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ヤンキー並びに元ヤンを公言している人種

　以前、とある方に聞かれたことがあります。

「赤井さんは、ヤンキーが嫌いだと言っていますが……ヤンキーの知り合いはいたんですよね。どういうスタンスで、ヤンキーと付き合っていたのでしょうか？」

　その方には、きちんと答えましたが……もしかすると、そういう疑問を抱いている方が、他にもいるかもしれないですね。そこで、このエッセイでも私のヤンキーに対する気持ちを書いておくことにしました。

　私はかつて、ヤンキーに憧れていた時期がありました。それは間違いありません。

　しかし、ヤンキーたちの実態を見ているうちに幻滅していった……という話は、以前にも書きました。

　また、幼い頃から付き合いのあった連中がどんどんヤンキーになっていき、必然的にヤンキーと付き合っていたわけです。彼らはその後、少年院や少年刑務所に行くような人間になりました。現在、そのほとんどと連絡が取れません。

　はっきり言いますと、ヤンキーという人種は本当にどうしようもない連中なんですよ。

　漫画『ホーリーランド』には、逮捕された途端に「どうしよう……」「学校に知られたら……」などと言いながら青くなっているヤンキーたちの姿が描かれています。主人公の神代ユウはそれを見て、学校で見ている姿との違いに複雑なものを感じるのです。この場面、作者の森恒二先生の実体験かどうかはわかりませんが、実にリアルな描写だと思います。

　現実のヤンキーもまた、逮捕されたら情けない姿を晒すことになります。学校では勇ましいことを言い、弱い者に暴力を振るっていたヤンキーたち。しかし、いざ警察という国家権力の前に出ると……彼らは恥も外聞もありません。「僕は何もしてません！　あいつがやったんです！」などと、泣きながら訴えたりします。そう、彼らはあっさりと友人を売ります。義理人情に厚く友達思いなヤンキーなどというのは、フィクションの世界だけにしか存在しません。

　私の友人たちは言っていました。

「警察にパクられて泣く奴、本当に多いぜ」

　実際、ベテラン刑事の前でイキがり「弁護士呼べよ」などと言って刑事を怒らせ、さんざん怒鳴りつけられ泣きながら土下座した暴走族がいたという話も聞きました。二言目には「気合い」「根性」などとほざく連中が、警察という国家権力の前でひとりにされると、泣きながら土下座する……これが、ヤンキーの正体です。まあ、ひとりでは何も出来ないんですよね。

　ただし、おっかない刑事の取り調べに屈せず、仲間を売らず口も割らないような者も、ごく稀にいるそうです。が、こういう人に限ってヤクザから目をかけられてしまい、あれやこれやと世話になってしまうケースがあるようです。こういう人は受けた恩を忘れないタイプなので、誘いを断れずヤクザの手先になってしまうこともあるとか。

　もっとも、そういう不器用な人の行く末は……頭のキレるヤクザにいいように使われるのがオチなんですよね。どの業界でも、根性があり筋を通す善人ほど損するように出来ているようです。

　話を戻します。警察に逮捕されて泣くような奴に限って、おっさんになると「俺も昔はヤンチャしててよう」などと、偉そうに吹聴したりしているんですよ。実に情けない連中ですよね。それくらいしか、誇れるものがないのでしょうか。

　私には、刑務所を出た知り合いが何人かいます。彼らは、ヤンチャという言葉では済まないようなことをやらかした挙げ句、懲役という罰を受けました。彼らには、前科者の烙印が生涯付きまといます。当然ながら、彼らは人前で「俺は昔、刑務所いってたよ」とは言いません。彼らは基本的に、ひっそり生きています。

　ところが、ヤンキーという人種は、たいした罰を受けていないんですよ。前にも書きましたが、学校という守られた場所で、校舎の窓ガラスを割ったりバイクに乗ったりと実にセコい悪さをした挙げ句「もう卒業だ」なんて言いながら、あっさりと進学したり就職したりするんですよ。で、キャバクラなどで「俺も昔はヤンチャしてて……」などと吹聴しています（ネットで吹聴する奴もいますが）。その根性が本当に嫌ですね。卒業などと言うのなら、迷惑かけた人たちの前できちんと謝罪していただきたいものです。

　あと、たまに格闘技のジムにヤンキーっぽいのが入ってきます。しかし、九割以上が一月も経たないうちに「勉強が忙しくなった」などと言って辞めていくそうです。どんな勉強をしてるのかは不明ですが、少なくとも「気合い」や「根性」の有る人種でないことは理解できます。

　最後に、私より上の年代の人たちの中には「僕は若い頃、学生運動をしていた」などと自慢げに言っている人がいます。事実、かつて都知事をしていた元作家（金銭絡みで追及され辞任された方です）も、テレビにてそのようなことを言っていました。が、学生運動のために迷惑を被った方々もまた、数多く存在するんですよ。学生運動をしていた方々は、自分たちの活動により迷惑していた人のことなど、考えもしないのでしょうか。私の目には、「昔、学生運動をしていた」と語る爺さんと「若い頃ヤンチャしてた」と語るおっさんは、全く同類であるように見えます。