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第三章 51話 たくさんの人と交わる道

 僕が意識を取り戻したことをレイやミュールから知った、ジョージさんやジョナさんも大急ぎで屋敷に駆けつけてきた。

 そのままの流れで僕のティアナとの再会と復帰お祝いを兼ねた宴会開催となったわけだけど……

 ジョージさん、ジョナさん……ギルドの仕事は……?


 宴会の最中にティアナとあの後の事を心ゆくまで話すことが出来た。

 勇者一行に加わった後の話。

 鍛錬場での苦戦。

 連合国での四天王との戦いや魔王討伐後、賢者に推薦されたこと。

 そしてフォスターでバッシュさんからあの夜の真実を打ち明けられ、そのまま勇者にケガを負わせて逃げながらリューシュを探し続けた事。

 森の中で倒れ、もう諦めかけた時にトゥルクさん達に助けられた事。

 村でリューシュの剣や鎧を見つけたとともに、リューシュがバッシュさんに出した手紙を見て、リューシュがムミョウと名前を変えてフッケにいるのが分かった事。


 僕の方も手紙に書いてあったことを詳しくティアナに話した。

 信じてくれるかちょっと不安だったけど、リューシュは嘘をつかないからって言ってくれたし、『獅子の咆哮』の人達やジョージさん、レイやミュール達も口々に僕の事を話してくれた。


 その後、ジョージさんともティアナの事について話し合った。

 現在ティアナは勇者を殺そうとした罪で指名手配を受けているものの、フッケの領主は勇者をあまりよく思っておらず、魔王討伐のために散々金を要求されたり、あげく『獅子の咆哮』の人達との対面の際も剣を抜いて斬りかかろうとしたりなど目に余る行動が多かったらしい。


 ティアナにそのことを聞いてみたけど、『獅子の咆哮』の人達に斬りかかろうとしたのは本当で他の2人と必死で止めたらしい。

金銭面の交渉に関しては勇者1人でやっていて、自分や一行のサラさんやアイシャさんはずっと訓練や魔法の勉強に時間を費やしていたらしく、そんなこと聞くのは初めてだと驚いていた。


 そういうことでティアナに関しては領主に報告はするものの、捕縛ではなく保護という名目になるため、特に自由を制限されることはないとの事だった。


 ただし、街中を自由に歩き回るのはさすがにまずいという事で、基本的にはこの屋敷から出ることはしないようにしてほしいとのこと。


 指名手配については、勇者側にも非があるのでは? と追及することにしてなるべく早急に取り下げてもらうよう領主に依頼する予定の事だそうだ。

 貴族や王族でも勇者に煮え湯を飲まされた者も多く、そういう人達の辺りの力を借りるつもりだという。


「いざとなったらギルド本部の力も借りるつもりだ。 なんせ40階層突破のムミョウ君とその幼馴染で炎の賢者のティアナさん、それに対して勇者とはいえ色々素行の良くないバーンだからな……。 どっちに手を貸すべきは一目瞭然だからね」


 ジョージさんがウインクしながら僕達に宣言する。


 レイやミュールはあっという間にティアナと仲良くなった。

 レイはやたらとしつこく子供の頃の僕の話をティアナにせがむし、ミュールはティアナが回復魔法の使い手だという事を知って、すごく喜んでいた。


「これでレイが……コホン、皆が怪我しても私とティアナさんでバンバン治せるわ!」


 とすごい意気込んでいたけど……

 悲しいかな、レイにはその熱意はあんまり伝わらなかったようだ。


「俺は師匠に剣を教わるから、別に怪我なんてしないし回復魔法なんていらない!」


 と息巻いて、案の定ミュールとケンカになっていた。

 レイ……もうちょっと言葉を選ぼうな?

 ミュールも……もうちょっとストレートにいこうよ……。


『獅子の咆哮』の人達ともティアナは仲良く会話していた。

 特にティアナは自分たちが倒せなかったヴォイドを倒したことについてかなり感心したそうで、その辺りの話を皆に聞きたがっていたし、逆に『獅子の咆哮』の人達は勇者一行でドランを倒した時の話を聞いて40階層攻略の参考にしようとしていた。


 まぁ……単独で尻尾叩っ斬ったり、足を刀一本で両断した僕の話はいまいち参考にしづらいから仕方ないけど……

 ……なんか悲しい。


 最期にジョナさんは……なんか落ち込んでた。


「良いのよ……どうせ私は負け続けるだけなのよ……」


 となんか呟きながら凄い勢いでティアナと一緒にお酒を飲み続けている。

 僕が声を掛けようとしたら、ティアナが僕を手で制しながら、


「ここから先は女しか入っちゃダメよ?」


 と言って僕を追い払ってしまった。

 仕方なくフィンさん達と飲んでいたけど、何度かティアナに目をやるとジョナさんを慰めていたようだった。

 時々、なんか背筋がものすごく寒くなった。


 ジョナさんと話が終わったとのティアナに何の話をしていたのか聞いたけれど、


「あの人も……本気なのね……」


 と何やら意味深な事を言っていた。 

 一体何の話をしてたんだろ?



そして……楽しい時間は過ぎ、先にジョージさんとジョナさんが帰り、他の人達もそろそろ明日の稽古に備えて休むことにして宴会はお開きとなった。


続々と皆が部屋を出ようとするのを僕とティアナは何気なく見ていた。

するとバッカスさんが近づいてきて僕の右肩を抱いてティアナから引き離すと、


「おう、ムミョウ……こういう時にこそ攻めなきゃ男じゃねえぞ……?」


と囁いてきた。


何のことだろう……?


と一瞬不思議に思って考えてみたけど……

……あっ!


途端に顔から火が出たように熱くなる。

バッカスさんはその顔を見て、含み笑いをしながら脇腹を右手で小突いてきた。


周りを見ると他の男の人達もニヤニヤ笑いながら僕を見ていた。

ちなみにレイとミュールはさっさとライトさんとレフトさんに部屋から閉め出されていたりする。


ティアナの方を見れば……メリッサさんが肩を叩きながら耳元で何かを囁いていた。

ティアナの方も顔が真っ赤だ。

けれど……何かを心配しているような顔にも見える。


そうして食堂から僕とティアナ以外皆それぞれの部屋へと戻っていった。

しばらく僕達はそのまま立っていたけど、決心してティアナに近づく。


「ティアナ……今日は疲れただろうし……僕の部屋で休まない……か?」


緊張で言葉に詰まりながら僕は右手を差し出してティアナを部屋に誘う。

ティアナは小さく頷いて手を掴んでくれた。


そして僕達は食堂を出て2階の僕の部屋へと向かうのであった。

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