川越少年刑務所の噂
これは、私が知人より聞いた話です。信じるか信じないか、それは読んでいるあなたが判断してください。
知人の金鳥(仮名です)は、かつて川越少年刑務所に服役していました。罪名は覚醒剤の所持と使用です。彼は二回逮捕され、一度は執行猶予で済みましたが……二度目は実刑と相成りました。分類審査の後、川越少年刑務所へと送られたそうです。
川越は、本当に酷い所だったそうでして……とんでもない話をいろいろ聞かされました。が、中でも一番驚いたのは、昼食時に起きた出来事です。
その日、金鳥は食堂にて他の受刑者と昼飯を食べていました。川越少刑では、昼食時はテレビが見られたそうです。当時は、『笑っていいとも』が放送されていました。
やがて、タモリとゲストとの俳優のトークが始まりましたが、金鳥はほとんど見ないで食べていたそうです。
その時、隣の席にいた受刑者がぼそりと呟きました。
「あいつ、ネタ食ってねえか?」
念のため説明しますと、ネタとは薬物を指すスラングです。その声に、金鳥は顔を上げテレビの画面を見ました。
画面には、有名な俳優が映っています。イケメンであると同時に、しっかりした演技にも定評があり、ドラマや映画では存在感を発揮していました。九十年代から現在に至るまで、仕事が途切れたことはないはずです。
しかし今、画面に映っている顔つきは普通ではありません。明らかに、薬物が効いている状態なのです。そんな状態で、当時はそこそこ人気の番組だった『笑っていいとも』のテレホンショッキングに出演し、MCのタモリと楽しげに会話していたとか──
わからない人のために、一応は説明します。年季の入ったポン中および売人は、顔を見れば薬をやっているかどうか、だいたいは分かるそうです。実際、かつて某繁華街には、売人の外国人がうろうろしている通りがありましたが……「薬をやってる」人間が通りかかると、向こうから声をかけてきたそうです。私は、その現場を見たこともありました。
ちなみに、一般人にも分かる「覚醒剤が効いている人間」の見分け方をこちらに書きます。身近に、怪しい人間がいた場合の参考にしてください。
〇目つきがギラギラしている
〇こちらと目を合わせない
〇不意に話しかけた場合、とっさに言葉を返せず「いやいやいやいや、あのあのあの」のような喋り方になる
〇床をキョロキョロ見回し、落ちているゴミやホコリを執拗に拾う
〇室内にこもり、滅多に出てこない
〇こちらの発した何気ない一言に突然キレ出し「待てよ、何でそんなこと言うの? なあ、何が言いたいの?」などと執拗に絡んでくる
もし、この全てが当てはまる人がいたら、かなり怪しいです。近づかない方がいいでしょうね。
話を戻します。やがて食堂内で「あいつ、やってるな」「ネタ効いてるよ」というような声が聞こえてきたそうです。川越少刑の食堂内にいたポン中たちの目には、某俳優は覚醒剤が効いている状態でテレビに出演している……という風に映っていたのです。
ただ、この時の私は、金鳥の話を百パーセントは信用していませんでした。この男はいい加減でしたし、話を誇張する部分があります。なので「また大袈裟なことを」と思っていました。
さて、その話を聞いてから数年後のことです。私は、京極(仮名です)という男と会っていました。この男、『またしても、ちょっと怖い話』の章にも登場しておりまして、川越少刑を出ています。
私は京極と話している時に、金鳥から聞いた逸話を思い出しました。そこで、何の気なしに某俳優の話をしたところ、思わぬ答えが返ってきました。
「ああ、その話は俺も聞いたよ。話題になってたぜ」
えっ、と私は驚きました。金鳥と京極は、ほぼ同じ時期に川越少刑に入っており、配置された工場は違いますが、二人の話す内容には共通する部分が多かったんですよね。しかし、この話まで共通しているるとは思いませんでした。
二人から聞いた話をまとめると、二〇〇〇年の十月から十一月の間に放送された『笑っていいとも』のテレホンショッキングに、某俳優が「覚醒剤が効いている」状態で出演しタモリと会話しており、川越少年刑務所は騒然となった……ということです。ちなみに、この俳優は今(二〇一九年六月)も、とあるドラマに出演しております。過去に逮捕されたという話は聞いてません。
もし、この件に関して何かご存知の方がいれば、こっそりメッセージで教えていただければ……特に、この期間に川越少刑にて服役し、番組を見た方などいれば、具体的な話をメッセージで聞かせていただけると幸いです。




