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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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日常と非日常

 ほとんどの人は、犯罪とは無縁の生活を送ります。窃盗や強盗や詐欺といった金銭がらみのもの、薬物、さらには喧嘩のような単純な暴力沙汰ですら、かかわることなく一生を終える人もいるかもしれませんね。

 こういう人たちは大抵「普通に暮らしていれば、犯罪なんかとかかわることはない」という信念を持っています。その考え方は、間違いだとは言い切れません。しかし、完全に正しいとも言い切れないんですよね。人生において、運という要素の占める割合は、決して小さなものではありませんので。




 さて、たまにニュースで「人を車で跳ねた後、その場からすぐに立ち去った」という事件が報道されることがあります。

 これは、ひき逃げという罪になります。ひき逃げの正式な名称は知りませんが、間違いなく犯罪ですね。

 私は車の免許を持っていませんが、もし仮に車を運転していて、人を轢いてしまったら……正直、「逃げてしまおうか」という思いが頭を掠めないとは言い切れません。車の運転という「日常」から突然に、交通事故という「非日常」の空間に放り込まれたら、自分でもどんな行動をとるかわかりません。ただ、そういう事態に陥らないよう注意するくらいしか出来ないですね。

 実際、ひき逃げをやってしまった人間のほとんどが、いきなり非日常の空間に放り込まれ……気が動転し、考えるよりも先に体が動き逃げてしまったというのではないでしょうか。人間は、いざという時にどんな行動をとるかわかりません。特に、生まれて初めての事故に遭遇してしまった場合、「俺は絶対に逃げない」と断言できる人など、いないのではないでしょうか。いたらいたで、その恐るべき自信の源が何なのか、知りたい気もしますが。

 もっとも、私は車の免許を持っていません。したがって、事故を起こす……という事態には、まずならないでしょう。無免許でもしないかぎりは。

 しかし、道を歩いていて酔っ払いに絡まれる……という事態は、誰の身にも起こり得ることです。仮に、酔っ払いに絡まれ突き飛ばしたら……相手はよろけて、アスファルトの地面に頭を打ちました。次の瞬間、大量の血が流れます──

 この場合、即座に救急車を呼ばなくてはなりません。さらに、相手が助かるような措置をするか、最悪でもその場に留まる必要があります。

 ところが、流れる血を見て動転し、その場から逃げ去る……そんなことをしたら、確実に罪は重くなります。偉そうに語っていますが……仮に私が、そんな非日常の空間に放り込まれた場合、絶対に逃げないという自信はありません。




 ここからが、皮肉な話なのですが……実のところ、悪さ慣れしている人間の方が、事故を起こしたり事件の当事者になってしまった場合、冷静に対応したり出来てしまうんですよね。

 彼らは、周囲に逮捕された経験のある人間が多くいます。また、自身でも逮捕され取り調べを受けたりした経験があります。

 そのため、何かやらかして逮捕された場合、彼らは適切な対応がしやすいです(平穏無事に暮らしてきた一般人よりは、ですが)。また、こちらの罰が軽くなるよう、上手く供述したりも出来ます。

 たとえば、同じような罪でも「窃盗、傷害」と「強盗、傷害」とでは刑の重さが違います。また「恐喝、傷害」と「強盗、傷害」の場合も刑の重さが違います。もちろん、強盗の方が重いです。

 さらに「殺人」と「傷害致死」とでは、やはり刑の重さが違います。「殺人未遂」と「傷害」でも、刑の重さが違います。当然ながら、殺人という罪名の方が罪は重いです。

 ところが、平穏無事に過ごしていた人は、そのことを知りません。仮に知識として知っていたとしても、逮捕そして警察の取り調べ……という非日常の空間に放り込まれると、気が動転してしまいます。そうなると、付け焼き刃の知識など頭から吹っ飛んでしまうでしょう。結果、刑事の誘導尋問のごとき言葉のままに供述してしまう……というケースは少なくないそうです。

 逆に悪さ慣れしている人は、自分の罰を軽く出来るよう立ち回る方法を知っています。そのため、本来より軽い罰で終わるケースが多いらしいんですよね。

 本当に皮肉な話ですが、平穏無事に人生を送っていたような人ほど、不運な偶然が重なり逮捕された時には損するように出来ているようです。世の中というのは、無常といいましょうか無情といいましょうか……そんな側面があるのは確かです。

 






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