ヤの付く人たちと霊感商法の共通点
タイトルを見て「何じゃこりゃ」と思われた方もいるかもしれないので、一応の説明をいたします。ヤの付く人とは、ヤンキーもしくはヤクザと称する人たちです。元ヤンキーや元ヤクザも含まれます。霊感商法に関しては、説明の必要もないでしょう。「俺は霊が見える」「私は天使や妖精と話せる」といい、商売をする系統の方々です。
この二種類の人たちには、いくつかの共通点があります。今回は、その共通点について語ります。
第一の共通点は、怖いということです。単に恐怖心を煽るだけでなく、人間の怖いもの見たさという心理をくすぐるという部分もあります。
ヤの付く人の怖さについては、いちいち説明するまでもないでしょう。彼らは、自身がアウトローである背景を活かして要求を通そうとしてきます。
また彼らは、怖い武勇伝を数多く語ります。「バイクで暴走」「地元ヤンキーとの喧嘩」「ヤクザ時代のシノギ」といった内容のものです。よくよく聞けば、その中身は犯罪であり直接の被害者や迷惑した人たちがいます。なんら自慢にはならない話のはずなのですが、彼らは「凄いだろう」とでもいいたげな表情で語ります。
悲しいことに、こうした系統の話は一部の人の怖いもの見たさな部分をくすぐります。なので、一部の人から人気が出てしまうのですよね。ヤンキー漫画やヤクザ映画が未だ絶えることがないのも、この一部の人たちからの人気が見込めるからですね。
霊感商法の人たちも、恐怖心をうまく突いてきます。「このままだと、大変な不幸に襲われますよ!」「死後、裁きに遭うよ!」などという言葉でこちらの心をぐらつかせようとして来ます。まあ、ほとんど脅迫ですよね。
しかし、不運な偶然というのは重なるものです。ツイていないことが立て続けに起き、気分が落ち込んでいる時にこういう言葉を聞かされると「もしかしたら……」と思ってしまうことは誰にでも起こりえます。彼らは、心の隙を突くのが非常に上手いのですよ。
また、霊感商法の人たちも怖い武勇伝を語ることがあります。「ヤクザに囲まれたが、必死で祈ったらパトカーが通りかかって助けてくれた」「悪霊が凄まじい精神攻撃を仕掛けてきたが、何とか撃退した」などという武勇伝を、普通のテンションで語ります。
こちらの場合も、一部の人たちの怖いもの見たさな気質をくすぐってしまうのですよね。「単なる偶然では?」「心の病ではないですか?」というツッコミは聞きません。ちなみに霊感商法の中には「精神科の医者は適当な病名をつけ金を巻き上げようとしているから、受診してはならない」などと言われるパターンもあるそうです。心の病を「それは霊の仕業です。医者では治せません。私が祓いましょう」などと言って儲けよう、という魂胆なのでしょうね。
そういえば昔『精神病は病気ではない』という本があったそうです。中身はというと、「精神病は霊の仕業」と書かれていたとか。
もうひとつの共通点が、特別意識をくすぐるということです。
ヤンキーやヤクザといった人種は、普通の人たちにはない体験談を持っています。それを語ることで「俺は一般人とは違う」というアピールをします。
面白いことに、こういった人たちの話を聞いている周りの人間まで、似たような心理状態になってしまうことがあるのですよね。友達に芸能人がいることを自慢する心理と、似た状態になっているのかもしれません。「こんな凄い人と知り合いの俺って凄いでしょ」という気持ちでしょうか。あるいは、危険な世界を知っている俺スゲーみたいな心理になってしまうのかもしれません。
まあ、はっきり言うなら彼らのやってることは犯罪ですからね。犯罪を自慢している時点で、どうしようもなく幼稚なのですが……男には、いくつになっても幼稚な部分が残っていたりします。悲しいですね。
霊感商法もまた、似たような心理になる人たちがいるようです。
こちらの場合、ヤ系の人たちとはタイプが違うのですが、特別意識をくすぐる点は同じです。このエッセイの第一話『ちょっとだけ嫌な実話』の章で登場したA子などは、まさにこのタイプですね。自分は真実を知っている、あるいは本物の霊能者を知っている……その気持ちが、特別意識になってしまうのでしょう。特別意識というより、選民思想に近いものを植え付けられてしまうのかもしれないですね。
まあ、それが生きていく上での自信に繋がるなら、それはそれでアリなのかもしれません。難しいところではありますが……。
三番目の共通点は、下手にかかわると人生終わるかもしれないということです。軽い気持ちでヤクザと付き合っていたばかりに、ユンボで死体を埋める穴を掘る羽目になり、挙げ句に懲役八年の刑に処された建設会社の社員がいました。また、同じ学校のヤンキーと友人付き合いしていたばかりに、敵対するヤンキーの襲撃を受け集団リンチされることもあります。中には、半身不随にされた者もいるそうです。
また、犯罪に加担させられることもあります。知らないうちに、窃盗や強盗などの見張り役や運転手などさせられていたケースもあったとか。
霊感商法に関しては、今さらここで書きたてる必要はないでしょう。今、あちこちで叩かれてる教団の例を見るまでもなく、かかわらない方が無難です。
私の独断と偏見をあえて書かせていただくなら、どちらも社会の害毒以外の何物でもありません。こういう人たちとかかわると、気がついたらとんでもない状況になっていることがあります。冗談でも大袈裟でもなく、人生が終わるかもしれない状況にいきなり落とされているのですよ。少なくとも、この二つとかかわると人生が終わるような事件に巻き込まれる可能性があるのは確かです。
最後に、誤解されると困るので書いておきます。私は、占いや霊やオカルティックなもの全てを否定しているわけではありません。霊はいるかもしれないし、いないかもしれません。正直に告白すると、私はテレビで偶然「今日の占い」などというコーナーに出くわすと、ついつい最後まで観てしまい自分の結果に一喜一憂してしまうような人間です。ただ、霊感商法は否定しているというだけです。




