ヘビースモーカー
足塚洋平はごく普通の店長である。毎日従業員の愚痴を聞き、毎日社長の顔色を窺う、齢40の店長である。今日も今日とて、店を閉めた後、行きつけのコンビニでセッターとブラックコーヒーを買って家路についていた―――のだが。
キキキキイッ!!ギギィキキキキイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。足塚洋平の魂と、女神が対面している。
「足塚洋平さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
足塚洋平(40)
レベル9
称号:転生者
保有スキル:ヘビースモーカー
HP:3
MP:20
「というわけで、いきなり草原に放り出すのかよ、つかえねえな、はあ。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が量販店店員の前に現れた!
「けっ!スライムね!武器も何もないのに何考えてんだよっ?!」
うろたえる、店長。
「あ、試さねーと、な!保有スキル!!ヘビースモーカー?まあとりあえず一本吸うか…。」
べよんべよん!!
水色のぶよぶよが店長に迫る!!
しゅぼ!
「ふぅー…。おおっ?!」
スライムは1のダメージを受けた!!店長はこれ見よがしにスライムにたばこの煙を吹きかける!!スライムは2のダメージを受けた!!スライムは2のダメージを受けた!!スライムは2のダメージを受けた!!スライムは2のダメージを受けた!!スライムは2のダメージを受けた!!スライムは2のダメージを受けた!!スライムは2のダメージを受けた!!スライムは2のダメージを受けた!!スライムは2のダメージを受けた!!スライムは2のダメージを受けた!!スライムは2のダメージを受けた!!
「あ、タバコ吸い終わった。次いくか。」
店長は煙草をスライムの体表に投げ捨てた。スライムは火のついた部分を自らの体表の水分で消火した。スライムは煙草を吸収し、ニコチンタールを分析したので、たばこの煙は弱点ではなくなった。狂ったようにタバコを吸って煙を吹きかける店長を、スライムは遠慮なく捕食した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
店長は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
店長はコンビニでセッターとブラックコーヒーを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちょい早く通りかかってたら、ひかれてたなこれは…本当にあぶねえ奴が増えたよな、怖いもんだ。」
店長は、嫌煙ムードの高まる社内でずっとマイペースに喫煙所を占領していたのですが、社内禁煙が決定された年に一大決心をしタバコと決別を果たして絶賛されたのち、つまみぐいの習慣がついてしまって糖尿病になり晩年は相当食べるものに気を使うはめになり、64歳になった時に好きなものを好きなだけ食べると宣言して65歳で満足して人生を終えたという事です。




