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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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障害者を狙う人たち

 少し前のことですが、私電磁的記録不正作出・同供用と窃盗の罪で三人が逮捕されました。

 この三人が何をしたのかといいますと、知的障害者男性のスマホを使い、ネットのショッピングサイトで、男性名義でフィギュアや腕時計など十九万円相当品を電子決済で購入し、自分たちの自宅に配送させたそうです。

 この事件、障害者の姉から「約一年間、携帯電話会社から弟に毎月二十万円ほどの覚えのない請求が来る」などと相談があったことから発覚したようです。

 正直言うと、これに似た事件はいくらでもある気がします。しかも不愉快なことに、発覚していないケースの方が圧倒的に多いと思うのですよ。




 前にも書きましたが、私は治安の良くない下町にて育っています。周囲には、知的障害者の子も住んでいました。そうした子たちが、ひとりで外出している姿をよく見かけた記憶があります。また、仕事の関係で知的障害者の送り迎えの付き添いをしていたこともあります。そんな中で学んだのは、彼らは狙われやすいということでした。

 実家の近所には、ヨンチェ(仮名です)という子がいました。知的障害者で私より年上ですが、ひとりで出歩いている姿を見かけていたんですよね。

 このヨンチェ、かなりひどい目に遭っていました。聞いた話ですが、小学生が集団で取り囲みエアガンで撃ちまくったとか、中学生に池にほうり込まれたとか、そうしたことがたびたび起きていたそうです。

 こうした暴力沙汰に加え、金を巻き上げられることも珍しくなかったようです。しまいには、少年院を出たチンピラが自宅までやって来て「お宅の息子に、ブランド物スーツを汚されたり高級アクセサリーを壊されたから弁償しろ」などと因縁をつけて来たそうです。もちろん、本人には釈明できません。そのチンピラ、たびたび家を訪問したようです。

 最終的には、地元のヤバい人たちが間に入ってチンピラを追い払ったものの「ひとりで外に出すのはやめた方がいいよ」と言われたとか。どこまで本当かはわかりませんが、カツアゲに遭っていたのは間違いないようです。

 実を言いますと、知的障害者の中には、他人に物をあげるのが好きなタイプがいるのですよ。彼らは他人と言葉によるコミュニケーションを取ることが出来ないため、顔の表情などから相手の感情を推し量るしかありません。

 そこで彼らは、物をあげることにより他人とコミュニケーションを取ろうとします。特に幼い頃などは、周りの子にお菓子や小銭などをあげることで仲間に入れてもらったり、危害を加えられずに済んできた……そんな経験を持つ人が、少なからずいます。

 そんな経験により「物をあげれば相手は危害を加えない」ということを、人生における重要なセオリーとして覚えて成長してしまう人がいるんですよ。実際、私もそうした人を何人か見て来ました。

 そういう障害者たちは、犯罪者から見れば格好の獲物です。また犯罪者でなくとも、前述のような傾向を持つ障害者と接しているうちに、だんだんと悪い考えが頭をもたげて来る……そんな人は、少なからずいそうな気がするんですよね。

 たまに、障害者施設の職員が利用者の金を勝手に使い込んで逮捕されたりする事件があります。こういったケースも、最初はほんの出来心だったのでしょう。ひょっとしたら、数百円単位だったのかも知れません。それが積もっていき、気がついたらとんでもない額になったのではないかと思われます。しかも、こうした施設の職員は、大半が真面目に生きてきた人です。真面目に生きてきた人が、悪さをして不労所得を得てしまう……これ、最終的にとんでもない額になってしまうことがあるんですよね。

 それはともかく、使い込みが気付かれないままになっているケースも、少なからずあるでしょうね。


 もっとタチの悪いケースもあります。もっとも、これはあくまで伝聞でしかないので……確認を取ったわけではないことをお断りしておきます。

 かつて刑務所に入っていた知人より聞いた話ですが、覚醒剤の密売人の中には、知的障害者を客にしていた者がいたそうです。どういう形で接触するのか、どういった形で受け渡しするのかは不明です。ただ知的障害者なら、薬物の虜にするのも簡単でしょうね。自分のやっていることが何なのかもわからないでしょう。さらに、多少おかしな行動をとっても尿検査されない……つまりは罪がおおやけになりにくいという利点(?)があるのですよね。

 余談ですが、『アルジャーノンに花束を』という小説があります。知的障害者のチャーリー・ゴードンが手術を受け天才になる……というあらすじのSF作品です。この作品の中に「魔法の粉も少しでいいので送ってください」とチャーリーが言っている場面があります。この魔法の粉、とは何なのでしょう。ひょっとして違法な薬物ではないのか? 海外でも、知的障害者に違法薬物を売り付ける連中がいるのか? などと思ってしまうのは、私が世の中のろくでもない部分を見てきたからなのかもしれません。

 一応言っておきますと、こうした海外作品は訳す人間のセンスで使われる単語が変わることがあります。この魔法の粉という単語も、訳者によって違う言葉になっている可能性があります。また、海外で使われている独特なスラングを、魔法の粉という単語で現した可能性もあります。


 話を戻します。彼らは、犯罪者にとって格好の獲物なんですよ。冒頭に挙げた事件など、まさしく氷山の一角でしょう。バレずに行われている犯罪は、相当の数になると思います。これに対処するには、保護者もしくは後見人が気をつけるしかないでしょうね。




 蛇足かも知れませんが……世の中には、知的障害者に差別意識を持っている人は少なからず存在します。相模原障害者施設殺傷事件のような思想を持つ者は、探せばすぐに見つかるでしょう。また発達障害を持つ人に対し「お前は高確率で生活保護だ。世間に一生頭下げて生き続けろ」などとコメントする人も見たことがありました。

 私は、そうした意見には反対です。同時に、そんな思想を持つ人と対話しようとは思いません。時間の無駄だからです。正直、私のような頭の悪い人間に彼らを変えるのは不可能ですね。出来るのは、そうした人々が存在することを理解した上で、不測の事態に備えることだけです。

 世の中には、四十過ぎて「態度の悪いガキがいたから、店から引きずり出してボコッてやった」などと、しょうもない武勇伝を語る人がいます。また「女さらって山の中でマワして置き去りにしてやった」というような悪さ自慢をするような人種も存在しています。こうした人を変えるには、相当の時間と労力がかかるでしょう。「ガイジ全員死ね」などと障害者を差別する人も、また同様です。恐らくは、一生変わらないでしょう。そんなことのために、己の時間を費やしたいとも思いません。

 事実、私は障害者の親御さんから「この子と一緒に町を歩いていたら、見知らぬ人から暴言を吐かれたり脅されたりしたことが何度かあった。あなたのような見た目の人に付き添っていただけると助かる」と言われたことがあります。

 結局、相手を変えようとするのではなく、自分たちが変わるしかありません。どこかの自己啓発本のようなセリフですが、この場合は彼らの嫌がらせや襲撃に備えるしかない……というのが悲しいところです。

 








 

申し訳ないですが、しばらく更新がスローペースになります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最近、とある漫画(赤井さんが絶対に読まなそうな漫画)で隻腕の快楽殺人者というキャラクターがいたんですよ…障害への差別と母親との死別という境遇と天才的な剣術の才能の組み合わせで悪い方向に走って…
[一言] ヨンチェさんが気の毒でなりません。また、ヨンチェさんに酷い事をしている人たちは、自分が何をしているのか分かっているのかな、と思いました。 私が初めて接した知的障害者は、近所に住む上級生の男…
[良い点] 『あなたのような見た目の人』 マッスル赤井さん! さすが!
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