「強盗は割に合わない。特に強盗で人が死んだら死刑か無期だ」と言い続けてきました。
今になって、同じセリフをワイドショーにて「識者」と称するコメンテーターから聞くことになるとは思わなかったですね。いかに、このエッセイに影響力がないかがわかります。もはや、苦笑するしかないですね。
個人的には悲しいですが、それはひとまず置きましょう。今回、私の言いたいことは……闇バイトの若者の中には、金銭目当てでない者もいるのではないかということです。
突然ですが、ここにひとりの少年がいたとしましょう。真面目で暗く陰気なキャラ……いわゆる陰キャと呼ばれるタイプの彼ノリタくんが、ヤクザないし裏社会の人間と仲良くなるためには、どうすればいいと思いますか?
私が少年だった頃は、ヤクザと仲良くなれるルートは限られていました。一番手っ取り早いのは、人からの紹介ですね。ヤンキーの先輩を介し、ヤクザと知り合う。それから、徐々に距離を詰めていく……と、こんな感じでしたかね。
したがって、最初のハードルはヤンキーの先輩なんですよ。そんな先輩と知り合うためには、まず自分が同学年ヤンキーの仲間にならねばなりません。ところが、ノリタくんが仲間になろうとしても、ちょっと難しいでしょうね。
仮に上手くヤンキーのグループに入れたとしても、使い走り程度で終わりでしょう。ここから、ヤクザと連絡の取れる先輩と知り合うのは……無理ではないかと思います。
このように、一般人がヤクザと知り合うのは……難しい部分があったのですよ。しかし、これはあくまで昔の話です。
今は、闇バイトに応募すれば……簡単に裏社会の人間とコンタクトが取れます。ひいては、ヤクザとの接触が可能となるのですよ。
もちろん、SNSにもヤクザらしき者はいます。しかし、彼らが本物だという保証はないですからね。自称ヤクザの可能性もあります。
しかし、闇バイトに応募すれば、そこにいるのは、本物の裏社会の人間です。闇バイトに応募することにより、裏社会の人間と繋がりが出来るわけですね。
闇バイトに応募し、強盗などの危険な仕事は避けて楽な仕事のみをこなしていき、ヤクザや半グレとのコネを作る。そんなことを目論む若者が、数%とはいえ存在するのではないか……というようなことを考えてしまったわけなのです。
などと書いてきましたが、これらは全て私の思いつきによるものです。実際に、こんなバカがいるかどうかは不明です。
ただ、以前に便利屋を手伝っていた時……客からの依頼でヤクザのふりをしたことがあります。とは言っても、犯罪がらみではありません。客が女の子と歩いている時、私と高そうなスーツを着た便利屋が通りかかります。
便利屋は偶然を装い「よう○○さん、こないだはウチの組のモンが世話になったな」などと声をかけ、客は「いやいや、あんなの大したことないから」などと親しげに言葉を交わして去っていく……というだけのものです。
その客は日頃から、女の子に「俺は、ヤクザの知り合いが多いから」などと吹聴していたらしいのですよね。で、女の子の前でイイ格好(?)するために、わざわざ便利屋を雇ったのですよ。ここまでして「俺はヤクザと友だち」アピールする人が実際にいる、ということは覚えておいてください。
ちなみに、この時私は横にいただけでした。セリフもなく、ただかしこまった態度で控えていただけです。スーツも着ておらず、Tシャツ姿でした。さしづめ「使いパシリA」といった役名でしょうか。
客の方は四十すぎたオッサンで、そっち関係とはかかわったことのなさそうな真面目そうな人でした。
女の子の方は二十代の前半でしょうか。ひょっとしたら十代だったのかも知れません。化粧の濃さが印象に残るタイプです。
こういう人たちには、何を言っても無駄でしょうが……一応は書いておきます。ヤクザと友だちになっても、いいことなど何もありません。下手すれば、利用され犯罪の片棒を担がされます。
私の聞いた中で一番ひどいケースが、ヤクザに頼まれユンボで死体を埋め三十万もらったが、後に逮捕され懲役八年……というものです。そこまでいかなくても、ことあるごとにしょうもない雑用をただでやらされたりするのがオチです。
何度も書いていますが、ヤクザとはかかわらないでください。
ついでに書きますが……SNSなどで「ヤクザに、組に入らないかとスカウトされた」という体験談を語る人がいます。
かつて、なろうにいた何ちゃらの伝道師さんという方(退会されてます)は「俺はヤクザの組長に、幹部にしてやると言ってスカウトされたことがある」と活動報告に書いておりました。
はっきりいいますと、ヤクザの業界は常に人手不足です。なので、知的障害者だろうと、境界知能の若者だろうとスカウトします。
結果、どうなるかといいますと……ほとんどの者が、準構成員のような立場のまま雑用をさせられるだけです。
仕事中に逮捕されたとしても、一顧だにしません。平気で切り捨てます。闇バイトの例を見ればおわかりですね。
このエッセイの百三十七話『おっさんヤクザの末路』に出てきたカンさんは四十過ぎており、最終学歴は中卒で頭のキレるタイプではありませんし、有能な人間でもありません。役に立つ資格を持っていたわけでもありません。
にもかかわらず、日本でも有名な広域指定暴力団に所属する人間にスカウトされ、堅気の仕事を辞めて組員になりました。が、すぐに組から逃げ出しました。相当にキツかったようです。
もうひとつ、ヤクザという組織は非常に微妙かつ複雑な人間関係で成り立っています。組長ひとりの一存で、外部からスカウトした人間を勝手に幹部にしたとしましょう。そんなことをすればどうなるか、私がいちいち説明せずともわかりますよね。なろう作品の王様でもあるまいし、そんなことをする組長はいません。
ヤクザになるかどうかは個人の自由ですが、やめておいた方が無難なのは間違いないでしょう。




