政治家と修士と差別
あえて、実際に起きたこととは異なる描写にした部分があります。
最近、某政治家のパワハラが話題になっていますね。「お前死ねよ」「俺の時間を無駄にすんな」「頭下げて謝れ」などという言葉を、日常的に吐いていたとか。さらに、暴力を振るうこともまた日常であったそうです。腕や肩を、毎日のように殴っていたとか。
果たして、報道の全てが本当かどうかはわかりません。ただ、世の中には「役に立たない奴は、何をされようが大人しくしてろ。俺様への口答えもするんじゃねえ」という考え方の人がいるようですね。
さて、話変わって先日のことです。私は、とんでもないものを目にしました。
ある方(仮にAさんとします)のブログを見ていた時でした。その中に、暴言としかいいようのないコメントが書き込まれていたのです。
そのコメントを要約すると、次の通りです。
「修士まで行って査読論文5報以上持っている俺を、発達障害のお前が偉そうに批判するな。お前は高確率で生活保護だ。世間に一生頭下げて生き続けろ」
一応、説明します。ブログの主であるAさんは発達障害を持っており、過去にコメントを書いた人(Bさんとします)の作品を批判したことがあったようなんですよね。で、BさんはAさんに対して不快な思いを抱いていたようです。まあ、ネットでは有りがちな話ですよね。
二人の間で、過去にどのようなやり取りがあったか私は知りません。ただ、上のようなコメントだけは、書いてはいけなかったと思うんですよ。
私は、超底辺高校を卒業しただけの人間です。正直「修士まで行って査読論文5報以上持っている」(この部分は原文のままです)というのがどれだけ凄いのか、全くわかりません。まあ、知的レベルは私より遥か上であるのは間違いないでしょう。
しかし、己の知識と教養に自信があるのでしたら、批判に対してこのような言葉で応える……というのは、最悪の選択ではないでしょうか。
仮に、Aさんの批判が気に食わないのであるならば、自慢の知性をフル活用して「お前の批判は間違っている」ということをきちんと証明すればいいだけだと思うんですよ。それを「俺のように賢く偉い人間に、お前のような者が批判するなど許さん」とでもいうようなコメントを、恥ずかしげもなく投稿する……これは、話にならないです。私の目には、都合が悪くなるとキレてみせるチンピラと同レベルであるように見えますね。「修士まで行って査読論文5報以上持っている」というのは、その程度なんですか? と聞きたくなります。
さらに「世間に一生頭下げて生き続けろ」にいたっては、もはや笑うしかないですね。障害者が参議院選挙にて当選するこの御時世に、差別意識を隠そうともしないコメントを書くとは、ちょっと理解できないですね。この方は、もしかしたら相模原連続殺傷事件の犯人と同じ思想の持ち主なのでしょうか。まあ、心の中で障害者を差別していることが明らかになったのは間違いないですね。
最後になりますが……残念なことに、世の中には差別的な思想を持っている人間が少なからず存在しています。「障害者は無駄だから殺せ」などと主張する人もいるようです。しかし、無駄だから殺せ、というのはあまりにも短絡的だと思いますね。障害者も健常者も同じように暮らせる差別のない社会の実現……これは、確かに難しいことでしょう。当然ながら新しい発想が必要となりますし、様々な分野の研究もまた必要でしょう。しかし、そういった努力の過程で生まれた知識や知恵や技術は、大なり小なり健常者の生活にも寄与していると思うのですが。
この問題に関しては、他にもいろいろ思うところはありますが、今回は故・水木しげる先生の名作『悪魔くん千年王国』に登場する蛙男のセリフで閉めさせていただきます。
「昔から、心ある人々は……様々な不幸を持った人も同じように生活できる世界を作ろうとした。キリスト、シャカ、マルクス、悪魔くん……皆、それぞれ方法は違っているが、その根本にある考えは同じだ。世界がひとつになり、貧乏人や不幸のない世界を作ることは、遅かれ早かれ誰かが手をつけなければならない、人類に残された宿題ではないのか……悪魔くんは、それをやろうとしたのだ」




