表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

111/270

覚えてない、という言葉

 だいぶ前の話ですが、中学の同窓会というものに出席しました。はっきり言って何の期待もなかったですし、ただただ暇だったから出たのですが、ひとつ興味深い出来事がありました。

 私の隣には、ノーマン(もちろん仮名です)という男が座っていました。このノーマンは軽薄なお調子者でして、かつて私は散々イジメられていたのです。


「ノーマン、相変わらず弱い者イジメしてんのか?」

 私は軽い気持ちで聞いたのですが、ノーマンは真顔で否定しました。

 

「はあ? 何言ってんだよ。俺は弱い者イジメなんかしてねえよ」


 この言葉に、私はちょっとだけカチンときました。


「いや、お前はイジメっ子だったから。俺もイジメられたし」


 しかし、ノーマンは首を振り、なおも否定します。


「そんなの、絶対ウソだよ。俺は、イジメなんかしてないから」


 私は、かなり頭にきました。


「いや、お前はイジメてたんだよ。俺に向かって言ったこと、一言一句ここで再現してやろうか?」

 

 そう言うと、私はノーマンから言われた罵詈雑言をその場で繰り返しました。一言一句とまではいきませんが、かなり正確に再現したつもりです。

 言うまでもないことですが、私とノーマンのやり取りのせいで、場の空気はかなり悪くなっていました。しかし、私は構わずに続けました。


「お前は、こんなこと言ってたんだよ。お前は、そういう人間なの。分かった?」


 しかし、ここからノーマンは切り返したのです。


「えっ? 俺そんなこと言った? ぜんぜん覚えてない」


 言いながら、ノーマンは周りの者に話を振ります。


「ねえ、俺そんなこと言ったっけ? 覚えてないんだけど」


 この時ノーマンは、他の者たちを味方につけようとしたのかも知れません。しかし皆は、引き攣ったような笑顔を向けてくるだけです。こんな言い合いに参戦したくないのでしょう。

 その姿を見て、私はさらに言いました。


「なかったことにしようとしてるみたいだけど、お前はイジメてたからね。俺は、きっちり覚えてるから」


 その時、横から口を挟んだ者がいました。クラスの中心的存在だったオバケン(仮名)です。


「まあまあ、もう過ぎたことなんだし、水に流そうよ」




 この後は、悪くなってしまった雰囲気を何とかしようと四苦八苦してましたが……盛り上がらないまま、お開きとなりました。まあ、私の責任であることは間違いありません。当時の私はニートでして、最悪の精神状態でした。同級生に一矢報いてやろう、という気持ちもどこかにありました。

 ただ、当時のことを振り返ると、ちょっとした発見があったのも確かですね。


 ノーマンは最初「そんなことは言ってない」という言い方をしていました。ところが途中から「覚えてない」という言い方に変わりました。今もはっきり覚えています。

 これはどういうことでしょうか。ノーマンは断片的にせよ、覚えていた部分があったのではないか……と思うんですよね。本当に記憶にないのなら、「言ってない」もしくは「やってない」と最後まで言い張ったはずなんですよ。それが途中から「覚えてない」に変わった……これは本当に覚えていないのではなく、覚えている事実を隠そうとしているからなのではないか、と。

 よく「イジメられた方は覚えているが、イジメた方は覚えていない」と言います。これもまた、イジメた方に全く記憶がない……とは考えづらいですね。微かな記憶は残っているが、覚えてないことにしたいのではないかと。まあ、考え過ぎかも知れませんが。




 最後に、現在イジメに遭っている人に言っておきたいことがあります。

 彼らは、イジメた事実を後になって指摘されても「覚えてない」などと言い張り、過去をうやむやにします。さらに「昔のことなんだから水に流せよ」などと言い出す奴も現れます。結果、話を打ち切られてしまう可能性が高いです。

 なので、私のような中途半端なことはやめましょう。どうしても復讐したいなら、合法的な手段で潰すべきですね。具体的な方法はここでは書きませんが、探せばいくらでもあるはずです。

 今の御時世、暴力的な手段で報復すれば、こちらが悪者になってしまいます。ならば、法に触れない手段で相手を潰す……そのためにも、今のうちに知識を蓄えておきましょう。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ