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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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小さいおじさん

 以前、覚醒剤をやっていた友人に聞いたことがあります。


「あのさ、幻覚って見たことある?」


 その問いに対し、友人は即答しました。ない、と。他の人たちにも聞いてみましたが、ほとんどが「ない」と答えております。ちなみに、『薬物の真の怖さ』の章に登場したゴステロは、確実に幻覚を見ていると思われます。しかし、この男とは話したくなかったので聞きませんでした。

 そんな中、こんなことを言っていた男がいます。


「幻覚? 見たよ。外に出て歩いてたら、小さいおじさんが電柱によじ登って、セミみたいにチュウチュウ電気を吸ってたんだよ。あれはビビッたな」


 聞いた私もビビりました。「そ、そうですか」としか言えなかったのです。




 さて、日本には「小さいおじさん」という都市伝説があります。一時期、小人を見た……という芸能人が、テレビにて自身の目撃談を語っていました。しかし、薬物依存症やアルコール依存症の人も、小人の幻覚を見るというのは、よく知られている話です。まあ、件の芸能人が薬物依存症もしくはアルコール依存症であるかはわかりませんが。ただ、幻覚というのは肉体や精神が極度に疲労している時に見やすいとも聞きます。売れっ子の芸能人は仕事が多く、一日に二時間も眠れない時期があるとか。普通の人よりは、幻覚を見やすい環境なのかもしれません。

 ちなみに覚醒剤やコカインといった、俗に「アッパー系」と呼ばれるドラッグの場合、交換神経の働きが活発になるため、眠気や食欲がなくなります。数日の間、不眠不休で活動できるわけです。が、それはしょせんまやかしのものです。いわば、気力の前借りをしているわけです。肉体には、疲労が蓄積しているわけでして……幻覚も見やすくなるわけです。


 古今東西の様々な物語の中には、小人が登場するものも少なくありません。

 アメリカには、リップヴァンウィンクルという物語があります。リップヴァンウィンクルという男が、森で不思議な小人と出会い、一緒に楽しく酒盛りをしているうちに眠りこけてしまいました。目を覚まし家に帰ってみると、数十年が経過していた……というストーリーです。日本の『浦島太郎』と似ていますね。

 この話ですが、まさにヤク中そのものなんですよ。薬が効いている状態で小人の幻覚を見て、酩酊し楽しく過ごしているうちに外では長い時間が過ぎていた……ひょっとしたら、怪しげな薬草などを吸うか飲むかしていたのでしょうか。

 薬物ではないにしろ、リップヴァンウィンクルは、アルコール依存症の一夜の体験談が大げさに伝わったのかもしれないですね。今と違い、昔の話というのは、とかくいい加減なものが多いですからね。さらに、話を聞いた人間が「盛る」こともあります。伝言ゲームの要領で、話がどんどん大きくなっていく……ありそうな話ですよね。そう考えると、日本の浦島太郎も似たようなケースなのかもしれませんね。

 ちなみに、アルコール依存症の体験談の中には、まるまる数日間の記憶がなかった……というものがありました。


 かの名探偵シャーロック・ホームズはコカイン依存症だったそうですが、作者のコナン・ドイルもコカイン依存症だったそうですね。ドイルは、コカインをやりながらシャーロック・ホームズを書き上げた、という話を聞いたことがあります(本当かどうかはわかりませんが)。

 コカインを摂取すれば、眠気も食欲も消えうせ、ひたすら執筆に集中できるわけですから……確かに、執筆もはかどるでしょう。ただし、その後に大きなツケを払わされるのですよ。その肉体は、当然ながら恐ろしく疲労しています。コカインが切れた後はバタリと倒れ、ひたすら眠り続けます。数日間眠り続けるケースもあるとか。さらに、体にはダメージが残ります。そのあたりのことは『ヤンチャの代償』の章で書いたので、これ以上は触れませんが。

 最近は、オンラインゲームに食事も睡眠も忘れてのめり込む人がいるようですが……これ、コカインや覚醒剤を併用していたとしたら恐ろしいですね。コカインや覚醒剤は、単純作業を延々と繰り返してしまうことが可能ですので……一週間、食わず眠らずでゲームができてしまうんですよ。。

 話がズレてきましたので、最後にひとつだけ。コナン・ドイルもまた「妖精を見たことがある」と言っていたそうです。そんな環境だとしたら、妖精どころかドラゴンだって見てもおかしくないでしょうね。







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