『ル・ブレ』 ちょっとだけグロありのコメディー
今回は、映画『ル・ブレ』を紹介します。これは二〇〇二年のフランス映画でして、ジャンルとしてはコメディーです。日本では、あまり知られていないような気がしますね。
以前に、たまたま深夜のテレビにて放送されていたものを観たのが、この映画との出会いでしたが……夜中であるにもかかわらず、笑いながら最後まで観てしまいました。何の先入観も期待もなかったのも、幸いしたのかもしれないですね。ちなみにタイトルの『ル・ブレ』とは、フランス語で「弾丸」「囚人の足かせとしてくくり付ける鉄球」という二つの意味があるとか。観ていただけるとわかるのですが、上手いタイトルを付けたな……と思いましたね。
なお、軽いネタバレありです。
ストーリーを説明しますと、暗黒街における「伝説のアウトロー」モルテスが逮捕されるシーンから始まります。彼は刑務所に収容され、看守のレジオと親しくなります。やがて、モルテスはレジオに宝くじの購入を頼みました。すると、その宝くじが千五百万ユーロ(当時は日本円で十七億円)の大当りとなります。喜ぶモルテスでしたが……実は、その当たりくじはレジオの妻が持ったまま、アフリカへと旅行に行ってしまったのです(妻は当たりくじであることを知りません)。「このままでは、モルテスに殺される!」と、恐怖と混乱のあまり自殺を図るも生き延びてしまうレジオ。一方、当たりくじを手に入れるため脱獄するモルテス。二人は、当たりくじを持った妻を追いアフリカへと向かいます──
この『ル・ブレ』ですが、一応はコメディーです。ただ、アクションシーンはガチです。人もバタバタ死にます。さらに、グロいシーンもあります。
ここで、この映画を象徴するシーンをひとつ紹介しましょう。ギャングのトルコは、モルテスに弟を殺され、彼の命を狙っていました。やがてモルテスの脱獄を知ったトルコは、彼の居場所を吐かせるため、仕事仲間のコワルスキーを拷問します。
その拷問ですが、ちょっとグロいんですよ。トルコは、コワルスキーの片手を肉食魚(小型のピラルクでしょうか?)が泳いでいる水槽の中に入れます。「ぐおおおお!」ともがき苦しむコワルスキー。やがて、トルコが彼の片手を水槽から引き上げると……指が全部なくなっています。ところが、コワルスキーは引きつった顔でこう言うのです。
「俺が、口を割るとでも思っているのか!」
直後、彼はもう片方の手を自ら水槽に入れます。もがき苦しみながらも水槽から出した片手は、やはり指を食われていました……なぜか、中指だけを残して。コワルスキーは、その中指だけが残った手をトルコに突き出します。いわゆる「ファックユー!」のポーズですね。私、このシーンを観た時は笑ってしまいましたが……このシーンに眉をひそめるような方は、観ない方がいいかもしれないですね。
この作品には、ユニークなキャラが多く登場します。看守でありながら、ものすごくバカで気が弱くて頼りなく、モルテスの足を引っ張ってばかりのレジオ。単細胞でやたら気が短く、すぐに人を撃ち殺すトルコ。そのトルコの相棒であり、二メートルを超える巨体と金属の義歯が特徴的なメグ(メグという名ですが男です。007シリーズのジョーズのパロディですね)。葉巻のごとき大きさの大麻をくわえ、ゲラゲラ笑いながら仕事をする黒人の三バカトリオ。モルテスを執拗に付け狙う黒人の刑事。なぜか妙に腕っ節が強く、悪党を素手で叩きのめすレジオの妻……といった一癖も二癖もあるキャラたちが入り乱れ、当たりくじの争奪戦を展開していきます。はっきり言って、一番まともなのは主人公のモルテスでしょうね。何やかんや言いつつも、バカなレジオの面倒もきっちりと見ていますし。
コメディーですが若干グロく、人が死にまくる映画ですが……最後はハッピーエンドです。まあ、完璧にハッピーというわけでもなく「こいつ、またやってくれたよ」と苦笑いする感じの終わり方ですが、後味は悪くありません。先に触れた拷問シーンに抵抗のない方ならば、観ればそこそこは楽しめるのではないかと思います。絶対に観るべき! という名作ではありませんが、暇な時にでもビール片手に……というスタンスで観ていただきたいですね。




