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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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敬語を使う理由

 実は私、ほとんどの人間に敬語で接しております。これは、年齢や立場には関係ありません。最近では、小学生に敬語を使い周囲の人に笑われたことがあります。

 こういうことを書くと、いかにも善人アピールをしているようですが……それは違うんですよ。私がなぜ敬語を使うか、そこには理由があります。なお、登場する人物の名前は全て仮名です。




 実は、ヤクザという人種はやたらと礼儀にうるさいんですよ。正式な組員になった時から、上の人間に徹底的に礼儀を仕込まれます。しかも、バカスカ殴るらしいんですよ。今はどうなのか知りませんが、私が十代の時はそうだったようです。

 で、若くして組員になり、そういう教育を受けてきたような連中は……はっきり言って面倒くさいんですよ。

 昔、少年ヤクザのウヤタと会った時のことでした。ウヤタは当時十七であり、私は二十歳でした。知人の後輩であるウヤタは、知人の前では腰が低かったです。年下であることもあり、初対面の時に私は砕けた口調で話していました。はっきり言うと、タメ口で話していたんですよ。

 ところが、それが気に食わなかったようです。後日、私はウヤタに呼び出されました。


「赤井さんさあ、俺も一応は組の看板背負ってるんだわ。ナメられるわけにはいかねえんだよ」


 私は唖然となりました。こいつは何を言っているのだろうか……と。が、向こうはなおもネチネチ言ってきます。「俺の後輩がいたら、あんた刺されてるよ」とかなんとか。

 ようやく、私は彼の言わんとしていることを理解しました。要は、俺はヤクザなんだから敬意を払え……ということなんですよ。仕方ないので、不快にさせたならすみませんでした……といって謝りました。以後、ウヤタには敬語を使うようにしたのです。


 その後も、ヤクザにもなれない半端なチンピラたちと出会いましたが……彼らのほとんどは、出会った人間に対しマウントを取りたがります。特に私は無職ニートでしたので「こんな奴にナメられたくない」という意識が働くのか、ちょっとしたことでやたらと突っかかって来るんですよ。

 そんなの相手に、いちいち揉めてるわけにもいきません。なので、私は相手の年齢にかかわらず敬語を使う癖が身についてしまいました。とりあえず、敬語を使われて不機嫌になる人はいませんから。

 また、社会に出ると様々な立場の人と接しますが、そこでいちいち口調を変えるのは本当に面倒なんですよね。自分より年下だが、立場は上……という人は、いくらでもいます。逆に、年上でも立場が下の人もいます。敬語を使っておけば、とりあえずは失礼がないですから。




 さて、私は先日『とんでもない大悪党』という童話を投稿しました。この作品には、様々なテーマを込めましたが……そのうちのひとつが、本当に悪い人間というのは善人のふりをしているということです。

 このエッセイの『武勇伝を語る人』の章で登場した与太郎と、『ギャンブル必勝法』の章に登場した名取の二人は、異様に外面のいい人間でした。初対面の人には、やたらと丁寧な姿勢で接します。敬語を使い、気を使い、時と場合によっては金も使い……たいていの人は「めちゃくちゃいい人だな」という印象を受けます。

 ところが、子分やカモと見なした人を相手にすると態度は一変し、暴君ネロのごとき態度になるんですよ。私はしばらくの間、与太郎と生活を共にしましたが……本当に、ボロクソに言われたのを覚えています。かと思うと、初対面の人間には異様に丁寧な態度なんですよね。見ていて唖然となるくらいでした。

 皆さんに知っておいていただきたいのですが、ヤクザにしろ犯罪者にしろ、初対面の時にやたらと礼儀正しく丁寧に接してくるタイプの者がいます。しかし、こういう者にこそ注意してください。

 乱暴な態度で接してくるチンピラは、話していると不快ではあります。しかし、そういう者の方がわかりやすいのも確かです。何より、こういうチンピラには近づかなければいいだけなので、たいした被害はありません。

 しかし、与太郎や名取のようなタイプの人間は、人の心に入り込むのが本当に上手いです。気がつくと相手の懐に入り込み、歪んだ関係を築いている……私も今だから気楽に言えますが、一歩間違えたら、マインドコントロールのような状態に陥っていたかもしれません。

 こういうタイプを見分ける確実な方法は、残念ながらありません。ただ、初対面から妙に腰が低く、礼儀正しすぎる人には注意が必要でしょうね。

 ちなみに、小学生にも敬語を使う私ですが、客観的に見て優しい人間ではありません。また、性格のよい人間でもありません。礼儀正しいからといって、善人とは限らない……まさに実例ですね。






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