困惑のグルメ
以前にも書いている通り、かつて私は逮捕され留置場にて一泊した経験があります。一泊といっても、ほとんど眠れませんでしたが……なんという場所に来てしまったのだ、という思いに苛まれ、睡眠どころではありませんでした。
やがて起床時間になり、布団を畳んで押し入れのような部屋にしまい、官のコップと歯ブラシを借りて歯を磨きました。歯ブラシは、たぶん新品だった……ような気がしますが、ひょっとしたら違うのかもしれません。潔癖症の人には、耐えられないでしょうね。
その後、朝食の時間になりましたが、これが酷いものでした。鉄格子の扉が開き、発砲スチロールのケースに入ったご飯が渡されました。市販の弁当のような、長方形のものです。次いで、味噌汁の入ったお椀が来ました。
それで、朝食は終わりです……私は、困惑してしまいました。実のところ、おかずが配られるんだろうと待っていたのですが、配られないまま扉が閉まったのです。
ちなみに、ご飯の上には数切れのタクアンが乗っており、ふりかけがかかっていました。が、それだけです。刑務所の食事を「臭い飯」などと言うそうですが、匂い以前に少ないです。なので、食いしん坊の人は絶対に逮捕されないようにしましょう。ついでですが、留置場で出される食事は警察署によって多少の差はあるようです。しかし、基本的に朝食はご飯と味噌汁だけだとか。酷い話ですね。まあ、だったら逮捕されるようなことすんな、と言われればそれまでですが。
さて、警察署での取り調べが終わったとしましょう。その後は、東京拘置所に移送されます。
聞いた話ですが、東京拘置所の食事はかなり不味いそうです。友人のスミスは「汁を吸ったワカメラーメンみたいなのが出たけど、本当にクソ不味かった。口に入れた瞬間、吐きそうになった」と言っておりました。また別の知人は「毎回、得体の知れないおかずが、お椀の中に大量に入って来た。かなり不味かった」と言っていました。人によって味の好みはあるでしょうが、東京拘置所の食事を美味しいと言っていた者は、私の周囲にはいなかったですね。
ただ、量は多かったそうです。なので、不味い食事に耐えられる人なら大丈夫なようです。しかし、東京拘置所に入れられている人というのは、その時点では推定無罪なはずなんですよね。そんな人をわざわざ収容し、不味い食事を与えるというのは……ちょっと首を傾げてしまいますね。
ひょっとしたら、不味い食事で精神を追い込んでいき、素直に罪を認めさせようという狙いがあるのかも知れない、などとバカなことを考えてしまいます。そりゃあ、カルロス・ゴーンも嫌になりますよね。
さて、裁判が終わり晴れて囚人として刑務所に送られたとしましょう。
刑務所の食事は、基本的に薄味だそうです。また、東京拘置所に比べ量は少ないとか。ただ、味は東京拘置所よりいいそうです。知人より聞いた、ある日のメニューをここに書きだします。
朝食:ご飯、味噌汁、ふりかけ、魚フレーク
昼食:ご飯、煮魚、野菜炒め、豆昆布佃煮
夕食:ご飯、豚カツ、卵焼き、チンゲンサイ炒め、グループフルーツ
ここに書かれている内容だけ見ると、かなりいいものを食べているような気がします……少なくとも、私よりはいいものを食べているような感じですね。まあ、「だったら入ってみろ!」と言われそうですが。
ここまで色々と書いて来ましたが、実のところ留置場では出前が取れるそうです。そのため、金があれば不味いものを食べなくても済むとか。また、拘置所でも外注の弁当を頼むことが出来るそうです。さらに拘置所では、缶詰やらお菓子やら食パンやら購入することが可能だとか。そのため、金さえあれば不味い食事を取らなくてもいいそうです。地獄の沙汰も金次第……という言葉がありますが、やはり金持ちは過ごしやすいようですね……そもそも本物の金持ちなら、逮捕などされないのでしょうが。
最後に、しょうもない情報を。東京拘置所では、名古屋では有名なお菓子『しるこサンド』が買えるそうです。




