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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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武術界隈の痛い人たち(裏)

 今回の話は、『格闘技、始めませんか?』の『武術界隈の痛い人たち』の章の続きとなっております。が、そちらを読んでいなくても問題はありません。

 先日ツイッターで「中国武術ってヤる事が目的なんで、ルールあるところでの勝ち負けって違う気がします。中国武術が本気で闘うなら、ヤられても罪に問われない状態を作らないと」という呟きを見ました。また、とある方の活動報告にて「古流の場合は基本、勝ち方ではなくて殺し方ですからねえ」というコメントも見ました。

 いい年齢になって、こんなことを言う人がいる……これが、武術系の怖いところです。




 さて、仮に殺し方を練習している武術家が町で人を殺してしまったとしましょう。その場合、何が起きるかを書きます。

 まずは、警察に逮捕されます。何をされるかは状況にもよりますが、衆人環視の中で手錠をかけられるのは間違いないでしょう。私もかけられた経験がありますが、手首が痛かったのを覚えています。

 ちなみに、ベテランの警官だと程度や加減がわかっているので、手錠をかけられても痛くないそうです。


 その後はパトカーに乗せられ、警察署へと連行されます。すると、狭い部屋で怖い刑事さんに取り調べを受けます。この時「弁護士が来るまで何も喋らねえ」などとイキったことは言わない方が無難でしょう。刑事は普段、怖いヤクザや法の知識を持った半グレなどとやり合っています。付け焼き刃の知識が通じるほど甘くありません。刑事や弁護士をへこましてやった、などとネットで吹聴する人は、九分九厘「俺スゲー」とアピールしたいだけの嘘つきです。

 ここで問題となるのは、殺した時の状況です。何度も書いていますが、正当防衛は簡単には成立しません。襟首を捕まれ、凄まれたくらいでは無理です。一発や二発、殴られても成立しません。刑事や検事たちは「争いの原因」「なぜ逃げなかったのか」「殺意はあったのか」「死ぬとわかっていたのか」といった点を執拗に突いてきます。

 ましてや、武術を習っていたとなると……確実に罪が重くなります。「人を傷つける技を習得し、それを使った」という点は、裁判では重視されるのは間違いありません。

 また「俺は人を殺せる技を習っている」などと周囲に吹聴していた場合、事態はさらに厳しいものになります。恐らくは、傷害致死で執行猶予のつかない実刑判決となるでしょうね。状況にもよりますが、最低でも三年以上の懲役は免れないのではないかと。

 仮に、正当防衛が適用され無罪となるか、あるいは執行猶予になったとしても……話は終わりません。今度は、遺族から民事で訴えられる可能性があります。この場合は、死亡した人が生きていたなら、残りの人生でいくら稼ぐかを計算し、それに応じた金を支払うことになる可能性があります。これは、実刑判決を受けた場合も同じです。刑務所を出た後、民事で訴えられる可能性があります。

 ちなみに、極真空手の有段者がナイフを持って襲ってきた二人のチンピラを叩きのめして、警察に突き出したことがあったそうです。しかし、この有段者は過剰防衛で書類送検されたとか。正当防衛の壁は、我々が思うより高く厚いようです。




 それ以前の問題として……冒頭に挙げたような人たちは、殺人という行為を何だと思っているのでしょうか。

 人間は、アニメやRPGの敵キャラとは違うんですよ。傍から見てろくでもない奴だったとしても、人である以上は両親がいます。兄弟がいるかも知れません。友達もいるかもしれません。恋人もいるかもしれません。さらに、配偶者や子供もいるかも知れないんですよ。

 そして、どんな人間にもそれまで生きてきた人生があります。また、生きていれば悔い改める可能性があります。善行を積む可能性もあります。

 殺人は、そういったもろもろ全てを一瞬にして消し去る行為なんですよ。「ヤる」「殺し方ですからねえ」などと、軽く語っていいものではありません。

 また、人を殺して刑務所に行った場合……前科という消えることのない烙印を押されることになります。今の時代、前科は生涯つきまとうわけなんですよ。ましてや殺人ともなると、最終的に裏の世界の住人の仲間入りする可能性が非常に高くなります。

 武術系の人たちは、そういったもろもろの事態に対する覚悟を決めた上で、技を学んでいるのでしょうか。最終的に、裏の世界の住人になる覚悟を持っているのでしょうか。

 などと、私がなろうの片隅で叫んだところで、彼らは変わらないでしょうね。そもそも、彼らにとって人殺しはアニメやゲームなどのフィクションで描かれているものと、大して変わらないのかも知れません。さらに言うと「俺には覚悟がある」と、ドヤ顔で答えるかも知れません。

 こういう人は……実際に技を行使し逮捕され、取り調べを受ける時になって初めて、己のしでかしたことの大きさに気づくのかもしれないですね。刑務所に入った後も「ヤる」「殺し方ですからねえ」と言っていられるのでしょうか。

 ちなみに、昭和の脱獄王の異名を持つ白鳥由栄は、出所した後にチンピラに絡まれました。白鳥は小柄ですが常人離れした腕力の持ち主であり、重罪犯の多い刑務所でも一目置かれた存在でした。ところが、シャバでチンピラに絡まれた時は一切手を出さず、じっと殴られるがままになっていたそうです。ここから何を読み取るかは、皆さんに任せます。


 最後になりますが、マスコミの中には「暴力的なアニメやゲームを見ると、子供は現実と混同してしまい暴力的になる。有害だ」と主張する人が必ずいます。私は「いやいや、子供だってリアルとフィクションの違いくらいわかるよ」と、今までは思っていました。

 が、武術界隈の痛い人たちの言動を見ているうちに……ごくごく一部には、本当にゲームと現実とを混同してしまう人がいるのかもしれない、と思うようになりました。ある意味、こういう人が一番危険かも知れませんね。








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― 新着の感想 ―
[気になる点] 揚げ足を取る事かも知れませんが、赤井さんはこのエッセイに何度か登場しているセダンとかが悔い改める事も信じているんですか?
[一言] 私もなろうの感想欄に「安倍殺したい」と書いていましたが、反省しました。 申し訳ありません(というかこれは私が感想を寄せた小説の作者に言うべき言葉ですね)。 どんなに誰かが憎くても、更生のチャ…
2020/04/02 17:43 退会済み
管理
[良い点] いつもながら赤井さんの話は真に迫っていて、グッときます。 私には今のところ無縁の話ではありますが、怖いものです。 幸運なことに、カツアゲとか路地裏のケンカとか、一回もあったことがないので…
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