過去にあったこと
ここで、ひとつ告白することがあります。実は私、旧統一教会の運営するボランティア団体に所属していたことがあります。もっとも正式なメンバーではなく、暇な時に手伝っていた程度でした。
活動内容はというと、様々な理由で学校に行くことが出来なかった人たちに無料で勉強を教える塾のようなものです。高卒認定試験合格のための勉強が主でしたが、中には若い頃に中学にすら行けなかった高齢の人も通っておりました。ちなみに、ここを知ったのは友人の紹介です。当時、高卒の認定試験を受けるため、この塾に通い勉強していた友人がいました。その友人から話を聞いたのがきっかけです。
私のしていたことは、塾の掃除や備品の整理といった雑用です。まあ、当時は暇でした。なので、ちょいちょい顔を出していたのですよね。たまに、コーヒーブレイクと称した集まりもありました。生徒たちが、様々な問題について話し合う道徳の時間のようなものです。一応、名誉のために言っておきますが、塾内で旧統一教会の教義に関する話および生徒への勧誘は一切ありませんでした。これは間違いないです。
当時の私は、バックに旧統一教会がいることは知っておりました。また団体を運営している人間のほとんどが教会の信者でしたが、あらかじめ「僕はあなた方の塾としての活動に参加はしますが、宗教にかかわる気はありません」ということは言ってありました。さらに、当時の私は教団の内情などほとんど知らなかったのです。せいぜい「信者になると高い壷を買うらしい」「合同結婚式なるイベントがあり、桜田淳子が参加したらしい」ぐらいの知識しかありませんでした。
最初のうちは、何事もなかったのですが……時間が経つにつれ、団体の主催者から「教団の集まりに参加しませんか」と個人的な勧誘をされるようになりました。最初は適当に流していましたが、向こうはしつこく勧誘してきます。だんだん嫌になって、行かなくなりました。主催者は本当にいい人だったのですが、宗教を抜きにして普通に付き合えるだろうと思っていた私が甘かったですね。やはり、宗教にかかわる人と交流すると、いつかこういう日が来る……それは、覚悟しなければならないのかもしれません。
そして去年、旧統一教会がさんざん叩かれるのをテレビなどで観ていましたが、率直にいって複雑なものを感じておりました。ボランティア団体で共に過ごした人たちは、心優しい人間ばかりでした。信者たちと休憩中、メッコールを飲みながら他愛もない話をしたりしたことを思い出し、ちょっと悲しくなったりもしました。それまでチンピラやヤクザや薬物依存みたいな人種とばかり付き合っていたので、こうした人々との交流を新鮮に感じたのも事実です。
なので「あんまりイジメないでやってくれよ」という目で、旧統一教会に関する報道を観ておりました。
言うまでもないことですが、これは個人の感想としてはアリでしょう。が、一方で旧統一教会に家庭を目茶苦茶にされた人たちが私の感想を見れば「ふざけんな」と思うのは間違いありません。金銭的な被害もなく、表面的な付き合いしかしていない私が旧統一教会について語ったところで、何の説得力もないでしょう。実のところ、これは以前に書いた『ヤクザはいい人ですか?』の章とも重なる部分がありますね。
教団のごく表面的な姿しか見ていない私は、この問題について意見を言おうとは思いません。ただ、昔こんなことがあったなあ……と、過去にあったことを語るくらいしか出来ないですね。
今になって、ふと思うことがあります。当時、私が旧統一教会の集まりに参加していたら……今ごろどうなっていたのかな、と。
もしかしたら、雀の涙ほどの有り金を残らず献金させられていたのかもしれません。あるいは、信者を増やすためあちこちで勧誘していたのかもしれません。私は、実のところ洗脳されやすいタイプかもしれないので……。




