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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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つまり、これは政治が悪いんだな

 先日、川崎にて二十人が殺傷される痛ましい事件がありました。今(二〇一九年六月)もまだ、ニュースやワイドショーにて報道されています。

 この事件に伴い、それまでニュース番組をにぎわせていた東池袋暴走死傷事故の関連ニュースは、ほとんど報道されなくなりました。なろうでも一時期、あの事件に対する怒りをぶちまけたエッセイがランキング入りしていましたね。もっとも今では、すっかり忘れ去られているようですが……。

 しかし、被害に遭った人や遺族にとって、事件は終わっていません。テレビにて、適当なコメントをして怒鳴ったり泣いたりして、それで終わりの芸能人コメンテーター。あるいは、読者の共感を得られるような文章を書き、それで一丁上がりのライターとは違うんですよ。





 以前『感情的なコメンテーター』の章でも書きましたが、コメンテーターは、事件に対し意見を言うだけです。しかも芸能人の場合、当然ながら専門的な知識はありません。したがって彼らの出来ることと言えば、ほとんどの場合「キレる」か「泣くか」です。「死にたきゃ、ひとりで死ね!」などと怒鳴るか「被害者が可哀相……」と泣くか。もちろん、それが悪いとは言いません。彼らも、それが仕事ですから。

 その裏には、忘れ去られた数々のニュースがあります。一般の視聴者にとって、その事件は「既に終わった」ものです。しかし、実際に関係した人たちにとって、事件は終わってなどいません。特に、被害者の遺族にとっては、事件は永遠に続くんですよ。さらに、癒えない傷を負わされた被害者にとっても、終わらないでしょう。

 世の中には、そうした人たちのケアをする職業の方々がいます。彼らはキレることも泣くこともなく、関係者たちの体や心の傷と正面から向き合います。相手の家に出向き、辛抱強く相手の話を聞きます。時には法的なアドバイスや医学的なアドバイスもしますし、また行政に働きかけたりすることもあります。泣いたりキレたりするだけの芸能人コメンテーターと比べ、どちらが役に立っているか……考えるまでもないでしょう。

 蒸し返すようで恐縮ですが、かつて児童虐待のニュースがワイドショーをにぎわせたことがありました。その時、某芸能人は「親をぶん殴ってやりたい」「俺が子供育ててやる」と、怒りに任せて怒鳴りました。さらに、別の番組で女子アナは泣きながら件のニュースを読んだそうです。どちらも、視聴者からは好評価だったようです。

 一方、事件の起きた地域の役所や児童相談所には、苦情の電話が殺到したそうです。なろうでも「悪いのは児童相談所だ」「お役所仕事が悪い」などという意見がちらほら見られました。

 さらに、東池袋暴走死傷事故の時には……あちこちで「上級国民」なる言葉を見かけました。「遺族の気持ちを考えると納得いかない」「運転していた奴は許せない」などという意見もありました。なろうでも、事故に対する意見を書いたエッセイをいくつか見かけました。中には過激な論調のものもあったような記憶があります。


 さて、その後はどうなったでしょう。少なくとも私は、怒鳴っていた芸能人コメンテーターが身よりのない子供たちの里親になったという話は聞いていません。また、泣いていた女子アナウンサーが虐待された児童のためにボランティアを始めた……というような話も聞いていません。さらに、上級国民だの何だのと言っていた人も、特に何もしていないようです。なろうでも、あの事件に関するエッセイはもはや書かれていません。ネタとしての鮮度が落ちた今、書いても仕方ないのでしょうね。

 では、苦情の電話が殺到し、なろうでも叩かれていた児童相談所はどうでしょうか。彼らは、今も活動を続けています。通報してきた人の話に耳を傾け、暑い中で虐待の疑いのある家を一軒一軒訪問しているそうです。

 確かに、彼らとて完璧ではありません。時には、ミスもあるでしょう。さらに、子供が虐待の末に死亡ともなると、糾弾されるのも仕方ありません。

 だからといって、大した事情も知らず「悪いのは児童相談所」「事なかれ主義のお役所仕事」などと非難するのはおかしいですよね。ましてや、苦情の電話をかけて業務を妨害する……これ、やってることはただの鬱憤晴らしです。

 インテリヤクザ……いえ、インテリヤンキーを気取り「役所が悪い」「上級国民が悪い」「政治が悪い」などと言うのは簡単ですし気分もいいでしょう。さらには、体制に反抗している姿勢を他者にアピールすることも出来ます。

 しかし、その裏には……世間一般の人たちが「忘れて」しまった事件と、今も真剣に向き合っている人たちがいます。全く無関係の安全地帯から「役所が悪い」「上級国民が悪い」「政治が悪い」などと、したり顔で言っている人たちと違い、彼らは現実の問題に立ち向かっているんですよ。賞賛しろとは言いませんが、マスコミの一方的な情報や、憶測に基づいた報道を真に受けた悪口のみに耳を傾けないで欲しいです。

 最後に、タイトルは『マカロニほうれん荘』という昭和の漫画に登場した『なんだ馬之介』というキャラのセリフです。何かあると「つまりこれは、政治が悪いんだな」と言い「政治は関係ねえだろ!」と周囲から突っ込まれるキャラ……だった記憶があります(すみません、詳しくは知らないです)。昭和の時代から、何でもかんでも政治のせいにする人はいたようです。結局のところ、もっとも簡単であらゆることに応用可能な結論なんですよね。






 

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