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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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某国営放送局の取材

 今回の話もまた、人から聞いたものですが……いつもより、さらに怪しげなものです。まあ、都市伝説ならぬ田舎伝説くらいのスタンスで読んでください。また、信じるか信じないかは、あなた次第です。




 今でこそネットが発達し、場所に関係なく様々な情報が簡単に得られるようになりました。しかし、かつての日本は得られる情報に偏りがありました。特に山奥の集落に生まれてしまえば、そこで得られる情報など半径数メートルの世界が全てでしょう。逆に言うなら、村人たちと違う価値観の持ち主は、よそ者として冷たい目で見られることでしょう。

 また、こうした山奥の集落というのは、ホラー映画のネタになることが多いようですね。独自の儀式、あるいは風習などなど……ただ、現実は小説よりヤバいようです。例えば、戦争中に山奥に不時着した爆撃機から降りてきたアメリカ兵を村人が集団リンチして殺し、持ち物を村人たちで分配した……などと言う話は、あちこちで聞きました。これ、本来なら裁判になっている案件でしょうね。戦争犯罪として裁かれても、おかしくはないのでは……詳しいことは、私にはわかりませんが。

 もっとも、今回は別のタイプの話です。


 山奥の三日月村(もちろん仮名です)は、人口が百人ほどの集落です。一見すると、ただの田舎の村ですが……実は年代物の刀や槍や鎧兜などが保管されており、さらには火縄銃や大砲(抱え大筒と呼ばれる種類の物)まであったとか。

 この三日月村、戦国時代には落ち武者や山賊たちから何度も襲われたため、村は自分たちの手で守る……という意識が異様に強かったそうです。そのため、村人たちは武器を用意し常日頃から戦いに備えていたとか。しかも、秀吉の刀狩りの時ですら、武器を隠しておき献上しなかったらしいのです。

 結果、三日月村には歴史的にも貴重な武器が蔵に保管されていたのですが……昭和の時代のある日、三日月村に某国営放送局のディレクターがやって来ました。何と、村を取材したいと言ってきたのです。

 村人たちにとって、某国営放送局の取材というのは大変な名誉です。皆、あっさり承諾しました。

 そのディレクターは村のあちこちを見て回りました。当然ながら取材を許可しているため、よそ者を警戒する空気はありません。彼の好きなようにさせます。

 そのうち、ディレクターは例の倉を見つけました。彼は目を輝かせて「これは素晴らしい! 是非とも専門家に鑑定させて特番を組みたい! ついては、しばらくの間貸していただけないだろうか?」と聞いてきたそうです。

 村人たちは了解し、さらにはトラックに積み込むのも手伝ったそうです。彼らにしてみれば、村がテレビ番組にて取り上げられる……こんな名誉なことはない、という舞い上がった気分だったのでしょう。

 蔵から様々な物を積み込んだトラックとディレクターは下山しました。次は、大勢の番組スタッフと共に来ることを約束して……ところが、それから何日たっても連絡がありません。

 不安になった村人たちは、名刺に書かれていた番号に電話してみました。すると、その番号は偽物だったのです。念のため某国営放送局にも問い合わせてみましたが「そのような者は、ウチにはいません」というような答えが返ってきたそうです。

 当然、村人たちは怒ります。先祖から受け継いだ宝を騙し取るとは許せん! 警察に訴えてやる! となりましたが……村の駐在や役所の人間に話を聞いてみると、非常に厄介な問題が浮上してきたのです。

 言うまでもなく、刀の所持には許可が必要です。しかも火縄銃や大砲ともなれば、様々な手続きが必要なのだそうてす(詳しいことは知りませんが)。

 しかし村人たちは、許可などもらっていませんし手続きもしていません。警察に訴えれは、そのことが公になります。下手をすれば、村人から逮捕者が出るかもしれません。

 さらに税金の問題も絡んできますし、村の恥を晒すことにもなりかねない。結果、村人たちは訴えないことにしたそうです。

 ただし、村人たちは当然ながら怒っています。このままでは、その怒りは収まりません。そこで、村長ら村の主だった者たちは考えました……誰かに責任を取らせよう、と。いわゆるスケープゴートですね。

 その標的となったのは、成長し村を離れて都会で生活している若者です。恐らく、都会で村にある物のことをベラベラ喋り、それが詐欺師に伝わったのだろう……と。したがって、若者にも責任の一端はある、と彼らは考えました。

 そして、ある日のこと。件の若者は、村人たちに呼ばれて村に立ち寄ったそうです。言うまでもなく、彼は詐欺とは無関係です。そもそも、こんな事件があったことすら知りません。両親に呼ばれ、久しぶりの里帰りのつもりで村に行きました。

 その後、若者の消息はぷっつり途絶えてしまったそうです。


 もう一度書きますが、これはあくまで人から聞いた話であり、信憑性は高くありません。私は、フィクションを実話だなどと書いて発表するようなことはしませんので……信じる信じないは、あなた次第です。







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