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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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ライフル魔

 私が小学生の時は、週に五回くらいはテレビで映画が放送されていました。『金曜ロードショー』『日曜洋画劇場』といった番組があり、幼い私は楽しみにしていたのです。

 その当時に観た映画の中に、妙に記憶に残っているものがありました。タイトルも内容もほとんど覚えていないのですが、頭のおかしくなった男がビルの屋上からライフルを乱射しており、「屋上にライフル魔が出ました!」などと警察が騒いでいるシーンがあったのです。

 観ていた私は、思わずプッと吹いてしまいました。なぜなら、うちの近所にも似たようなやからがいたからです。




 私の住んでいた地域は、木造の家屋が並んでいるような場所でした。が、家から自転車で十分ほど行った先には、マンションが建っていました。マンションといっても、せいぜい四階か五階くらいの高さですが……我々とは、ちょっと違う人種が住んでいた記憶があります。

 そのマンションに、ライフル魔が潜んでいたのです。


 言うまでもなく、日本では本物のライフルなど持てません。なので、地元にいたライフル魔はエアガンを用いていました。マンションのそばを自転車で通りかかったりすると、BB弾が飛んで来るんですよ。

 最初は、本当に驚きました。普通に道路にて自転車を走らせていたら、鋭い音と共に何かが飛んで来る……何事かと自転車を停め周りを見回すと、またしても音が鳴る。ふと地面を見ると、オレンジ色の丸く小さい物が落ちている……幼い私がBB弾を見たのは、この時が初めてでした。

 まあ、ほとんどは外れてくれるのですが、たまに運悪く命中することがあります。これがまた、シャレにならない痛さでした。目に当たれば、確実に失明していたでしょうね。なので、我々はそのマンションを通る時は、全速力で駆け抜けていました。止まって話などしていようものなら、いい的になってしまうからです。

 そのライフル魔ですが、当時の記憶によれば「大人の男の人」でした。もっとも、小学校低学年の我々から見れば、中学生だろうが高校生だろうが大学生だろうが「大人の男の人」でしたが。おじさんという年齢ではなく、しかし我々よりは遥かに大きい男の人が、マンションを通りかかるとエアガンで撃ってくる……そんな環境だったのです。毎回必ず撃たれる、というわけではありませんでしたが、少なくとも二回に一回は撃たれてましたね。

 ここまで読んで、不思議に思った方もいるかもしれません。なぜ、警察が動かないのかと。幼い子供を、マンションからエアガンで撃つ危険人物……警察に通報するのが普通ですよね。

 今から考えると奇妙な話のですが、我々はその状況を普通に受け入れてたんですよね。親に言っても「あそこのマンションには、変なのが多いから近づくな」と言われるだけでした。そもそも、実家のすぐ近くのアパートにはポン中とおぼしきオッサンもいましたし、オーバーステイの可能性が高い外国人も住んでいました。エアガンで撃たれるくらいのことに、いちいち構っていられなかったのでしょう。

 さらに言うなら、ご近所トラブルになるのを避けていた部分もあったのでしょうね。マンションに住んでいるのは、我々より金持ちの家が多かったようでしたし、下手なトラブルを招くくらいなら、放っておこう……という意識があったのかも知れません。

 ともかく、我々はそのマンションを通りかかるたびに全速力で移動し、運が悪ければBB弾の直撃を食らう……ということが当たり前の日常となっていました。

 ところが、我々が中学生になった時のことです。ライフル魔は、ぷっつり活動を停止してしまいました。何があったのかは不明です。ひょっとしたら、エアガンで通行人にシャレならない怪我を負わせてしまったのかも知れません。真相はわかりませんが、とにかくライフル魔は数年に渡る活動を停止しました。

 今だったら、即通報されているであろうライフル魔。こんなのが、昔は野放しになっていたんですよ。恐ろしい時代だったな、と思います。




 








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