最後に勝つのは自分
兵頭裕理はごく普通の負けず嫌いである。毎日何かと勝負をし、毎日勝ったことに優越感を感じる、齢16の負けず嫌いである。今日も今日とて、口げんかで勝てないので担任の先生に告げ口をして相手にごめんなさいを言わせた後、行きつけのコンビニで瞬間接着剤と七味唐辛子を買って家路についていた―――のだが。
キイギューウ!!キイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。兵頭裕理の魂と、女神が対面している。
「兵頭裕理さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
兵頭裕理(16)
レベル2
称号:転生者
保有スキル:最後に勝つのは自分
HP:5
MP:2
「というわけで、いきなり草原に放り出されたじゃん!なにこれ!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が負けず嫌いの前に現れた!
「うわ!スライムじゃね?!こんなの出るとか聞いてねえし!」
うろたえる、負けず嫌い。
「あ、そうだそうだ!保有スキル!!最後に勝つのは自分?」
スライムは、今にも襲い掛かろうとしている!
「ちょっ…!あんた私と戦う気?!私が勝つんだからあんたは負けが決定してるの!!つまりこの勝負に意味はない!負けるんだから向こう行きなさいよ!!」
スライムは別に負けてもいいけど食べたいなあと思ったので、負けず嫌いをそのままひとのみにした。
うばほん!!!
スライムの頭の上に、「まけました」と書かれた紙が貼られたが、別に気にしない毎日を過ごしているという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
負けず嫌いは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
負けず嫌いはコンビニで瞬間接着剤と七味唐辛子を買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちょっと早く通りかかってたらひかれてたんじゃないの!そんなの絶対こっちが勝てないやつじゃん。」
負けず嫌いは、常にだれかと戦っていなければ落ち着かない性格が幸いして相当知識を身につけたものの相当孤立してしまい、気が付いたときには戦ってくれる相手が誰もいなくなりそれを自分の完全勝利だと思い込んだまま62歳でこの世を去ったという事です。




