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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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シンナーマン

 先日、とあるドキュメンタリー番組を観ていた時のことです。某国の街角をカメラが映してしたのですが……まだ十歳前後と思われる黒人の子供たちが、ガラス瓶をくわえていました。その中身は、ジュースではありません。そう、彼らはシンナーを吸っていたのです。

 彼らは、親に捨てられた子供たちでした。つらい路上生活に耐えるため、シンナーを吸って気分を紛らわせていたのです。また、シンナーを吸うことにより空腹をごまかすことも出来ます。彼らにとって、食べるよりシンナーを吸う方が安上がりなんでしょうね。言うまでもなく、身体と脳は加速度的に壊れていきますが。

 そんな子供たちを見ているうちに、とある知人を思い出しました。




 マサ(仮名です)という男と知り合ったのは、友人のイーサンを通じてでした。ちなみに、このイーサンは『半端は駄目だ』の章に登場したポン中です。

 イーサンの友人であるにもかかわらず、マサにはヤンキーやチンピラのような粗暴な雰囲気がありませんでした。背は低く色白で、髪型や態度をどうにかすれば、ジャニーズ系といっても通じるであろう顔立ちの持ち主です。私は特に警戒もせず、マサと付き合っていました。

 やがて、マサは東京を離れ地元の山梨へと帰ることとなりました。必然的に、それからは顔を合わせることがなくなりました。私と彼とは、電話で週に一~二度やり取りするようになります。

 しばらくの間は、特に異変はありませんでした。が、マサは徐々におかしくなります。

 まず、口調がおかしくなりました。ろれつが回らなくなり、同じことを何度も何度も口にするようになります。さらに言っていることも支離滅裂であり、私の知らない人間の話を一方的に延々と喋り続けることもありました。

 私はわけがわからず、イーサンに連絡しました。あいつ、どうしたんだ? と。すると、こんな答えが返って来ました。


「あいつ、またシンナーやり始めたんだよ」 


 マサは、もともと地元でシンナーを吸いまくっていました。しかし、東京に出てきたのを機に、シンナーを一切断っていたそうです。実際、直接顔を合わせていた頃には、そんな雰囲気は全くありませんでした。

 ところが、東京での生活が上手くいかなくなり……マサは、地元の甲府へと帰りました。そこで、またしてもシンナーにハマってしまったようなのです。地元に帰れば、そっち関係の知り合いにも簡単に連絡がつきますからね。

 やがて、マサから頻繁に連絡が来るようになりました。が、ろれつが回らない口から飛び出て来るのは、意味不明の言葉ばかり……イーサンから聞いた話によれば、周りの人間がどんどん離れていってしまい、話す相手がどんどんいなくなってしまったとか。

 私も、最初は相手にしていました。が、昼夜を問わず度重なる電話にさすがに付き合いきれなくなり、縁を切りました。シンナーをやっている者のろれつのおかしさは、覚醒剤をやっている者より上でしたね。

 マサが今、何をしているかは不明です。生きているかどうかすら、さだかではありません。



 

 蛇足かも知れませんが、タイトルについて説明を。かつて『サンダーマスク』という変身ヒーロー系の特撮番組があったのですが、登場した怪人の中に、「シンナーマン」という恐ろしいキャラがいたのです。このシンナーマン、シンナーに侵された人間の頭に巨大なストローをぶっ刺し、脳をチュウチュウ吸い取る……という怪人だったそうです。気になる方は、動画などをチェックしてみてください。



 

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