有りがちな間違い
最近「ウーバーイーツは職質されにくいので、薬物の売人があのバックパックを利用している」という話を聞きました。ツイッターなど見ていると、真実であるかのように広まっているようです。
果たして、これが真実なのか私にはわかりません。ただ、ネットにはデマが多いのも事実です。以前「留置場だとグラビアが掲載されてる雑誌は準エロ本と見なされ差し入れできない」などと言う書き込みを見ましたが、これは完全なデマです。
そこで今回は、クライムノベルや刑事ドラマやサスペンス映画などで有りがちだけど実際には有り得ない場面なとについて書きます。まあ、何でもかんでもリアルにすればいいというものでもないですが、リアルについて知っておくことは無駄ではないでしょう。
まず、意外と知られていないのが留置場についてです。
留置場は、いわゆる『ぶたばこ』です。ところが、この『ぶたばこ』と刑務所を同じものだと思っている人もいるようなんですね。ぶたばことは、留置場のことを指すスラングです。刑務所とは違います。ついでに、念のため説明しますと、留置場とは一時的に被疑者を留置しておくため警察署内に設置されている場です。拘置所は被告人として起訴され裁判を受ける人間を収容する施設であり、刑務所は裁判により実刑判決を受けた人間の刑を執行するための施設です。
したがって、逮捕されたら留置場、拘置所、刑務所の順場に回ることとなります。
もうひとつ、勘違いが多いのは刑務所における呼称です。
少年刑務所や成人刑務所では……収容者を、名前ではなく番号で呼ぶと思っている人も少なくないようです。事実、刑事ドラマなどでは、そうした描写もよくあります。
しかし、これは間違いです。刑務所では、受刑者を名前で呼びます。いちいち「三八一番! 前へ出ろ!」などと言ったりはしないのです。
私の周囲には、かつて刑務所に入った人間が数人いました。その全員が口を揃えて「刑務所では、番号で呼ばれたことなんてない」と言っておりました。少なくとも、昔はそうだったのかもしれませんが……今は違うようです。刑務官は、受刑者を番号で呼ばず名字で呼ぶとか。ちなみに鈴木や佐藤といったありふれた名前の場合、フルネームで呼ぶこともあるそうです。
ちなみに、私はかつて留置場に入ったことがあります。その時は、番号で呼ばれました。今も覚えておりますが、三番と呼ばれていたのです。恐らくですが、留置場の段階では被告人ですらありません。そこで実名を明かしてしまっては、後々いろいろと問題となる……そのため、番号で呼んでいたのだと思います。あくまで推測ですが。
もっとも、こんな知識は知っていても何の役にも立たないです。そういうリアルな描写は、知っている人同士でしか通じないですからね。
余談ですが、世の中にはそういうワル自慢をする人が少なからずいます。特に、昭和生まれのオッサンには、いい歳をして「ワルいことが男の勲章」などと本気で信じているイタい人種がいます。あまり近寄らない方がいいと思われます。
ついでですが、以前ツイッターで「もし薬物にやらないかも誘われたら、自分はめちゃくちゃ口軽いと言えば大丈夫」などという呟きをあちこちで見かけました。はっきり言って、大丈夫とは思えません。薬物の誘いが一対一ということなど、まず無いのですよ。たいていの場合、周り全員が薬物をやり始め、自分だけがやってない……そんな同調圧力かけられまくりの状況で誘われます。「めちゃくちゃ口軽い」などと言おうものなら「いいよ、言ったらお前の家族もまとめて一緒に追い込むから」などと言われるのがオチでしょうね。
また、こういう業界はパクられ要員みたいな者がいます。上の人間は、パクられることがありません。
もうひとつ言いますと、ポン中というのは精神的に不安定です。それも、ただ不安定なだけではありません。数年前の何気ない一言を突然思い出し、激発的な怒りに駆られ殴り込みをかけてくることがあるのです。なので「お前、あの時に口軽いって言ってたな! 俺が逮捕されたのは、お前がチクッたからだ!」などと言いながら自宅に襲撃をかけてくる可能性もあることを知っておくべきかと思います。
とにかく「こんな状況の時は、こう言えば百パーセント大丈夫」ということは世の中にありません。護身術の動画を見ただけで、自分は強くなった……と思うのと同じくらい愚かな行為です。薬物の誘いを断る方法より、最初から怪しい人とはかかわらないようにするのが正解ですね。
そういえば昔、元SPがテレビで護身術について聞かれ「そんなものを使う状況に陥らないことが一番大事です」と言っていました。薬物の誘いについても、同じだと思います。




