盛り上げ上手
新開邦治はごく普通の企画部長である。毎日盛り上がるイベントを考えて、毎日新人の考えた穴だらけの企画を魅力ある企画に改ざんする、齢48の企画部長である。今日も今日とて、リモートワーク体験企画を大成功させた後、行きつけのコンビニでコーンフレークチョコ味とカップみそ汁のシジミを買って家路についていた―――のだが
ギュギュイッ!!ギュウイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。新開邦治の魂と、女神が対面している。
「新開邦治さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
新開邦治(48)
レベル34
称号:転生者
保有スキル:盛り上げ上手
HP:55
MP:20
「というわけで、いきなり草原に放り出すのか、最近のシステムのいいかげんなことよ…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が企画部長の前に現れた!
「はあ?!スライムじゃないか?!武器も何もないぞ!どうするんだ!」
うろたえる、企画部長。
「はっ!保有スキル!試してみるべきか!…盛り上げ上手?!イベントは、どこだ!!」
うばほん!!!
物産展のテントと小さなステージが出てきた!これは先週やったお祭り会場じゃないか!!
「はいー!こちらね!各地でしか手に入らない地方土産がそろっておりますよ!!ほら見てこのボンタンアメ!もっちもちだよ!こっちの丸ごとリンゴパイ、美味しいですよー!試食もあるよ!!食べてなんぼ!!味わってみてちょーだい!ミルクケーキなんてね、めっちゃいろんな味があってね…!!!」
物産展は大人気だ!スライムを始め、いろんなモンスターたちが大喜びでお買い物をしていく!ステージではコロポックルたちによる阿波踊りの発表が大人気の様子だ!ステージでは、飛び入り参加のカラオケ大会が行われるようだぞ!一番手は…アルラウネだ!!なんか嫌な予感しかしないぞ…肩に乗ってるあの大根は!!マンドラゴラだ!!企画部長は事前参加者チェックをしなかったことを悔やんだが、気が付いたときには二人は見事なデュエットを歌い上げてしまっていた。残念ながらその歌声を聞いた企画部長は絶命した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
企画部長は時間を巻き戻されて、コンビニの前に立っていた。コンビニの前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
企画部長はコンビニでコーンフレークチョコ味とカップみそ汁のシジミを買って帰路に就くと、家の近所の交差点で車の暴走事故が発生していた。
「もう少し早く通りかかってたらひかれてたんじゃないか…。週末のイベント司会がいなくちゃどうにもなんねーよ!」
企画部長は、経験不足の新人の考えた企画を却下したことでずいぶん嫌われたのですが、次の年に有給消化中に強行された新人企画イベントで大損害が出た時に黙ってフォローをしたことで信頼関係ができたのをきっかけにより幅広い企画を生み出すことに成功し、言いたいことの言える企画部をきっちり築いた後62歳で動物園内謎解きツアーのイベントを成功させた次の年にこの世を去ったという事です。




