ワクチンと路上飲みの話
都内では、ついに緊急事態宣言の延長が決定しました。それに伴い、様々な方面に影響が出ているようです。こうなると、一刻も早くワクチンの摂取をしたいところですね。
実は私、注射があまり好きではありません。特に、ワクチンの注射は……映像を見ると、長い針を肩にブスりと突き刺していますよね。あれは痛そうです。映像を見るだけで、思わず顔をしかめてしまったりもします。
もっとも、機会があるなら打たねばならないですよね。さらにツイッターでは「ワクチンを打つとミュータント化する!」という恐ろしい呟きも目にしました。では、ワクチン打つとウルヴァリンみたいになれるのでしょうか。あるいは、テラフォーマーズのアドルフみたいになれるのでしょうか。ならば、是非とも打ちたいところです。
くだらない前置きは、ここまでとして……実は、あの映像に違う反応をしてしまう人たちもいたりします。
覚醒剤の依存症、俗にいうポン中の人たちは様々な手段で覚醒剤を摂取します。基本は、吸うか飲むか打つか、です。中でも、覚醒剤の水溶液を注射器に入れ静脈注射する……このやり方は、吸ったり飲んだりするものとは桁違いの快感を得られるそうです。実際、私の知人は「一度打つことを覚えたら、吸ったり飲んだりなんて、もったいなくて出来ない」と言っていました。つまり彼らにとって、注射とは快感を得られる行為なわけですね。
そんな人が、テレビをつけたら注射を打つ映像が流れていた……この時、ポン中はぞくっときてしまうらしいのですよ。注射の映像が、パブロフの犬のような効果をもたらすわけですね。次の瞬間「うわあ打ちてえ」という強烈な欲求が湧き上がるそうです。
悲惨なのは、薬物依存症から抜け出ようとしている人たちですね。注射器や、注射を打つ映像が繰り返し流れてくる……これは、かなりキツいと思います。ダイエット中の人の前で、ラーメンだの焼肉だの寿司だのをガンガン食べるようなものなんですよ。
実際、知人の中には十年近く覚醒剤を断っていたにもかかわらず、一度の献血がきっかけで再び打ち始めた者もいました。
あと、知人のポン中たちを見てみると、吸ったり飲んだりしていた者は、注射する者よりは覚醒剤を止められる(厳密には違うようですが)可能性が高い気がします。一度、覚醒剤を静脈注射する快感を覚えてしまうと……止めるのは、かなり難しいようですね。まあ、これは余談ですが。
緊急事態宣言が出されると、酒類の販売にも制限がかかるようになります。そうなると、路上飲みする人が増えて来ますが……これまた、アルコール依存症の人たちにはキツいでしょうね。
テレビをつければ、路上飲みで騒ぐ人たちの映像がばんばん流れています。仕事帰りに公園を通りかかれば、仲間同士で酒を飲み騒ぐ者たちの姿が目につく。こうなると「俺も飲みたい」という欲望が湧き上がるのは当然でしょうね。
以前にも書きましたが、覚醒剤よりもアルコール依存症の人たちの方が、ある意味ではキツいのですよね。覚醒剤を手に入れるには、それなりの手順を踏まないといけません。しかし、アルコールを手に入れるのは簡単です。また、アルコールの摂取自体は法で禁じられてはいません。違法な薬物に比べれば、ハードルは遥かに低いのですよね。
しかし、依存症の人たちにとって、アルコールは違法な薬物と同じくらい危険なものです。実際、飲むと人格が変わる人間はいるのですよ。酔って友人を殴り殺してしまった人、家族に暴力を振るう人、数日間の記憶をなくした人などなど……こういう人たちは大抵「飲まなきゃ、いい人なんだけどね」と周囲に言われたりしています。
そういえば幼い頃、実家の近くに糞尿を垂れ流しながら歩くオッサンがいました。まだ四十代から五十代で、オムツが必要な老人ではありません。父は「あの人は酒の飲み過ぎでああなった」といっていました。確かに、昼間から真っ赤な顔で徘徊していた記憶があります。
さらに、昨今はコロナの影響で生活にもいろいろ制限がかかっています。仕事を失った人も少なくないでしょう。依存症の人たちは、つらい出来事に遭った時「打ちたい」「飲みたい」という欲求が湧き上がってきたりするそうです。その欲求に拍車をかけるのが、ワクチン摂取や路上飲みの映像……せつないものを感じますね。




