厳罰化? 合法化?
最近、某番組にて松本人志さんがこんな内容の発言をしたそうです。
「薬物の犯罪に対する罰は、もっと重くすべきだ。でないと薬物犯は減っていかないでしょう。これを言っているのは意外と僕だけで、よく考えたら芸能界でやってないの俺だけかなと思ってしまいます」
それに対し、堀江貴文さんがこんな内容の反論をしたとか。
「厳しくすりゃいいってもんでもない。そういう意味で松本人志さんの意見は浅薄と思う。ある程度、麻薬などは合法化した方がいいのに」
この二つの意見、どちらを支持すべきか……まあ、ほとんどの人が厳罰化に賛成することでしょうね。
個人的には……中学生の時に初めて『ガキの使いやあらへんで』という番組を観た時、視聴者からのわけわからない質問に、更なるとんでもない答えを即興で返す松本さんに「この人、天才だ」と衝撃を受けました。その松本さんの口から「これを言っているのは意外と僕だけで」などという、飲み屋で吹きまくる下町オヤジのごとき言葉を聞きたくはなかったですね。まあ、それはひとまず置きましょう。
まず、厳罰化というのは論外でしょうね。罰を重くすれば薬物犯が減る、というのが間違いなんですよ。田代まさしや清水健太郎の例を見てもわかる通り、薬物犯は何度捕まろうが、繰り返す人は繰り返します。
また「薬物で逮捕された場合、初犯でも刑務所に行くとなれば薬物に手を出す人間が減る」という意見がありますが、これも間違いですね。刑務所に行くのが嫌だから薬物に手を出さない……という真っ当な価値観の人間は、最初から薬物などやりませんし、やるような状況に身を置いたりしません。
薬物に手を出すような者は、一般人とは違う価値観を持っています。彼らは基本的に「捕まらなければ、どうということはない」という思想の持ち主ですので、多少罰が重くなろうが屁とも思いません。むしろ、世間の良識から積極的に外れようとしている痛い人たちなんですよ。人前で「俺は大麻も覚醒剤もやったことあるから」などとドヤ顔で言ってしまえる人種です。
そんな人たちを、「罰が重くなれば減る」という我々の常識で管理しようとするのは、大きな間違いだといわざるを得ないです。
ついでに言いますと、薬物犯を刑務所に入れた場合、彼らひとりを養うために年間三百万近い税金が使われるそうです。しかも、刑務所に入れるだけでは薬物依存の治療にはなりません。現状では、刑務所は単なる隔離施設なんですよ。依存症の治療には役に立ちません。
薬物犯を刑務所に閉じ込めておくためだけに税金を使うより、病院での治療に税金を投入した方が、よっぽど有意義な使い方かと思うのですが。
ただ私は、薬物の合法化にも賛成は出来ないんですよね。
堀江さんは「ある程度の合法化」と言っています。この「ある程度の」というラインはどの程度までが適切なのか、その見極めは非常に難しいでしょうね。友人が覚醒剤で狂っていくのを、すぐ近くで見ていた私としては、合法化して欲しくないという気持ちもあります。まあ、さすがに覚醒剤は確実に合法化されないでしょうが。
スイスでは、ヘロインの依存症患者に無料でヘロインを処方することで治療を行うプログラム「ヘロイン計画」なるものが実施されているそうです。実際、効果はあるそうですが……だからといって、日本でも同じことを始めて上手くいくかどうかは疑問です。
それ以前に、国民性から言っても日本で薬物の合法化は難しいでしょうね。今後、厳罰化されることはあっても合法化されることはないものと思われます。医療用大麻を合法化しようと活動している団体もいますが、日本ではまず無理ではないかと。
最後になりますが、タバコをやめるために使われるものとしてニコチンパッチやニコチンガムがあります。どちらも、微量のニコチンを体に摂取させて、禁断症状を和らげるというものです。これは、スイスのヘロイン計画と似たやり方ですよね。
私はかつて、一日に二箱くらいタバコを吸っていました。値上がりを機に、ニコチンパッチを使いタバコをやめました……いえ、厳密に言うなら普段は吸っていないだけです。酒が入ると、隣の人からタバコをもらい吸うことがあります。つまり、私の中にはニコチンへの欲求が消えていないということです。麻薬の依存症も、同じなのでしょうね。




