保釈と、有罪判決
先日(二〇一九年六月)、保釈金になっていた容疑者が逃走しました。数日後には逮捕されましたが、逃走中は大いに世間を騒がせました。
この容疑者ですが、窃盗や覚醒剤といった罪名ゆえ「こんな凶悪犯に、なぜ保釈を許可した?」と、様々なメディアで騒がれていたようです。
私も、この事件には驚きました。よくよく調べてみると、この容疑者は過去にも強姦や強制わいせつの罪で逮捕され、複数回の有罪判決を受けていたそうです。これ、普通ならありえないこと……らしいんですよ。
念のため説明します。ものすごく簡単に言いますと、有罪判決とは執行猶予付きの刑です。それに対し、実刑判決とは懲役刑のように、刑務所に収監されることになった刑を指すようです。
有罪判決でも、もちろん前科は付いています。ところが実刑判決と比べれば、かなりの差があります。なにせ、執行猶予が付けば表面的には我々と何ら変わることはありません。普通に生活できます。まあ、厳密にいうと多少の不都合はあるようですが、それでも刑務所に比べれば遥かにマシでしょう。
この執行猶予ですが、初犯の人間に付くケースが多いようです。つい、出来心で罪を犯してしまった……そんな人間に対する救済措置とでもいいましょうか、初めての過ちに対しては法も寛大な処置をするようですね。
ところが、その後も罪を犯す人間に対しては、法も甘くありません。次に逮捕された場合は、ほぼ実刑です。
知人から聞いた話ですが、こんな人がいたそうです。カクさん(仮名です)は、覚醒剤で逮捕され執行猶予付きの有罪判決を受けました。
執行猶予が明けた数年後、カクさんはまたしても逮捕されました。今回も覚醒剤ですが、カクさんは自分から警察出頭したそうです。恐らくは、覚醒剤の影響でおかしくなっていた(ヨレていた)のでしょうね。
このカクさんですが、結婚しており子供もいます。また、ちゃんとした職にも就いています。さらに、その職場は……逮捕されたことを承知の上で「今後も、カクさんにはウチで働いてもらいたい」と言ってくれたそうです。
家庭があり、養わねばならない子供がいて、職場でも信頼されている……にもかかわらず、彼に執行猶予は付かなかったそうです。カクさんは、一年二ヶ月の実刑判決を受け刑務所に行きました。
私は、法律に詳しくはありません。また、過去に法律を学んだわけでもありません。ただ、執行猶予付きの有罪判決というのは、ひとりの人間に何度もあることではないのは知っています。特に、件の容疑者の場合は……強姦や強制わいせつといった罪です。強姦というのは、重い罪なんですよ。仮に強姦で起訴されたら、執行猶予付きの判決は難しいでしょうね(ケースにもよるでしょうが)。
しかも、容疑者は「強姦や強制わいせつなどで、複数回の有罪判決を受けており」とのことです。複数回ということは、少なくとも一度ではないですよね。ちょっと普通とは思えないのですが。
その上、さらに罪を犯して逮捕されたにもかかわらず、保釈が許可されるというのは……ちなみに、強盗で逮捕された知人は、弁護士に「保釈請求は通らないですよ」と言われたとか。まあ、それは二十年近く前の話ですが。
そんなわけでして、この事件は「どうしてこうなった?」としか言いようがない話ですね。保釈に関しては、ただ単にハードルが低くなっているだけなのかも知れません。が、「有罪判決を複数回受けており……」という部分だけは、どうにも釈然としないものを感じるんですよね。
ひょっとしたら、我々一般人にはわからない忖度的な何かがあるのかもしれません……などと書いていたら、陰謀論のごとき内容になりそうですので、今回はここで閉めさせていただきます。




