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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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再度、護身について考えたこと

 以前、私宛てにこのようなメッセージが来ました。要約すると次の通りです。


「あなたは喧嘩で逮捕されることを恐れているようだが、死んだり障害を負うくらいなら刑務所に入った方がマシだ。普通の人には、暴漢に襲われたら手加減して押さえ込むような力はないから後のことなど気にせず反撃し倒すしかない。その後は、司法書士に頼んでいい弁護士を紹介してもらうのが現実的な対処法」


 正直、呆れてしまいました。この方は「普通の人」が、暴漢に襲われたら倒せると思っているようです。この方の言う普通の人とは、なろう主の「父親に古武術を仕込まれた普通の高校生」なんでしょうか。そもそも、襲われたら逃げるという選択肢がないようです。あと、司法書士が扱うのは基本的に民事事件であり、刑事事件では出番がないのですが……そもそも、いい弁護士を雇うには金がかかります。普通の人では無理ですね。

 それ以前に、重大な問題がひとつあります。この方は、「暴漢に襲われたら、戦って倒す。負けたら、死ぬか障害を負わされるから相手を殺しても構わない」と思っているようです。零か百か、白か黒か、殺すか殺されるか……こういう二元論的な考え方の人が、ネットには一定数いるように思われます。




 確か数年前だったと思いますが、とあるテレビ番組にて、女性コメンテーターがこのようなことを言っていました。


「子供を連れて歩いていたら、後ろから自転車のベルを鳴らされた。私が歩いていたのは歩行者専用道路で、本来なら自転車は入ってはいけないのに、どけよと言わんばかりにベルを何度も鳴らしてきた。だから、私はどかなかった」


 皆さんは、この行動をどう思われるでしょうか。

 個人的には、非常に愚かだと思います。まず、歩行者専用道路で自転車のベルをけたたましく鳴らしてくる……この時点で、相手が普通ではないことに誰もが気づくでしょう。その普通ではない人間を相手に自分の正義を貫くことに、何の意味があるのでしょう。それも、たかが道を譲る譲らないという些細なことです。その上、子供を連れているのですよ。子供に万一のことが起きたら、どうするのでしょう。

 はっきり言って、歩行者専用道路でチリンチリン鳴らして自転車で突進してくる時点で、私は相手をまともな人間だとは思いません。野良犬が吠えながら道を走っているものと思うことにしています。野良犬には、正義がどちらにあるかなど関係ありません。ただ、己の欲求の赴くまま道を進んで行きます。邪魔をすれば、噛みつかれるわけですね。そんなものを発見したら、相手にせず遠ざかる……これは、当然のことですよね。ましてや、子供連れならなおさらです。


 身を(まも)る、という概念の基本は、この部分にあると思っております。危険人物がいるのを見かけたら、まずは出来るだけ遠ざかる。可能ならば、他の道を行く。これは当然ですよね。護身術というと、襲いかかってきた暴漢をボコる動画のようなものばかりが注目されていますが、実際には闘う前の段階が一番大事なんですよ。はっきり言うと、暴力という手段を用いて制圧している時点で、護身術としてはどうなのだろう、という気はします。

 冒頭にあげた人は、実際に闘うという部分しか見ていないのですよ。闘うという部分しか見ていないから、死ぬか障害を負うよりは刑務所に行くという選択を勝手に頭の中で想定してしまっているのですよ。さらに、脳内ではカッコよく撃退できると思っているのでしょう。


 ここで書くまでもないことなのですが、危険そうなものや人には近づかない。危険が迫って来たら避ける。こんなことは当たり前ですし、大半の人が実践していることでしょう。

 ところが、こういう人もいます。


「正義は自分にあるのだから、避ける必要などない」


 件の女性コメンテーターのような人ですね。このコメンテーターと冒頭の人物には、重なる部分があるのではないかと思いますね。自分は正義だから、トラブルに対し避ける必要はない。そこで相手が怒り向かってきたら、死んだり障害を負うのは嫌だし悪いのは向こうなので闘う。勝ったら、とりあえず司法書士(?)に電話する……護身という観点から見れば、最悪の選択ですね。

 実際に闘うという段階は、最後の手段なんですよ。その前に、幾つもの段階があるはずです。その幾つもの段階の中に、闘いを避けられる選択肢があったはずなんです。ところが、その幾つもの段階の中で、ことごとく間違えた選択肢を選んてしまった……だからこそ、闘う羽目に陥っているわけですよ。

 もっとも、これには運不運もあります。また、酒を飲んでいたり疲労していたり強いストレスを受けていたりという外的要因で判断力が鈍るケースもありますので、全てを自己責任というつもりはありません。ただ、殺るか殺られるかという状況に陥る前に、それを避けられる道はあるということを覚えておいてください。




 もうひとつ、知っていただきたいことがあります。

 死んだり障害を負うくらいなら、刑務所の方がマシ……それはそうでしょう。ただ、これはあくまで「マシ」というだけです。死ぬこと以外かすり傷、と言った方がいるそうですが、死ぬことに比べれば大半の事態はマシなものなんですよ。極論でしかありません。

 刑務所に行く、という事態を甘くみない方がいいですよ。刑務所に入れば、それまで培ってきたあなたの信用は全て崩れ去ります。まず、学校は退学になり、仕事はクビです。また、名前がネットに載る可能性あります。あなたの名前を検索すると、犯罪の記録が一緒に出てしまうのですよ。こんな奴を採用する企業など、よほどのブラック企業だけでしょうね。さらに、友だちも失います。

 ついでに言いますと、私の友人知人で刑務所に行った人間は、ことごとく連絡が取れなくなっております。中には真面目な人間もいましたが、刑務所にて悪い人間たちの中にいたせいで、すっかり染まってしまったのですよ。汚れた人間たちの中で生活していて、自分だけ汚れずにいる……これは、非常に難しいことです。

 とにかく、刑務所に行くということを甘く考えないでください。確実に、あなたの人生を一変させてしまうのですよ。「死んだり障害負うより刑務所の方がマシ」という以前に、そういう選択をせねばならない状況に陥らないようにすることが本当の護身でしょう。


 さらに付け加えますと、この「死んだり障害負うより刑務所に行く方がマシ」という意見ですが……他にも選択肢があるのに、ふたつの選択肢だけしか考慮しない状況を、詐欺師は好んで用いるそうです。

 たとえば「この物件を今買って大儲けする」か「この物件を今買わないで大損する」か、このような二択を迫り判断力を鈍らせる……そんな手口があるとか。言うまでもなく、その物件を買わなかったからと言って大損はしません。どれだけ値上がりしたとしても、その値上がりの分あなたの資産がマイナスになることはないですよね。

 まあ、詐欺師まではいかなくとも、こういう極端な二択を持ち出して説得もしくは論破しようとしてくる人は、信用しない方がいいかもしれません。




 最後に……これは蛇足かもしれませんが、護身というと催涙スプレーを連想する人もいるでしょう。確かに、催涙スプレーは護身具として有効かもしれません。

 ただし、催涙スプレーを所持すると軽犯罪法に触れます。まあ、初回は警察署にて説教の上で催涙スプレー没収……それで済むと思います。警察に記録は残りますが、そんなものはダメージにはなりません。

 これが二回目となると、そうはいきません。おそらくは、検事のところに行かされることでしょう。そして説教され不起訴になるでしょうね。もちろん、催涙スプレーは没収です。

 さらに三回目ともなると、累犯の扱いになる可能性が高いですね。累犯ともなると、刑も重くなります。この場合、起訴される可能性も高くなります。まあ執行猶予で済むでしょうが、前科は付きます。

 誤解されると困るので書きますが、私は何も催涙スプレーを持つなと言っているわけではありません。ただ、こうしたデメリットを負ってまで持つ必要があるのかな、とは思いますね。


 ところで、催涙スプレーで実際に暴漢を撃退した、もしくは催涙スプレーで危険から逃れられたという方がいらっしゃったら、是非とも教えていただきたいものですね。催涙スプレーというと、電車や建物の中などで揉め事になった人間が噴射し、回りの無関係な人たちが被害を被った、という話しか聞いたことがないもので……。

 

 

 


 

 

 

 



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 私の大人な部分は赤井さんの言い分に納得しているが、私の子供な部分は「日本人って本当に馬鹿」って呆れてますわ。 [一言] 私はもう10年以上、自転車に乗ってませんが、堂々と歩行者専用道路…
[一言] 君子危うきに近寄らず、コレが一番大事ですね。 正義やら倫理、道徳とか関係なく、トラブルになった時点で負けですから。
[一言] 投稿お疲れ様でございます キチ○イ相手の正当防衛 何故か去年辺りから阿呆な高校生が「俺達ならば捕まらない」と年寄りや観光客狙って強盗自決繰り返す事例が矢鱈と増えた此処沖縄じゃ他人事じゃ無い…
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