覚醒剤に関してツイッターで流れたデマ
先日ツイッターにて、ある呟きを見ました。内容を要約すると「覚醒剤をやると汗腺ぶっ壊れて腐った粘土みたいな体臭になる」というものです。リツイートやいいねが万単位で付いており、いわゆる「バズる」という状態でした。
はっきり言うと、これはデマです。確かに、覚醒剤をやると体臭が匂うケースはありますが……汗腺が壊れて、常に腐った粘土のような体臭を放つ人間になるわけではありません。私は、知り合いに覚醒剤で逮捕された者が数人いました。しかし、そんな腐った粘土のような体臭を放つ人間はいなかったです。これは断言できます。
まず最初に言わねばならないことがあります。覚醒剤が効いている間は、確かに体から異様な匂いが出ることはあります。
ただし、それには理由があります。覚醒剤が効いている間は、風呂には入りません。歯も磨きません。さらに、食事も睡眠も取りません。ひたすら目の前の何かに没頭し続けます。知人は、覚醒剤の効いた状態で丸三日間ドラクエをやり徹けたそうです(水は飲んでいたらしいです)。もちろん、食べず眠らず風呂入らず歯も磨かず……の状態です。ついでに言うと、徹夜明けの人間というのは結構な体臭を放つのですよ。
しかも、覚醒剤は交換神経に作用し汗を大量にかきます。それに伴い、体の垢も大量に出ます。目ヤニ耳アカ鼻クソにフケといったものが大量に出ます。知人の長髪ポン中は、たった三日で髪がドレッドヘアのようになったと言っておりました、
体を動かさず風呂にも入らず歯も磨かず水分もとらず、おまけに徹夜明けの体で大量の汗と垢が出ているわけですよ。そりゃあもう、臭くないはずがありません。
ちなみに、この汗はそっちの界隈では「ネタ汗」などと呼ばれているそうです。このネタ汗、ヤバい毒素が大量に入っているようでして……知人は「目に入ると痛い」「顔がヒリヒリする」などと言っておりました。「汗腺が壊れる」というのは、ここから来たのでしょうね。
さらに、そんな汗と垢が大量に付着したシャツのまま人前に出てきたりするわけです。臭くないはずがありません。しかも、もともと体臭のキツい人が覚醒剤をやったりしたら……その体臭は、もはや毒ガスレベルでしょうね。
実際、私も丸二日室内にこもっていたポン中と話したことがあります。これは、匂いが凄かったですね。
もっとも、こうした症状は一時的なものです。覚醒剤が抜ければ、体も元に戻ります。覚醒剤をやったからといって、体質が変わり永遠に腐った粘土のような体臭を放ち続けるわけではありません。腐った粘土のような匂いも、もともと体臭のキツい人が、一時的に更にキツくなっただけなんだと思います。
ひょっとしたら、覚醒剤をやることにより汗腺が壊れ半永久的に体臭がキツくなる特異体質の人間が一万人にひとりくらいの割合で存在するかも知れませんが、それは本当に超少数派であるのは間違いありません。
今は、匂いにことさら厳しい時代です。こうしたデマが広まることにより、様々な差別にさらに拍車をかけそうな気はしますね。「あいつは体臭キツいけど、覚醒剤やってんじゃねえか?」というような流れが出てこないことを祈るばかりですね。さらに薬物依存から立ち直ろうとしている人が「覚醒剤やってた奴は、凄く臭いらしいぞ」という、いわれのない差別を受けないことを願いたいです。
何度も書いていますが、覚醒剤において一番怖いのは、薬物の欲求に脳を支配され自分の意思で動けなくなることです。マルティカの『toy soldiers』は薬物依存をテーマにした歌ですが、薬物により自らの意思すら自由に出来なくなった状態を「おもちゃの兵隊」に例えています。臭い臭くないとか、そんなレベルじゃないんですよ。いい加減なデマを流さないで欲しいものです。
最後に、ツイッターではデマが後を絶ちません。まあ、いい加減な情報を全てカットしろというのは無理です。デマがあるのは当然だと思わなくてはならないのでしょう。
しかし、ここで紹介したような明らかな誤情報が一瞬のうちにバズってしまう……という点も知っておいた方がいいと思います。




