トトカルチョ
先日ツイッターにて、とある方の呟きを見ているうちに、かつてやっていたことを思い出しました。実にしょうもない話ですが、ちょっとした暇つぶしにでもなれば幸いです。
小学生の時、クラスにひとりは冬でも半そで半ズボンの子がいたりします、私のいたクラスでも、もうすぐ十二月だというのに半そで半ズボンの男の子がいました。それも三人です。
その三人のうちのひとりが私で、あとはイッチャンとセイゴという名でした。もちろん仮名です。
ある日、いつもツルんでいる友人のひとりが、こんなことを言って来たのです。
「赤井、勝負するか?」
「えっ? 勝負って何の?」
「もし今学期いっぱいまで半そで半ズボンで過ごしたら、ジュースおごってやる。その代わり、寒さに負けたらお前がジュースおごるんだよ。どうだ、やるか?」
「おう、やってやるよ」
というわけで、私は十二月に入っても半そで半ズボンで過ごしていましたが……それから一週間ほど経った日、風邪を引いてしまいました。親に叱られ、仕方なくジャンパーを着ることとなり、必然的に勝負には負けました。あと数日のところで、悔しかったですね。
しかし、残りのふたりはまだ半そで半ズボン姿です。そこで、我々は新しい勝負を思いつきました。
「あのさ、イッチャンとセイゴはまだ半そで半ズボンじゃん。あいつらが、二学期の終わりまであの格好で学校に来るかどうか、賭けないか?」
「おう、そりゃ面白そうだ。で、賞品は?」
「俺は金ないから、うまい棒一本でどう?」
「いいよ」
というわけで、我々は新たにひとり仲のよかった同級生を仲間に引き入れ、三つのパターンを作りました。イッチャンとセイゴがどちらも半そで半ズボンで完走するパターンと、イッチャンもしくはセイゴのどちらかが脱落するパターンです。我々三人は、じゃんけんでどのパターンに賭けるか決めました。ちなみに、両者が同時に脱落した場合は引き分けです。まず有り得ない話でしたが、ちゃんと取り決めていました。
今もはっきり覚えていますが、当時の我々は数日の間、くすくす笑いながらふたりの動向を見守っていました。
「イッチャン、風邪ひかねえかな」
「セイゴの奴、池に落としてやろうか」
「どっちも頑張れよ」
そういった三者三様の思惑の中、最終的に両方とも半そで半ズボンのまま二学期終了まで通学したのです。
それだけで終わらないのが、我々三バカトリオでした。以来、我々は様々なことで賭けるようになっていったのです。学年で行われる合唱コンクールでの優勝当て、遠足のバスで誰が吐くか、隣のクラスとのドッジボール、運動会の紅白どちらが勝つか、などといったものです。
我々は、何かイベントが決まると三人で集まり、どういったシステムで賭けるかを話し合っていたのです。これは、小学校を卒業するまで続きました。
話は変わりまして、刑務所の中では娯楽がありません。なので、自らの頭で娯楽を考え出さないといけないのです。そこで、小学生の時の我々と同じことをやっていたそうです。
特に、日曜の昼にNHKにて放送されている『のど自慢』は大半の刑務所で放送されているそうなのですが、受刑者たちは「何番が合格するか」という賭けかたをしているそうです。賞品は、夕食の一品や特食(祝祭日に特別に出されるお菓子)だとか。あるいは、単に負けた奴が罰ゲームをさせられるというパターンもあったそうです。ひょっとしたら受刑者たちは、今の日本で一番熱い目でのど自慢を観ている人たちなのかもしれないですね。
もうひとつ付け加えますと、刑務所では賭博行為は違反事由でして、刑務官にバレると懲罰だとか。そのため、バレないように気を遣ってやっていたそうです。
さらに付け加えますと、他の者から嫌われている受刑者がそうした賭博行為に参加したりすると、密告される可能性が高いそうです。なので、トトカルチョの胴元はそうした人物を入れないよう気を配る、という話も聞きました。




