成人の日の思い出
突然ですが、一月十四日は成人の日でしたね。この日に、成人式に出席した方もいるかも知れません。荒れる成人式の映像がニュース番組にて流されるようになって久しいですが、皆さまが出席された時はどうだったでしょうか。
これから成人を迎える方に、何か言葉を送るとしたら……とりあえず肩の力を抜いて、気楽に行きましょう。人生なんか、なるようにしかならないから、としか言えないのが悲しいですね。
それはさておき、実は私、成人式には出席しておりません。が、成人の日にはかなり強烈な思い出があります。今回は、私が成人の日に体験したことについて語らせていただきます。なお、以前に書いた章と重複する部分はありますが、今回はより詳しく書いております。
当時の私は、アウトローを気取っていました。「社会のしきたり? んなもん知らねえよバカ」という態度で生きていたのです。高校卒業後は、特に何もせずブラブラしていました。
そんなニートの私にも、当然ながら成人式の通知が来ます。が、私はその日にわざわざバイトの予定を入れました。数日前に求人情報誌を読んで、家から一番近い日雇い派遣の事務所を探しました。
おあつらえむきに、家から自転車で行ける距離に事務所がありました。仕事は建築現場の軽作業・掃除・片付けなどと書いてあります。私はそこに登録し、成人の日に仕事を入れてもらったのです。
と、ここまで書いてきて気づいたのですが……なぜ、私がわざわざ成人の日にバイトを入れたのか、理解できない人もいるかも知れませんね。説明しますと、友人たちに自分がアウトローであることをアピールしたかったからです。
「成人式? ああ、そんなのあったなあ、すっかり忘れてたよ。とりあえず、俺バイト行ってたし。んなイベントに参加するなんて、時間の無駄でしよ」
友人たちの前でスカした表情を作り、そんなセリフを吐きたい………そのためだけに、私はバイトを入れたのです。この心理は、中二病でしょうか? それとも高二病でしょうか? そのあたりは不明ですが、とにかく私は成人の日にバイトに行ったのです。
ちなみに当時、私と付き合いのあった連中はほとんどが成人式には出席しておりません。もうひとつ付け加えると、昔ガチでヤバいことをしていた人の多くは、成人式で暴れたりしません。成人式で暴れて、万が一にも少年刑務所に送られるような事態になったらシャレになりませんから。特に関東地方は、悪名高き川越少年刑務所がありますので……成人式で暴れているのは、中途半端なお調子者がほとんどでしょうね。まあ、私も似たようなものでしたが。
話を戻します。今も覚えていますが、その日の仕事は古い工場の解体作業でした。はっきり言って、無茶苦茶きつかった記憶があります。中は、数十年のホコリやゴミが溜まっていました。さらに、昼ぐらいから雨が降ってきました。寒いし雨は降るしで、最悪な状況の中で解体作業をしていたのです。
結局、作業は夜の七時くらいまでかかりました。その後は真っすぐ家に帰り、テレビのニュースを見ながらくつろいでいました。荒れる成人式の映像を見て、せせら笑っていたのも覚えております。
その時、知人から電話がかかってきました。私の数少ない友人の中で、成人式に出席したさらなる少数派であるコンタ(仮名)です。
「赤井、お前なんで成人式に来なかったんだよ?」
聞いてきたコンタに、私はイキリ状態で語り始めました。
「えっ、何? 今日、成人式だったの? 俺、すっかり忘れてたよ――」
「お前、狼田って覚えてる?」
コンタは、私の用意していたセリフを遮り、慌てた声でそんなことを聞いてきたのです。私はイラッとしましたが、コンタの声にただならぬものを感じたため答えました。
「狼田? 覚えてるよ。イキがってるけど口だけのバカだったよな。あいつも成人式来てたのか――」
「あのバカ、人刺して捕まったらしいぞ!」
狼田が何者であるか、また事件の詳細については、このエッセイの『狼少年』の章にて詳しく書いているため、ここでは省きます。
当時、その話を聞いた私は、ただただ困惑するばかりでした。大した関係ではなかったですし、率直にいえば私は狼田のことが嫌いでした。
それでも、過去に付き合いがあり一緒に遊んだこともある男が、人を殺した……これには、結構な衝撃を受けました。「何やってんだよ」「あいつは、どうしようもないバカだな」というような思いが、頭の中でぐるぐる回っていましたね。
現在の私は、成人式のニュースが報道されるたびに、狼田のことを思い出します。人を殺してしまった男ですし、正直いうなら関わりたいとは思いません。罪を犯したという以前に、人としてろくでもない奴でしたから。
それでも私は、狼田には生きていて欲しいですね。生きて、犯した罪を償っていて欲しいと願います。さらに、罪の重さを自覚して、真人間として生きて欲しいとも思っています。




