反社会的勢力とは、何ですか?
最近、コカイン使用の罪で電気グルーヴのメンバー(?)であり俳優でもあるピエール瀧さんが逮捕されました。この事実に関して、私は特に叩こうとは思いません。彼は罪を犯しましたが、それに対する罰は法が与えれば充分であると思っています。作品に罪はないという議論があるようですが、それについてここでは触れません。
さて、とある日のことです。昼、私はテレビを観ながら昼ご飯を食べていました。とはいっても、真剣に観ていたわけではありません。ただ、何とはなしに観ていました。
すると、番組のMC(毒舌家で知られ飲酒運転で逮捕された過去を持つ俳優のような人)が、こんなことを言っていました。
「あのさあ、薬物は他人には迷惑かけてないとか言い訳する奴もいるけど、その金は反社会的勢力に流れるわけじゃん。社会に迷惑かけてるんだよ!」
MCの発言を一言一句正確に再現した、というわけではありませんが、要点は押さえているはずです。この言葉、皆さんはどう思いますか。
正直言いますと、私はこの言葉を聞いて首を傾げてしまいました。
ここで考えてみたいのですが、反社会的勢力とは、いったい何者なのでしょうか。
まあ、いちいち説明する必要もないでしょうね。ヤクザ、チンピラ、プロの犯罪者、テロリスト、外国人マフィア、その他もろもろ……といった裏社会の住人たちのことを指しているのでしょう。
では、彼らは悪なのでしょうか? これまた、いちいち考えるまでもないことでしょう。彼らは大なり小なり法を犯していますし、悪とされるのも当然です。麻薬は、そんな反社会的勢力の資金源になっている、だから社会に迷惑をかけているのだ……この意見、なるほどと頷ける部分はあります。
と、ここでひとつ疑問が出てきます。その反社会的勢力を撲滅するような特集なりキャンペーンなり何なりを、マスコミは現在やっているのでしょうか? ワイドショーと呼ばれる番組は、そんな特集を放送したことがあるのでしょうか?
反社会的勢力は絶対的な悪、これはマスコミ共通の認識なんですよね。事実、反社会的勢力の人と酒を飲んでいた姿を写真に撮られただけで、「黒い交際」などと言われマスコミから散々に叩かれた芸能人もいました。つまり、反社会的勢力は存在自体が悪なんですよね。さらに反社会的勢力の人とは、付き合いがあるだけでも罪という意識もあるわけです。
そこで、私は思うんですよ。反社会的勢力が、そこまで悪い存在であるのならば、マスコミはなぜ放っておくのでしょうか。かつて、教祖の命令により地下鉄にサリンを撒いた宗教団体がありましたが……反社会的勢力が社会に害悪を撒き散らす存在であるのならば、一刻も早く撲滅すべきでしょう。
そのため、マスコミに出来ることは何でしょうか? 定期的に特集を組むなり何なりして、一般人を啓蒙していくべきではないでしょうか。前述のMCも、その毒舌を存分に振るい「反社会的勢力は、こんなにもけしからん連中なんですよ! こんな極悪非道な連中を野放しにしておいていいのでしょうか! 皆さん、こんな連中は撲滅しましょう!」と世間に向かい発信していくべきではないのでしょうか。
もちろん、ピエール瀧さんのしたことは許されないことですし、叩かれるのも仕方ありません。しかし、叩く材料として反社会的勢力を持ちだし「麻薬を買うことによって、反社会的勢力に利益をもたらしている。けしからん」などと言うのであるならば、悪の大元であるはずの反社会的勢力の方もちゃんと糾弾すべきなのではないのでしょうか。
反社会的勢力という巨悪の存在を持ち出しながら、そちらの害悪や悪行には一切触れず、ピエール瀧さんのような小悪をテレビという媒体で「反社会的勢力の資金源になってるんだよ」などと言いながら執拗に叩き続ける……明らかに、おかしいと思うのですがね。おかしいのは、私の方なのでしょうか?
さらに、ピエール瀧さんの相方とも言える石野卓球さんは、何の罪も犯していないんですよ。その卓球さんのツイートをわざわざ番組で取り上げて叩くというのは……これまた、よくわからないです。「猥奴ショー」というツイートは上手いと思いましたが、ツイッターを封印してしまったようで残念ですね。
蛇足ですが、芸能人が薬物で逮捕されたりすると、必ず「あいつはやってると思ってた」「俺は、あいつがやってるのを前から知っていた」などと、したり顔で言い出す人がぞろぞろ出てきます。こういう人々を見ていると、とても不快に感じるのは私だけでしょうか。




